パスカル家が再興させた シトー派修道士が拓いたドメーヌ ドメーヌ・デュ・セリエ・オー・モワンヌ

ドメーヌ・デュ・セリエ・オー・モワンヌの拠点は、コート・シャロネーズのジヴリーにある。シトー派修道士によって1130年頃に設立されたドメーヌを、キャサリーン&フィリップ・パスカル夫妻が2004年に購入し、付属していた畑も買い戻した。

 

クロ・デュ・セリエ・オー・モワンヌ

来日したフィリップ・パスカルは、かつてLVMHの会長を務めた経験もある人物だ。「コート・シャロネーズにも、1890〜1910年にフィロキセラがきた。そして大戦もあった。さらに、石炭や採掘、あるいは製鉄など工業が発達して皆が働きに出た。もともと赤ワインで定評のある村だったジヴリーも、畑を管理する人がいなくなった。特に斜面の畑の手入れがおろそかになった」と、埋もれていた宝を掘り当てたように語る。

クロ・ド・ヴージョやクロ・ド・タールのように、シトー派の修道士や修道女は12世紀から13世紀にかけて、ブドウ栽培に最高の区画を見つけ出し、採掘した石で取り囲み「クロ」をつくった。1級畑のクロ・デュ・セリエ・オー・モワンヌは、ジヴリーの北部にある南向き斜面の頂上から中腹にかけての畑で、石垣に囲まれている。

購入後、2008年から植え替えを始めた。1960年代にセレクションされたクローンは量産型だったからだ。コート・ド・ニュイの優れた畑からマッサール・セレクションされた苗を、ナーサリーで増やしたもので、粒が小さく房も小ぶりなクローンに替えた。このクロはもともと修道院に属していた区画で、今ではバロン・テナールとジョヴロも所有しているようだが、パスカル家が4.8haと最も広い範囲を所有している。

 

クロ・パスカル

パスカル家が手に入れたもうひとつのクロがある。ここはモノポールで、クロ・デュ・セリエ・オー・モワンヌの上部にあり、20%の急斜面だ。風が強いため風車もある。1級ではなく、フィロキセラの後1世紀もの間ブドウが植えられていなかった。0.27haの小さな区画で、石垣に囲まれている。セリエは粘土石灰質土壌で表土は50〜70cmだが、こちらは表土がわずか20cmのみ。2008年に13000株/haの高密度で植樹した(セリエは10,000株/ha)。急斜面だから株仕立てで、まさに修道僧がしていた方法だ。つるも2mと高く伸びるが、切らない。収穫量は少なく20hl/haで、2、3樽分しかできないから600〜900本と少量だ。醗酵は100%全房で行う。

他にメルキュレ、サントネー、(ジラルダンから畑を購入し)シャサーニュ・モンラッシェとピュリニー・モンラッシェも造っている。

(Y. Nagoshi)

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