エディターズ・チョイス2015 〜今年最も印象に残った銘柄 or 出来事〜

2015年も残りわずかとなりました。9月1日から始まったWEB WANDSの情報は、お役に立っていますでしょうか。

今年のまとめとして、本誌編集に携わる4名の印象に残った銘柄や出来事をお伝えしようと思います。来年2016年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

最も印象に残った出来事 by M. Yoshino

チリに続いて、豪州とのEPA協定が2015年1月15日から発効し、瓶詰めワインの8年間にわたる関税逓減とバルクワインの即時撤廃が実現した。この結果、豪州からのバルクワイン輸入はほぼ5倍に急増し、国内リボトル製品の中には店頭価格500円を切るものも登場している。伝えられるところでは、大筋合意したTPPも今年2月には各国の締結調印を目指しているという。残るEUとのEPA協定交渉にも拍車がかかるだろう。

一方、輸入ワインの更なる攻勢にさらされる国産ワインは、国産葡萄100%でつくられる「日本ワイン」の表示規定を定め、クールジャパンの目玉商品の一つとして海外市場への進出拡大をうかがっている。グローバル化の波は日本のワイン市場をも確実に巻き込んでいるが、耕作放棄地対策など栽培面での基盤の脆弱さをどうやって乗り越えていくか、いよいよ“待ったなし”の状況だ。

 

最も印象に残った銘柄 by M. Yoshino

シャトー・ミュザール ホワイト1999 & レッド1991/レバノン

セルジュの後を継いだ3代目、マーク・ホシャール氏

セルジュの後を継いだ3代目、マーク・ホシャール氏

ミュザールのワインを口にしたのはおよそ10年振りぐらいだろうか。

カベルネ・ソーヴィニヨン、サンソー、カリニャンをほぼ均等にブレンドし、四半世紀の熟成の時を経て開栓されダブルデキャンティングされてグラスに注がれたワインは、澄んだガーネットの色調を帯び、ブラックカラントやチョコレート、シガーボックス、キャンディやコンポートされた複雑な味わい。口に含むと尚フレッシュ感をとどめ、肌理細かく滑らかな舌触りを持った豊かな味わいが口いっぱいに広がる。カベルネのしっかりとした構造を持ちながらピノ・ノワールのようなエレガンスがあり、しかも時間の経過とともにより力強さと複雑さが増してくる。

シャルドネの祖先と言われるオバイデ種とセミヨンの祖先と言われるメロワ種をブレンドした白1999は輝くような濃い黄金色。マデイラやヴァン・ジョーヌのような少し酸化したニュアンスとともに、熟成したモルトウイスキーのような味わいも。辛口ながら、口のなかでは蝋蜜や熟した甘い果実の香り、そして味わいを下支えしている酸が心地良く、まだまだ飲み頃が続くことを予感させる。

ミュザールはミュザール。他のレバノンワインと一線を画すこの独特で不思議な香味はミュザールにしかない個性であり、戦乱が続く歴史のなかでも石灰質土壌の乾燥したベッカー高原のテロワールを反映したこのようなワインが生み出されているのは奇跡とした言いようがない。何故このようなワインが生まれるのかと問われて、「それがマジックなのさ」とワイナリーで得意げに説明してくれた故セルジュ・ホシャール氏の姿が今でも忘れられない。

 

最も印象に残った銘柄 by K.B.

アンティヤル・エッグタンク2012/アルバロ・エスピノサ/チリ

濃くてパワフルなワインから、やさしくてフード・フレンドリーなワインへの転換は南米の産地でも加速度を増して進行している。

アンティヤル・エッグタンク2012

アンティヤル・エッグタンク2012

アルゼンチンではメンドーサ・グアルタジャリーのマルベックがその先駆けだったが、今年の試飲で発見したのはアルタミラ(ウコ)のプーレ・マルベック2015。発酵・熟成にオーク樽を使わないプーレ(ピュア)なマルベックである。アンデス西側のチリでもオーク樽を使わないプラ・フェ・カルメネール2012がおいしかった。

たくさんの中から“今年の1本”を押すなら「アンティヤル・エッグタンク2012」だ。アルバロ・エスピノサは、畑の果実をそのままワインに表現するので、ともすれば力強くなりすぎるきらいがあった。ところが4月に2012年産を飲んで印象が変わった。以前よりやさしく、しなやかになった。このワインはエッグタンク(卵形のセメントタンク)で発酵・熟成したカルメネール100%。新鮮な果実とさわやかな酸味、とても滑らかなタンニンで味わいに厚みがある。新しいカルメネールの提案だ。インポーターさん、どなたか輸入してくださいませんか。

 

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