ハーラン・グループが進める 新しいプロジェクト カベルネ100%のプロモントリー

↑ ウイル・ハーラン(右)、コーリー・エンプティング両氏 ↑

  ハーラン、ボンド、メイトリアークに続く、ハーラン・グループの新しいプロジェクト「PROMONTORY(プロモントリー)」が着実に進行している。

プロモントリーのエステートはマヤカマス山脈東側の中腹、平均斜度40度という急峻なところに拓かれている。AVAヨウントヴィルにあるこの土地は、直ぐ北のオークヴィルにあるハーラン・エステートとは距離にして400m位しか離れていないが、森に囲まれ他からはみることができない“ナパの秘境”といえるところ。

今春3月にリリースされた2013年ヴィンテージの紹介を兼ねて来日したハーラン家の2代目でプロモントリー社長のウイル・ハーラン氏は新プロジェクト誕生の経緯とこれまでの進化の過程について次のように語る。

「この土地は1980年代に父ビル・ハーランが見つけて注目していたが、当時は畑もなく、売りに出されてもいなかったのでそのまま忘れさられた状態にあった。しかし、2008年になってこの土地が売りに出されていることを知り、この新しいプロジェクトがスタート。当時はリーマンショックで米国経済は厳しい状況下にあったが、我々にとってはラッキーなことだった」

「プロモントリーはナパの他の土地とは全く違う個性がある。ハーランとプロモントリーの間には断層があり、堆積土、火山性、そして変成岩という3つのタイプの土壌が入り組んでいる。さらに、この場所は霧の通り道にあり、ブドウ成育期の4~10月の間は湿気を含む冷涼気候が続く」。

プロモントリーでは、敷地面積340haの内、32haにブドウが植樹されている。99%がカベルネで、残りは従来から栽培されていたプティ・ヴェルドとメルロ。

「プロモントリーでは前の所有者が少しだけ葡萄畑をつくっていたが、良いブドウとはいえず他のワイナリーに売却していた。土地を取得した最初の3年間は前の畑をどのようにするかじっくりと研究を重ねたところ、ブドウもワインもとても個性で、違うキャラクターをもっている。そこで3年間かけて全て改植するという当初の方針を改め、40%は昔の畑を活かし、その他のブロックでは自分達のノウハウを活かしつつ新しく畑を拓いた。植え替えに使った苗木はマサルセレクション。新しい畑ではこれまでの2000本/haを6000~8000本まで植密度を上げ、剪定法や台木も替えた。仕立て方もVSPを主体に、コート・ロティに倣った棒造りや株仕立ても導入。醸造面では、発酵はステンレスタンク、オーク樽、コンクリート槽の3種を使用し、熟成には2012年から一部300hl容量の大きな木の発酵樽を導入した。これはニュートラルな樽を求めてヨーロッパに出向いてやっと見つけたオーストリア製で、ナパではまだ使っているところが少ない。良い状態で使いこなすには時間が掛かり、当初は若い樹のワインを入れ、2013年以降は100%この樽で熟成。樽熟成期間も1年目は24か月かけたが、今後はもっと長くする必要を感じている」と、コーリン・エンプティング氏。コーリンはハーラン・グループの醸造責任者ボブ・レヴィーの全幅の信頼を得てこれまで実質的にワイン造りを担当し、プロモントリーでは栽培管理から醸造に至る全ての工程を管理するディレクター・オブ・ワイングローイングを務めている。

PROMONTORY 2011 オフィシャルなトレード・リリースは無く、蔵出しワイン。とても冷涼な年で、受粉の時に降雨があり、収量は少なかった。収穫期も霧が多く、カビが発生したが、霧が晴れた後は日照に恵まれ、ブドウはしっかりと熟した。「ナパのワインは一般にふくよかな果実香があるが、このワインはリーンでミネラルがしっかりと口中に残るのが特徴。アロマの層が豊かで、タンニンもエレガント」

PROMONTORY 2012 暑すぎず寒すぎず、ブドウの成育期の天候が順調に推移した。味わいはソフトでマイルド、「華やかで拡がりのあるワイン」。初めてオフィシャル・リリースされたワインで、参考小売価格は10万円(税別)。

PROMONTORY 2013 萌芽期に雨が少なく、ブドウの成育がゆっくりと進んだ。「プロモントリーの畑は風が強いので果皮が厚い。その結果、タンニンが強く、味わいは濃厚だが硬くなりがち。2013は特にこの傾向が強い。しかし、クリアなミネラル感、フレッシュさを伴った香味の美しさ、余韻の長さがある。瓶熟成中も常に変化し続けているので、今後が楽しみだ」

「プロモントリーは今後もカベルネ100%でいくが、これまでもヴィンテージごとにキャラクターが全く違う。若木も樹齢があがればどんどん使っていく予定だが、個性がしっかり出てくるには25年は必要だろう。土地と会話しながらさらに次の高みを目指していきたい」。

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