最古のケンタッキー・バーボンウイスキー バッファロー・トレース蒸留所

1773年に創業した由緒ある蒸留所は、大洪水、2度の世界大戦、そして禁酒法時代も乗り越えてきた。その後バッファロー・トレースと改名した歴史ある蒸留所よりマスター・ブレンダーのドリュー・メイヴュルが来日し、マスター・クラスを開催した。

長い歴史

バッファロー・トレースは、ケンタッキー川沿いの広大な敷地にある。ここで蒸留を始めたのは1857年のこと。1773年の創業から何度も改名もしたが、ちょうどケンタッキー川の浅瀬を渡るバッファローの通り道だったことから1999年にこう命名した。禁酒法時代にも蒸留を許された数少ない蒸留所で、それは医師が処方する薬用ウイスキーを瓶詰めする許可を受けていたからだ。

また、フランクリン地区で最も古い建物のひとつと言われる倉庫をイベントスペースに改装しようとしていたところ、思わぬ発見があった。モダン・バーボン産業の父と呼ばれるE.H.テイラーJr.時代(当時の社名はO.F.C.)、1873年の蒸留所跡が地下に眠っているとわかった。そこで100万ドルかけて「バーボン・ポンペイ」の発掘を行った。すると、小ぶりなプールのような石づくりの長方形の発酵槽がいくつも出てきた。この貴重な「遺跡」のいくつかを復元し、E.H.テイラーJr.が銅がより品質の高いウイスキーをつくると考えていたことに倣い、発酵槽の内側に銅板を貼った。ここで発酵させた原酒は、今はまだ樽熟成中だ。「すでに試飲は終えているが、味わいが整うまではリリースしない。今のところ他のものとは随分違うと感じている」という。基本はウイスキーレシピツリーのライ・マッシュ バーボン#1」のグループに入るようだ。

ウイスキーレシピツリー

ドリュー・メイヴュルは数多くのウイスキーのブレンドを手がけているが、彼の頭の中では明確に分類されている。それがウイスキーレシピツリーだ。例えば「バッファロートレース」は、「ライ・マッシュ バーボン#1」の中間に位置し、このレシピツリーの最高峰である「ジョージ・T.スタッグ」や「イーグル・レア」もレシピは同じだが熟成する倉庫や年数が異なる。実際には大変複雑なブレンドをしているのだが、簡単に説明するとそういうことになる。だから「この原理を知らせたら、ケンタッキーではどこでもバッファロー・トレースは売り切れ状態になったよ」と笑う。

そしてまず、原料の違いによる個性の違いを説明した。95%のバーボンで使用しているコーンは、甘い香りと味わい、フルーティーさを与える。コーンの次に多く使われているライ麦は、スパイシーさ、ペッパリーな辛みなど、独特な香りを与える。ライ麦の代わりに小麦を使うと、コーンのフルーティーさや甘さがより強調される。これらの他に使うものは、発酵に役立つ酵素を備える麦芽、石灰質で濾過した水、そして最も重要なのが白い粉、つまり酵母だ。そしてバーボンを完成させるために他の何にも置き換えることができないものが「時間」。熟成がバーボンを偉大にする。

世界一のウイスキーを造るために

バッファロー・トレースの目標は変わらず「世界一のウイスキーを造ること」で、4つのポリシーを掲げている。

1.品質に一切の妥協なし。試飲パネルは誰でも拒否権がある。

2.様々な味わいを追求する。

3.長い樽熟成。スコットランドより暑いケンタッキーでは樽熟成6〜8年がベストだと言われているが、ここではもっと長い。熟成が長くなるほど複雑性を増すと考えている。さらに、熟成について様々な実験を行ない、常に進化・改善を求めている。

  1. 様々なレシピの使用。同じ蒸留を経たものでも、貯蔵する倉庫の資材、年代、環境により味わいが異なる。樽を動かしたり回転させたりするのは味わいを均一にするためだが、ここでは樽を動かさず、そのまま熟成させてブレンドの選択肢を増やす。

ケンタッキーは日中暑く、夜は冷える。例えば、倉庫がメタル素材だと熱を直接受け、熱伝導が早いので樽に圧力がかかり夜は冷えて減圧される。そのため水分が蒸発しやすい。季節による変化も大きい。反対に、石やレンガの倉庫は壁が厚いため温度が一定。倉庫の中でも上下で温度差があり熟成のスピードが異なる。外気の温度や湿度によっても熟成が異なるため、川沿いと山の麓でミクロクリマが異なり異なる影響を与える。

このように様々な原酒ができるため、マスターブレンダーの役割がより重要になるわけだ。「レシピも熟成も異なることをふまえて、じっくり味わってみてもらいたい」。

 

<バッファロー・トレース / ライ・マッシュ バーボン#1

同じレシピツリーの平均8年熟成でフラッグシップのブランド。バニラ、キャラメル、スパイス、黒胡椒、丁子、りんご、シナモン、柑橘類も香る。コーンに由来する甘みとライに由来するスパイシーさがとてもよくバランスしている。

バッファロー・トレース蒸留所では、全ての熟成庫にヒーターが備え付けられていて、庫内の気温が13℃以下になるとスチームが入る。ケンタッキー州は冬にマイナス20℃になることもあるため、普通は8年でこれほど濃密な熟成感はえられないという。

 

 

<サゼラック・ライ / ライ・マッシュ>

約6年熟成。バニラやキャラメルなど最初は甘くてフルーティーで飴のようで、だんだんとスパイシーさが増していくから、コーンの比率も高いとわかる。2019年のベストウイスキー3位に選ばれたトーマス・ハンディは、バレルからストレートに取っているのに対し、これは90プルーフで、濾過されていて、熟成6年、という点が違うが同じグループ。ストレート・ライウイスキーは今アメリカで人気上昇中。

 

 

 

<イーグル・レア10年/ ライ・マッシュ バーボン#1

バッファロー・トレースと同じレシピツリーで、さらに豊かな香り。チェリー、チョコレート、ココア、その下に強くはないがスパイシーさも感じられる。デーツや干しイチジク、黒砂糖などが香りリッチで、余韻が長く複雑。

 

 

 

 

<イーグル・レア17年/ ライ・マッシュ バーボン#1

特別に試飲に供されたのは、「ラグジュアリーなアンティークリリースで、今までに5回しか出していない」という17年。チョコレート、チェリー、そしてヘビーなオーキーさ、レザーやタバコなど大変魅力的な香り。10年は90プルーフだったが、これは101プルーフ。(同じレシピツリーの)ジョージT. スタッグはそのまま樽から出すが、これは101プルーフまで落とすため、マスターブレンダーの腕の見せどころ。

 

 

 

 

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