シャトー・ド・ナリス取得を通して垣間見えたギガルの品質至上主義

2017年7月に傘下に収めたシャトーヌフ・デュ・パプのシャトー・ド・ナリスのお披露目のため、マルセル・ギガル氏が妻のヴェルナデットさんとともに来日した。その取得に至るまで、そしていかに改革しているかなどを聞き、ギガルの厳格な品質第一主義やローヌワインに対する情熱などに触れることができた。

 

念願のシャトーヌフ・デュ・パプ

ギガルはコート・ロティ、コンドリュー、エルミタージュ、サン・ジョセフにドメーヌを所有しているが、シャトーヌフ・デュ・パプにも畑を持つことが父エティエンヌの代からの念願だった。ナリスは高名なドメーヌで、その名声を高めたことで知られるフィリップ・デュファイ医師が売却を決意した時、実はある国の王が手をあげた。しかし、ジャック・シラクが海外の手に渡ることを阻止し、保険会社のグルーパマが購入することになった」とマルセル氏。

ただ、グルーパマは顧客に農業関係者が多く、あまりナリスの品質を上げてくれるなと言われていたのだそうだ。つまり、潜在能力を秘めたまま造り続けていたのだ。しかし、ナリスを売却すると決めた保険会社の会長は、個人的な繋がりもあるギガルに声をかけてきた。会長自身がサン・ジョセフAOCの会長も務めており、ギガルがサン・ジョセフのヴィーニュ・ド・ロスピスをいかによくしたかを目の当たりにし、ギガルの仕事ぶりに絶大な信頼をおいていたからだ。そのため、法外な価格を提示されることもなく商談成立。

「ナリス取得を周囲も好意的に受け止めてくれているようで嬉しい。それに、取得後にメゾンのシャトーヌフもそれまでの倍も売れるようになった」と満面の笑みだ。

ギガルによる変革

シャトー・ド・ナリスはシャトーヌフ・デュ・パプのほぼ中心に位置しており、シャトー・ラヤスにも近い。畑は「ナリス」「ル・ボワ・セネシャル」「ラ・クロー」3か所で、それぞれ20haずつある。また、今後あと20haを購入する予定だという。シャトーヌフでは全体の5%ほどが白ワインというのが標準のようだが、ナリスでは20%と比率が高いのも特徴だ。シャトーヌフで認可されている13品種すべてが栽培されていて、混植されているが醸造は品種ごとに別々に行なっている。理由は「醸造の過程でそれぞれの品種が異なる育ち方をするから」。買収後にもともとあった古いカーヴ以外はすべて取り壊して立て直すという大改造中で、およそ160個の発酵槽を導入する予定にしている。

前オーナーの時代には、赤白ともにクラシックと上級キュヴェの2種類あり、ギガル傘下後には「サント・ピエール」と「シャトー・ド・ナリス」の2種類だが以前とはキュヴェの分け方が異なる。どちらかといえば「シャトー・ド・ナリス」に古木のブドウを使うことが多いようだが、基本的にすべて試飲により分ける。13品種もあるため収穫は8月下旬に白品種で始まり、最後は10月初旬まで続くが、常に最適な成熟度を見極めて行うため同じグループの収穫人を収穫期間中ずっと雇って継続して収穫するのではなく、頃合いを見極めてその都度雇い直すのだという。大変な手間だが同じ畑でも何度も何度も収穫することにより、ワインの品質保証に繋がるのだ。

また、前オーナーの時代より赤の樽熟成期間を伸ばしている。

 

ところで、後継ぎで一人息子のフィリップは14か所でディプロマを取得し、アデレード大学も卒業しているという。「自分は高校を卒業してすぐに仕事を始めたから」、息子には学ぶ機会をできる限り多く与えたいと考えたそうだ。「でも、まだまだ息子には負けない!」と力強く言うマルセル氏は、実に厳格な考え方を持つ人だ。「ギガルには特にセールスマンはいない。しかし、品質を第一に考え、顧客の声を常に聞いている。家族経営だから銀行や株主からの圧力もない。だから利益が出ても品質を高めるためだけに使う」と断言する。

例えば、メゾンのワインのためにブドウを購入する時、基本的に全てキャッシュで支払う。もちろん、上質なブドウを届けた栽培者には多く支払うが、その栽培者を紹介したクルティエにもプラスアルファを支払うという。「皆、人間だから」と微笑むマルセル氏は、実に人間味に溢れた頑固一徹な品質至上主義者だった。(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

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