ベガ シシリアのアルバレス家により 栄華を取り戻した トカイ オレムス

現在5つのワイナリーを所有するテンポス ベガ シシリアのCEO パブロ アルバレスは、常に「ベガ シシリアのようなエレガンス」を求めている。1993年に取得したトカイ「オレムス」を含めその哲学を聞いた。

 

最高品質のワインだけ

リベラ デル ドゥエロの地名を覚えていなくても、ベガ シシリアの名は知っているという人は多いかもしれない。この伝説的なワインを創り上げたアルバレス家の長は、立派な体格で、一言ずつ丁寧に発する、慎重な人だ。唯一スペインの外で造る「オレムス」について、なぜハンガリーに注目したのか尋ねた。

「トカイ アスーは、400年以上名声を博してきた。しかも、世界一酸が高い甘口ワインで、バランスが最高によい。ちょうど1989年にハンガリーで社会主義が終結し、国有地が売り出され始めた。当時、畑は荒廃していたがその復興に挑戦することにした」。

彼が選んだオレムスは、17世紀初頭にハンガリー王家が所有し、初めて甘口ワインのトカイ アスーを生み出した由緒ある畑だ。その後、世界3大甘口ワインのひとつとして栄光の時代を迎えるが、社会主義政権下で畑の手入れはおろそかになった。アルバレスは購入すると、再植を含めてまず畑を整えることから手をつけた。

また、今ではトカイ地方であたり前になっている辛口のフルミントの先駆けもオレムスだった。1999年が初ヴィンテージで「アスーを造るための辛口ワインは、もともとフルミント100%で造ってきた」。甘口市場が縮小していることも理由のひとつだが、辛口でも十分美味しいと確信した。辛口用の「マンドラス」畑は甘口用の畑とは異なり、川から距離があり、南向き斜面で風通しよくドライなため貴腐菌がつきにくい。収穫量はアスーの約1hl/haほどではないが、約25hl/haと低い。

2016年ヴィンテージから、ブルゴーニュの醸造家をコンサルタントとして招いた。ステンレスタンクと135ℓの小樽で50%ずつ発酵し、その後の熟成は6か月。基本的な造りは当初から変えていないが「収穫のタイミングや醸造において、より正確になった。以前はもっと重たい味わいだった」。向上心が尽きることのない人だ。

暑いトロでもエレガンスを

ところで、パブロ アルバレスは「常に進化し続けなければならない」と考える完璧主義者として知られている。その終わりなき追求の一例が、リベラ デル ドゥエロよりも暑いトロの「ピンティア」にも見られた。通常、トロは味わいの濃厚さからその暑さを想像できる。ところが、ベガ シシリアのグループが手がける「ピンティア」は、驚くほどエレガントなのだ。トロのワインは粗々しいイメージがあるが、エレガントに表現できるように多くの手立てを講じている。自根のティンタ・デ・トロを、酸度が下がらないうちに収穫し、アロマを保つため5℃の冷蔵施設へ運び、4〜5日低温浸漬し、徐々に温度を上げて9〜12日ステンレスとフレンチオークの大樽で最高30℃までで発酵。その後のマセレーションはせずすぐ同様の容器に移し替え11か月熟成後、瓶内で3年熟成させる。毎年微調整とマイナーチェンジを繰り返している。

現在5ワイナリーで650haの畑を所有しているが、既に新たなプロジェクトが始動しているようだ。ただ、大変慎重な人で、その内容については「まだ口にできない」と笑う。どこで何が始まるのか、楽しみでならない。(Y. Nagoshi)

輸入元:ファインズ https://www.fwines.co.jp

 

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