「メゾン マム RSRV(アール・エス・アール・ヴイ)」 の系譜を紐解く 〜その1 メゾン マムの真髄、それは直球のストライクの威力のようなもの〜

メゾン マムからリリースされた ”RSRV”(アール・エス・アール・ヴイ)は、フランス語のReservé、英語のReservedを表す暗号のようなものだという。かつて、メゾンとつながりの深いごく限られた人々のための特別なロットに、最高醸造責任者が ”RSRV” と記すのがならわしだった。親しい友人だけのためのおとりおき、というわけだ。このメゾンの歴史に思いを馳せながら、現代の”RSRV”が誕生した。最高醸造責任者を務めるディディエ・マリオッティ氏に、メゾン マムにおける ”RSRV” の位置づけや内包する特性について聞いた。

 

”RSRV” の元祖はブラン・ド・ブラン

メゾン マムのラインナップで最も知られているのはもちろん、勝利のアイコンともいえるコルドン ルージュを纏った「マム グラン コルドン」だ。ロゼやミレジメを含むこのクラシック・レンジと、最高峰のキュヴェ ルネ・ラルーの間にあり際立つ個性を放つのが ”RSRV” コレクションで、今年ブラン・ド・ブラン、ブラン・ド・ノワールにロゼ・フジタが加わることになった。

 

メゾン マム RSRV の元祖ブラン・ド・ブランは、コート・デ・ブラン地区のクラマン村のシャルドネだけを使っている。2006年から現職のディディエ・マリオッティは、先代の最高醸造責任者とともに1950年代のブラン・ド・ブランを試飲したことがあるという。その当時からメゾン マムでは特別なキュヴェとしてブラン・ド・ブランを造り続けていたのだ。

実は数年前に「マム・ド・クラマン」という名前でクラマンのシャルドネだけを用いたキュヴェを世に出している。しかし、「クラマン」を「クレマン(フランスのスパークリングワインのカテゴリー)」と混同する人が多かったため、改名すると決めた。「クラマン村の名前よりブラン・ド・ブラン、あるいはブラン・ド・ノワールという名称の方がよく知られている。もちろん村名を捨ててしまったわけではなくラベルにも記している」。

 

「”RSRV” にするにあたり、ヴィンテージを表記することにした。正確性を求めるキュヴェだからだ。ピュアでシンプルなキュヴェを造ること。これが実はとても難しい。ブラン・ド・ブラン2012年は、ライムやレモンのような空気感のある軽やかさ、そしてわずかに花も香る。特に表現したかったのは、クラマンの白亜質土壌だ。塩味のようなミネラル感がそれを表している。活気があり、テンションが高く、ストレートな性質を備えている」

 

他のキュヴェ同様あくまでもアッサンブラージュ

単一の村の単一年の単一品種から造っているにも関わらず、ディディエ・マリオッティはこのキュヴェも「アッサンブラージュ(ブレンド)」によるという。

その理由のひとつは、特定の区画に焦点を当てているわけではないから。自社畑のブドウか、契約畑のブドウかに執着するのではなく、完全にブラインド・テイスティングによりワインを厳選する。だから、4、5種類のクラマンをアッサンブラージュしていることになる。

また、アロマや味に幅をもたせるために、醸造方法の異なるワインを巧みに組み合わせる。例えば、低温醗酵によりアロマが豊かなもの。バトナージュを行ってストラクチャーと粘性のある豊かなタイプ。マロラクティックを行わずフレッシュさを保ったもの。

 

また、ディディエ・マリオッティはこうもいう。「同じクラマンという村のシャルドネでも、造る人がどう表現したいかによって表情は異なる。例えばマムでは、テンションをとても大切にしている。これが、私が理解したクラマンの性質のひとつだから。例えばペリエ ジュエのベル エポックもクラマンの2区画のシャルドネを用いているが、個性が異なる。例えばアヴィーズ村でもジャック・セロスとアグラッパールではヴィジョンが異なる。それぞれのメゾンで、それぞれの歴史や背景に基づいたワインの表現力があるという証だ」。

 

メゾン マムの真髄、それは直球のストライクの威力のようなもの

「メゾン マムの根底にあるもの、それはテンションとストレートさだ」という。メゾンで仕事をする若い世代に「我々は、歴史の守り人だ、この姿勢が大原則だ、と伝えている」。

ブラン・ド・ブランはすでに存在していたものを参考にした。ロゼ・フジタは新たなラインで、ディディエがこの定義を創り出した。ブラン・ド・ノワールは、先代とともに 2002年からトライアルを始め、この2008年が完成した。「ブラン・ド・ノワールにおいても同様の直線的なニュアンス、まっすぐな性質を表現したいと考えた。クラマンの直線的なところがとても気に入っているが、ブルゴーニュのピノ・ノワールを試飲するとエレガントであるとともにやはり直線的な性質を備えていると感じるものがある。だから、そういうピノ・ノワールが生まれる村を探した。多くのピノ・ノワールを試飲した結果、それがヴェルズネイ村だった」。

 

ヴェルズネイ村は、メゾン マムが初めてブドウ畑を購入した村でもある。素晴らしい偶然だ!

「北向きの畑で、まるで水晶のようなテンションを備えている。ピノ・ノワールらしい直線的な主軸がある。その周りを複雑性、まろやかさで構築している。だから決して重くはならない。エレガントでハーモニーがある。白い果実やデーツなどのドライフルーツの香りも少し感じられ始めてきた」。

 

クラマンは酸をもとにしたまっすぐさが感じられるのに対して、ヴェルズネイは口の奥で感じるほのかな苦味によってまっすぐさが感じられる。同じようにテンションと直線的な印象を受けるが、対極をなすキュヴェなのだ。ディディエ・マリオッティは、このふたつのキュヴェを造るにあたり、白黒の勾玉を組み合わせたような陰陽魚太極図をイメージしたという。ちょうど「ブラン」と「ノワール」でもあり、ぴったりと当てはまる。

 

”RSRV” は、メゾン マムの歴史、伝統、性質を、まさにストレートに表現したコレクションだとわかった。「我々は、歴史の守り人だ」という言葉が強く印象に残った。(Photo by Yuu Murata / text by Y. Nagoshi)

輸入元・画像提供:ペルノ・リカール・ジャパン株式会社

次回は、「メゾン マム RSRV ロゼ・フジタ」に焦点をあてた記事を掲載します。

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