イノベーティブブリュワー That’s Hop! & That’s Wow! 2シリーズ始動

サッポロビールは、100%子会社であったジャパンプレミアムブリューのInnovative Brewerブランドを、今年1月1日よりサッポロビールからの販売に切り替え、その第一弾としてフラッグシップブランド「SORACHI 1984」を4月から販売開始した。今後、That’s Wow! シリーズも展開する。このプロジェクトの主旨と経緯について、クラフト事業部の谷紘子マネージャー、同じくブリューイングデザイナーも兼務する新井健司マネージャーに話を聞いた。

 

イノベーティブブリュワー、の訳

サッポロビールがジャパンプレミアムブリューを立ち上げたのは2014年。当時すでにクラフトビールの認知度が上がり始めていた。そこで、ナショナルブランドならではの安心感を持つクラフトビールをつくりたいと考えたのがきっかけだという。その後、個性的なだけでなく「この会社がつくっているから飲みたい、と思われる、こだわりが必要だ」と考え、2年前から、Innovative Brewerブランドを立ち上げ、小スケールで様々な商品を展開してきた。そしていよいよ機が熟したとの感触を得たのだろう。全国で大きく打ち出すため、ジャパンプレミアムブリューではなく、親会社であるサッポロビールからの販売に切り替えた。

「ジャパンプレミアムブリュー設立当初から、『大手』の『クラフト』という点に矛盾を抱えていないわけではなかった。だから、あえて『クラフトビール』とは呼ばずビールを飲む楽しさや驚きを感じてほしい、変革を起こしたいという主旨から『イノベーティブブリュワー』と命名した」。

 

選び方の提案

イノベーティブブリュワーにはThat’s Hop!シリーズとThat’s Wow!シリーズがある。「様々な切り口でビールを選ぶきっかけになってほしい」と願ってのシリーズ化だ。

前者は今春発売開始された「SORACHI 1984」。同社が1984年に北海道空知郡のバイオ研究開発部で開発したフレーバーホップで、1994年にアメリカへ渡り、今では世界各国で使われているソラチエースを用いたものだ。今回発売の「SORACHI 1984」では主にアメリカ産で一部が北海道産と記してある。1缶あたりのコストと、国内の生産量を考えるとまだすべて北海道産を使用することはできない、というのが現実だというが、もともとは北海道の空知郡生まれであることに違いはない。

ビールを選ぶ際、クラフトビール先進国のアメリカをはじめとして、「ビアスタイル」で選ぶのが主流だという。「しかし、実際にはホップの種類によって味や香りが変わる。テストマーケティングしている期間でも、ホップの違いを楽しむ人もいるとわかり、中でもソラチエースに対する反応が最もよかった。さらに、また買いたいけれどどこかで売っていないのか? との問い合わせも多かった。だから、第一弾に「SORACHI 1984」の発売に踏み切った」。4月下旬から樽生販売も開始しており、よい感触を得ている。

一方でThat’s Wow! は、昨年ジャパンプレミアムブリューで販売したシリーズを受け継ぎ、新しいビアスタイルを提案する。6月11日に「スカイピルス」、9月に「ビアチェッロ」、12月に「グルメビア」を数量限定で発売する。「スカイピルス」は、キレ味を突き詰めたもの、「ビアチェッロ」は、果皮を使ってジューシーな苦味を表現したもの、「グルメビア」の鍵は旨味で、塩と黒胡椒を使用する。「これらで既存のビールの概念を少しずつアップデートしていきたい」。

 

顧客像

クラフトビールのファンは「20代から50代まで幅広いが、今のところ2パターン存在していると感じている」という。

一方は、マニアックで深く突き詰めていくタイプで、高アルコールのもの、あるいは酸味が強いものなど、エクストリームな中味にも反応がよい。もう一方は、ワインを楽しむようなイメージで、シーンに合わせて飲みわけたいという人たちだ。ただ、基本的には新しいものへの関心が高い人で、今のところハマるのは男性の方が多い傾向であるという。「間口をどう広げるかが長らくの課題ではあったが、徐々に広がり始めてきたと感じている。今後は、いかに気軽に楽しめるようにできるかどうかにかかっているのではないだろうか」

 

サッポロビールは100年以上に亘り大麦とホップの育種を行ってきており、個性的なホップを育ててきた歴史がある。だからこそ「ホップでビールを選ぶ楽しさを伝えたい。いずれ、『ソラチありますか?』と言われる時代がくれば」と期待している。そして「ホップでビールを選ぶ」という行為を「日本発の新しいビール文化」にしたい」と、締めくくった。

 

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