「メゾン マム RSRV(アール・エス・アール・ヴイ)」 の系譜を紐解く 〜その2 ロゼ・フジタは夕暮れの温度感を再現したキュヴェ〜

シャンパーニュ愛飲家へ向けて創り出されたメゾン マムRSRVに、今年新たな仲間が加わった。「ロゼ・フジタ」だ。ロゼの名を決めるにあたり選択肢は「フジタ」をおいて他になかった。メゾン マムとの親交が深いレオナール・フジタ、藤田嗣治は、マムのロゼのために美しいバラを描いたことでも知られている。最高醸造責任者のディディエ・マリオッティ氏に、そのロゼ・フジタについて聞いた。

 

 

ロゼ・フジタは夕暮れの温度感を再現したキュヴェ

「ロゼは夏のワインだ」と、ディディエ・マリオッティは口火を切った。「マム グラン コルドン ロゼ」が夏の日中に似合うのに対し「メゾン マム RSRV ロゼ・フジタ」は、夏ではあるが夕方からの時間帯がいい。太陽がそろそろ沈み始めているが、まだ温かさが残っている時間帯を再現したようなキュヴェだという。

「ブラッドオレンジのような柑橘類、赤い果実のフルーツソース、その背後にスパイスを感じられるのがこのワインのひとつの側面で、ある意味でまっすぐでもあり、味わい深さもあり、複雑性もあり、これらすべての微妙なハーモニーが感じられる」。

 

このキュヴェについては、その1でも記したようにディディエ・マリオッティが自ら定義を決めて生み出したものだ。

「まろやかさ、という言葉は重さを感じさせるので、フランス語でシャルールChaleurという『温かみ』という言葉を使いたい。味わいのセンセーションのひとつで、口全体に広がるような、でも軽快さもある。だから夕暮れの温度感をイメージした。直接感じられるのではなく、岩や地面が蓄えた温かさからくる間接的なセンセーションだ。太陽がカッと照りつけているのではなく、間接的なフィーリング。芳醇でありながら、夕暮れなので少し夜の気配を感じさせるフレッシュさも存在している」。

 

6つのグラン・クリュ

このキュヴェも、すべてグラン・クリュのブドウだけを用いている。シャルドネはコート・デ・ブランのクラマンとアヴィーズからで、全体の30%を占めている。ピノ・ノワールは、アイ、ブージィ、ヴェルズネイに、アンボネイの赤ワインを15%ほどブレンドしている。シャルドネについては、自社畑のある村を使おうと決めた。ピノ・ノワールについては、中でも優れた村を3か所にしぼった。

 

偉大なピノ・ノワールが生まれるアイをまず選んだ。モンターニュ・ド・ランスの北部からもひとつ。余韻にほのかな苦味を残して直線的な後味を感じさせるヴェルズネイを選択した。モンターニュ・ド・ランスの南部からは、まろやかさ、力強さ、ストラクチャーのあるブージィを。そして赤ワイン用にアンボネイを選んだのは「このキュヴェに用いている畑は少し東向きなのでとてもバランスがよく、間接的な暑さが感じられる。南向きの畑は成熟度が高く、ブージィはもっと直接的な太陽のニュアンスを与えるからこのキュヴェの赤ワインには採用しなかった」。やはり、温度感を大切にしてのことだ。ディディエ・マリオッティの母の実家はブルゴーニュのアルマン・ルソーだというから、ブルゴーニュのエレガンスが彼のセンスに影響しているのかもしれない。

 

ちょっと技術的ではあるが、RSRVの中でなぜこのキュヴェだけヴィンテージではないのかと尋ねると「その方がエキサイティングだから」と笑う。今回リリースのキュヴェはベースワインが(赤ワインも含め)2012年で、リザーヴ・ワインが20〜25%ほどだが、大きく分けて3種類のリザーヴ・ワインがブレンドされている。2005年頃からのプロジェクトにより、1: アッサンブラージュしたワインの取り置き、2: 2種類のソレラ式のリザーヴ・ワイン、3: 限られたグラン・クリュ(クラマン、ヴェルズネイ、そして少々アイも)のワインの取り置き、というストックがある。

これらを駆使して思い描くキュヴェに創り上げるのだ。巧みにブレンドすることが、やはりシャンパーニュの醍醐味なのだと改めて感じた。

レオナール・フジタは、日本画の技法を油彩画に取り入れたことでも知られている。「メゾン マム RSRV ロゼ・フジタ」は、シャンパーニュの伝統であるノン・ヴィンテージの技法を高いレベルで取り入れた上級キュヴェ、ということだろうか。

フジタが描いたバラが、ロゼ・フジタの首元を飾っている。

(Y. Nagoshi)

輸入元・画像提供:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社

「メゾン マム RSRV(アール・エス・アール・ヴイ)」 の系譜を紐解く 〜その1 メゾン マムの真髄、それは直球のストライクの威力のようなもの〜

続編の「その3」も追ってアップロードいたします。

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