- 2020-10-29
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困難に打ち勝った歴史に残るヴィンテージ収量はやや控えめながらも品質は傑出か
ボルドーワイン委員会(CIVB/本部:フランス・ボルドー) は、2020年ヴィンテージの収穫状況について以下のようなレポートを発表した。
<ボルドーワイン 2020 早わかり>
- 豊かな色調とタンニンに加え、アルコールと酸のバランスがすばらしく、期待が高まる仕上がり。
- 予想生産量は過去10年の平均値を若干下回る。
- 暖冬のあとの春には、遅霜、雹・あられ、大雨などで局地的な被害が発生。
- 夏は酷暑で、収穫がピークを迎えた。9月前半は完璧な好天。
- ぶどう生育期間は、平年比で約15日早く推移。
- 早めの収穫(8月中旬から9月末)。
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新型コロナウィルス禍という未曾有の事態のもと、局地的・一時的にはさまざまな天候被害が発生して収量が下がるなど、幾多の困難に苛まれたぶどう生育期間であったことは確かです。
しかしながら、それでも天はボルドーに微笑みを返し、最終的には美しい収穫を迎えることができています。ヴィニュロン (栽培醸造家) たちの真摯かつ懸命な努力の甲斐もあって、ぶどう樹は見事な質の実りを今年ももたらしてくれました。難敵に対して果敢に立ち向かい、勝利を収めた2020年が、この由緒ある産地の長い歴史に刻まれる、忘れえぬヴィンテージになったことは疑いありません。
品質水準とワイン生産量
2020年のぶどう生育期間は、後述する通り、さまざまな天候被害に見舞われはした。しかしながら、その時期がうまく重要な時期からはずれていてくれたり、あるいはアペラシオンが限定されていたりしてくれたおかげで、結果的には総じて十分な成熟度の、健全で 優れた果実が得られている。ワインはまだ醸造途中で あるため、最終的な「判決」を下すには時期尚早であるものの、ヴィニュロンたちの顔は明るい。
開花時期が早く、受粉から結実が迅速かつ均質に 進むことは、ボルドー大学醸造学部が定義した「偉大なヴィンテージの条件」のひとつである。2020年の開花時期は例年より約2週間早く、好天のもと申し分ないペースで進んだことは、特筆すべきだろう。
色付きの期間に水分ストレスがかかることも、同じく「偉大なヴィンテージの条件」のひとつだが、この点で も2020年は十分すぎるほど。6月末から色付きが終わる8月上旬までの間、この年はほとんど雨が 降らず、1959年以来最も雨の少ない夏となった。
9月後半からは秋雨に見舞われたものの、早く 生育期間が推移してくれたおかげで、大多数のヴィニュロンはすべての品種の収穫を、9月末までに終えることができている(9月末の3日間は、好天であった)。比較的早熟な品種や地区・畑で、すばらしい熟度を備えた輝かしい状態のぶどうが、発酵タンクや樽に収ってくれたのは、喜ばしい限りであ る。 晩熟のカベルネのみ、降雨の中で収穫が進んだものの、もとより果皮が分厚いこの品種は、多少の秋雨には耐えることが知られている。見通しは決して暗くはないし、実際目だったカビの被害は見られなかった。
この年の黒ぶどうは品種を問わず、果皮が厚め になったのが目覚ましい特徴で、濃い色とたくましい渋味を備えた、力強い赤ワインが生まれそうだ。赤白問わず、アルコールと酸のバランスは申し分ない。
このように品質面では好材料が多く揃った2020 年だが、ぶどうの収穫量、すなわちワインの生産量については、過去10年の平均値(約500万ヘクト リットル)をわずかに下回る結果となりそうだ(ただし、 これはAOCによって差がある)。原因のひとつは、5月前半および6月を通じて降り続いた雨の ために、ベト病の被害が出たこと。とはいうものの、幸いなことに雨の時期が、上述のとおり開花および色付きの時期を避けてくれていた。よくない房を切り落としたことで、収量減にはつながったもの、品質へのマイナスは生じていない。
もうひとつの原因は、極端に乾燥した7月が招いた樹の水分ストレスと、8月末から9月前半にかけての気温上昇により、果粒が小粒になったことである。ただし、これは疑いなく、品質面ではプラスに数えられる要素だ。
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