ビール市場に回復の兆し 20年ぶりプラス着地なるか

昨年のビールは年間では僅かに前年を下回った模様だが、9月単月では5年ぶり、7~9月(第三四半期)では実に11年ぶりにプラスとなるなど、久しぶりに明るい話題が誌面を賑わした。

プレミアムビール市場を牽引してきたサントリーがボリュームでは圧倒的なウェイトを占めるスタンダードクラスに、『ザ・モルツ』を上市したのが起爆剤となり、9月単月ではあるが、アサヒ『スーパードライ』、キリン『一番搾り』、サッポロ『黒ラベル』とビール各社の定番商品はいずれも上向いた。

これは大きく言って、ビール市場全体の活性化に寄与したことになる。そして、やりようによっては「山は動く」ということだ。

サントリーによれば、「全購入者の約3割が直近3カ月間でビール類を購入しておらず、他の酒類を購入していたユーザーからの流入で、メインターゲットである20~40歳代の年代層でユーザーを獲得できた」と分析した。その後の話では、『ザ・モルツ』は麦芽100%ビールなのでサントリーの主力商品『ザ・プレミアム・モルツ』とのカニバリが予想以上にあったというが、全購入者の約7割を占めるビールユーザーが通常の定番商品との“飲み比べ”をしたことになる。この“飲み比べ”をどう誘発させるかがこれからの需要喚起策の重要なポイントになることを物語っている。

昨年はビール、発泡酒、新ジャンルを含めたビール類で過去最大級の新商品が出揃ったという。その多くが主力ブランドからのエクステンション商品なので、まさにビールユーザーは“飲み比べ”を楽しんでいる。そのバラエティ深化から若者の間で急速に浸透しているクラフトビールもワインのようなビールの多様性を楽しんでいる面がある。メーカーからも次々と目から鱗の新しいタイプのビールが発売されることで、消費者がビールに求める価値観も徐々に変わりつつあるようだ。

こうした消費者の心の変化を鷲掴みしようとキリンビールは全国9工場での「地元うまれの一番搾り」を全国47都道府県に拡大して、地域密着型の“俺のビール”づくり(共創活動)に動きだす。そして、ビール市場の総需要拡大を目指すという。

キリンビールでは「通常の一番搾りとの併売により、カニバリを起こさず、一番搾り本体にも好影響を与えている」と分析している。これはまさしく“飲み比べ”効果の賜物といえるだろう。

一方、アサヒビールは昨年の歳暮商戦で「レギュラービールが103%と健闘した」と振り返った。他社からも(プレミアムから)スタンダードビールの復調が伝えられている。ビール減税を含んだ来年度の酒税改正は先送りされたが、これを先取りするかのような店頭での350ml缶6缶パックで1000円を切る価格帯での販売が市場を活性化させた。減税されればビールは確実に持ち直せるとの感触を流通サイドも掴んでいる。

昨年は持ち越しとなったが、今年、ビールが底打ちすれば20年ぶりの快挙となる。大きな試金石となる一年といえそうだ。(A. Horiguchi)

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