世界で起こるラム・リバイバル

世界のスピリッツ業界は近年伸び続けている。2017年の販売数量は約24億573万ケース(1ケース:9リットル)。2016年と比べて1.5%上昇、過去5年間で最高の販売量に達した。スピリッツが好調な背景にはテキーラ(2016-17 前年比+5.1%)、ウイスキー(同 +2.9%)の世界的な人気がある。40年以上に亘りアルコール飲料市場に特化しているリサーチ会社IWSRの2018年レポートでは、「クラフト・スピリッツ、フォトジェニック・カクテル、プレミアム・ブランドの世界的な流行に支えられ、ジン、ウイスキー、テキーラ、ウォッカ、ブランデー、ラムはその中核商品の効果的なマーケティングにより着実に市場を拡大」と記している。

 

“起源”を求め量から質へ

ラムとは、サトウキビの絞り汁もしくは砂糖を生成する過程できる糖蜜に水を加えたものを醸造し、蒸留させたスピリッツだ。さらにモロコシや甜菜を使う生産者もいる。蒸留所や熟成地、熟成期間などの規定もない。今、ラムは「リバイバル」、つまり欧米市場で再び注目を浴び始めているスピリッツだと言える。世界のトレンドに乗り、非常に自由度の高い蒸留酒であるラムは、よりファッショナブルなスピリッツとして人気が急上昇している。

2018年、世界で約13億1752万リットルのラムが売られた。世界のラム市場は1992年から伸び続け、2011年にピークを迎えた。その後若干の減少傾向となっていたが、2018年は回復している(2017-18 前年比+1.7%)。特筆すべきは販売金額だ。販売数量の減少にかかわらず成長を続け、15年前の2003年に比べると倍以上の金額となっている。IWSRレポートは「消費者はより甘い味のプロファイルから脱却し、オリジンと高品質な生産方法を伝えるブランドを求めている」と分析した。今、ゆるく規制されているラムの世界で、消費者はその原料や産地の“起源”を求め始め、造り手もその期待に応える動きが活発になりつつある。

 

各国のトレンド傾向

同じくIWSRレポートは、「特にヨーロッパでは低価格帯ラムの消費は減速したが、プレミアム価格帯以上*の市場15.8%増加した。スペイン、フランス、イタリア、ドイツを含む市場でプレミアム化運動が起こっている」と述べている。ラム消費主要国の消費傾向は以下の通り。

 

  1. イギリス見通しは非常に明るい

2006年以降、イギリスでのラムの販売数量は+32%、金額で+103%を記録。Wine and Spirit Trade Association(WSTA)は2017年に、「2016年に10億ポンドを超えたジンに続いて、ラムは2017年の年末までに10億ポンドを初めて超えるだろう。イギリス市場に流通しているラム・ブランドの数も、2006年には約50だったものが2016年には150に増えた。売り手と消費者双方の興味関心が着実に上がった証拠だ」と、ラム市場の好調をアピールした。

(取材・文 Rie Matsuki)

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