- 2016-3-3
- Spirits

キリンビールはウイスキー市場が拡大する中で、同社ウイスキーのラインナップを再編して更なる顧客接点の拡大を図る。
国産ウイスキーでは本格志向の高まりを受けて、昨年発売10年目を迎えた『富士山麓樽熟50°』はいったん終売し、より付加価値を高めた『富士山麓樽熟原酒50°』として3月22日に新発売する。
新商品では原酒本来の味わいを楽しみたいというニーズに応え、樽出し時に近いアルコール度数50%はそのままに、冷却濾過せず、ノンチルフィルタード製法を採用することで香味に深い味わいを持たせた。また、富士御殿場蒸溜所のこだわりを高めたグレーン原酒を多く使用することで、円熟味のある味わいに仕上げた。将来的な海外進出に向け、容量は現行600mℓから700mℓに変更する。同時に値上げする。オープン価格・想定1500円前後。
一方、従来の価格帯には、後継品として新商品『オークマスター樽薫る』(abv40%)をフルライン(640mℓ、2700mℓPET、4000mℓPET)で発売する。チャードオークの「薫香」を活かしたブレンドにより、すっきりとキレのある飲み口に仕上げた。特に業務用市場での“樽薫るハイボール”提案を強化する。なお、『ボストンクラブ』は5月を目処に終売する。
輸入ウイスキーでは、スコッチウイスキー『ジョニーウォーカー』のブラックラベルでギフト需要への対応を強化し、レッドラベルでハイボール市場への提案による接点拡大を図る。
『ホワイトホース ファインオールド』(abv40%)はスコッチウイスキーの定番ブランドとして育成する。世界市場での意匠変更に伴い、パッケージを一新し、3月上旬から順次切り替える。瓶型変更は700mℓ、1000mℓ。200mℓ、1750mℓは現行通り。また、大容量サイズの4000mℓPETを3月15日に発売する。大容量サイズのペットボトルはいずれも料飲店でのハイボール需要に応えるためにラインナップを拡充した。
グローバルなウイスキーづくり目指すキリン富士御殿場蒸溜所
キリン富士御殿場蒸溜所は富士山の麓、海抜620メートルの地点に広がる総敷地面積16万5820平方メートル(約半分が緑地)に位置する。新宿から東名自動車道を使って2時間、JR東海御殿場駅からはタクシーで20分。富士山の世界文化遺産登録により、蒸溜所への来場者数も年々増えており、昨年は6万人が訪れた。敷地内にはスカイツリーと同じ634メートルの展望台から、富士山を望むことができる絶景スポットもある。
同蒸溜所の前身であるキリン・シーグラム御殿場工場が操業して2013年には40周年を迎えた。1972年にキリンビールとシーグラム社(米国)、シーバス・ブラザーズ社(英国)の3社合併によりキリン・シーグラムを設立した経緯がある。このため、シーグラムのアメリカン(バーボン)とカナディアン、シーバスのスコットランドの技術を持ち寄って、グルーバルなウイスキーづくりを目指すというポリシーがある。設立当時から単一の蒸溜所でモルトとグレーンの2つのウイスキーを造り分けているのもそのため。キリンウイスキーの造りの原点であり強みともいえそうだ。(A. Horiguchi)
- ラインアームが上を向いているランタンヘッド型の初留釜。クリーンで雑味のない蒸留液が得られる。モルトウイスキーは2回蒸留。1回目の蒸留で約18%まで濃縮する
- バジル型の再留釜。2回目で約70%に濃縮。ヘッドとテールは取り除かれ、ハーツのとりわけ質の良い部分のみ(ハートオブハーツ)だけが使われる。いわばウイスキーの“一番搾り”。これを50%まで加水して樽熟される
- グレーンウイスキーをつくる連続式蒸留器。真中奥が多塔式(5塔連立式)、右がバッチ式(ケトル&カラム)。さらに、最初に発酵液を濃縮するビアカラム&タブラーがある。これらを組み合わせることで、ライト、ミディアム、ヘビーと多彩な香味タイプのグレーンウイスキーを造り分けることができる
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