ロン サカパ カクテルコンペティション2018 ファイナル 優勝者 銀座Bar 保志 IRIS 細田侑由 さん

若手バーテンダーの登竜門としても注目を集めているMHDモエ・ヘネシー・ディアジオ社主催「ロン サカパ カクテルコンペティション」。応募者数も年を重ねるごとに増え、5回目の2018年は130人を超えるエントリーがあった。

このコンテストは1次審査に書類選考、2次審査に実技が行われる。

厳正なる書類審査の結果、今年、2次審査に上がれたのは32人。約4倍の狭き門である。

当日は2人ずつエントリーしたカクテルを5分で5杯分作成、すべてテイスティングをして審査を行うものである。

 

細田侑由さんは第3回目より参加している。書類審査は通過、実技審査で好成績を残しながらも入賞には手が届かなかった悔しい過去が彼女にもある。「この仕事に就く前、ふらりと立ち寄ったバーで出されたのがロン サカパでした。名前は知らなかったけれどラム、というお酒がこんなに美味しいものなのか、と驚いたことを鮮明に覚えています。それからいろいろなバーでラムというのものを意識して飲むようになり、ますますロン・サカパの魅力にはまっていく自分がいました」

バーテンダーとなりいくつものカクテルを手がけるようになると「カクテルについてもっと深く追求したい自分がいますね」と細田さん。彼女の意識の高さは挑戦するカクテルコンテストの成績にも如実に現れている。バーテンダーになって1年半後、2016年にはNBA関東主催「マリーブリザール・カクテルコンテスト」で優勝、副賞としてフランス研修に旅立った。2017年は「関東NBAジュニア大会」にエントリー、ラムをベースにしたカクテルで見事優勝をしている。そして2018年、3度目の正直と言ってもよいだろう、「ロン サカパ カクテルコンペティション」で優勝を手に入れたのだ。

 

カクテルの魅力とは

彼女にとってカクテルを作り出すこととは、と尋ねてみた。「今回のロン サカパに関して言うのであれば、真っ先にヒントになったのは開催時期でした。日本が世界に誇る桜が満開になる3月下旬。これが自分に中にこのカクテルの最終着地点を作れたと思います。カクテル名「CERESO」にも表現しています。味わいはそこから戻る感覚です。どのような形にしたいかイメージが描くことができたので、あとはどう落とし込んでいくのか。ロン サカパそのものの味わいを壊してはいけない。骨格のあるニュアンスをきちんと表現する。甘さにとらわれがちだけれど、そこはあえて抑えるべき。甘さがラムのコクを上まわってはいけないと思うから。桜も表現したい。香りなのか色なのか、味わいなのか……いろいろ想像していき、盛り込むだけ盛り込んでみてからの引き算、でしょうか、今回のカクテルは」と細田さん。潜在的な素質が彼女にはあるのだろう、味わいのニュアンスを明確にキャッチできる味覚があるのだ。書類選考通過の知らせを受けてから味の調整に入ったという。コンテスト当日まで約1ヶ月。「面白いもので、同じ材料、同じ分量であってもかすかな違いってありますよね。それを知るのも面白かったです。何よりも楽しく演技したいと思いましたし、優勝を狙う、というよりもカクテルを作るのがこんなにも楽しいのか、という気持ちも表現したかった」。それがしっかりと味わいに現れていたからこその優勝だったのではないだろうか。「カクテルは本当に化学のような反応があります。それを知るということがもっと自分を鍛錬させられる原動力になっているのかもしれません」。今はこのカクテル目当てのお客様も急増中という。

 

バーテンダーとしてのこれから

「若手」「ジュニア」の名の付くコンテストから卒業を迎える世代になりつつある細田さん。「これからは先輩方が切り開いてきてくださった道を自分なりに解釈し、伝統も踏まえながら新しいことに挑戦していきたいと思っています」。バーテンダーの世界は伝統と革新が同時に歩んでいるように感じる、とも。「いろいろなコンテストを見学するだけでも、本当に刺激を受けるし勉強になります。味わいもそうだし、作り方の所作も。でも何より、バーテンダーとしての在り方を常に学びたいですね。私は接客業が好きでお客様とお話しをする時間がとても楽しくて、それをきちんと味わいにも表現できたらとも考えています。欲張りかもしれませんが、その分、本質を深く追求できる気がしているので。次はどのようなカクテルを考えて形にするか、勉強を積み重ねたいですね」。

優勝カクテル Cerezo(セレッソ) 詳細は本誌をご覧ください

「ロン サカパ カクテルコンペティション」の副賞はロン サカパの生産地であるグアテマラへの研修である。「コンテストに優勝したカクテルが、ある意味今年のトレンドのカギを握る、とも言われています。ということは新しいトレンドを作るには、自分のスキルアップもしなければいけない、と感じています。まずは実際自分の眼で見ること。直接舌で味を覚えること。それらをどう日本に持ち帰って表現するか、その国のライフスタイルも含めしっかり研究したいと思っています」。

「有言実行」。この言葉がしっくりあてはまる細田さん。彼女が創り出す新しい味わいに期待したい。この夏、どのようなカクテルで出迎えてくれるのだろうか。(Satoko Fujisaki)

Bar 保志 IRIS 東京都中央区銀座6-3-7 AOKI TOWER 2F

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