人気クラフトジン MONKEY47 誕生にまつわるエピソード

昨今の世界的なクラフトジン・ブームの象徴的な存在であり、またその牽引者役を担ってきた「MONKEY47(モンキー47)」のブランド創設者、アレクサンダー・シュタイン氏が6年ぶりに来日した。 これに伴い、日本における同ブランドの紹介者である伊藤拓也氏(株式会社スモール・アクス、マネージング・ディレクター)を聞き手にしたトークイベントが都内・恵比寿のバー「Bar Triad」で開催された。会場では、同ブランドのリージョナル・ブランド・アンバサダーであるザッカリー・ドゥ・ジット氏が、「MONKEY47」をベースとした2種のオリジナルカクテルのバーテンディングを披露、来場者の喝采を浴びるひとコマも。

50年代のレシピに触発されて

まずはシュタイン氏がブランド創設の経緯について概説。「そもそも私はアルコール飲料を造りたかったのではなく、アロマ(芳香)を造りたかったのです」という言葉に彼のジン造りにおける哲学というべき考えを凝縮して見せた。「MONKEY47」は、ドイツ南部、バーデン=ヴュルテンベルク州のシュヴァルツヴァルト(黒い森)に2008年に設立された「ブラックフォレスト蒸留所」で、2年間の試行錯誤の末、2010年に生まれた。その誕生の背景には、インド・マドラス(現チェンナイ)出身の英国人で、空軍中佐となりドイツに移り住んだモンゴメリー・コリンズが残したとされるジンのレシピがある。が、このレシピはそのまま製造工程に使えるものではなく、原材料リストに過ぎなかったという。「そもそも、コリンズ中尉がレシピを残した50年代とは、蒸留技術にも大きな違いがあります。そのレシピから私がもらったのは、シュヴァルツヴァルトの清明な天然水と豊かな自然の恵みを使ってジンを造るというコンセプト、そして何よりもそれが素晴らしい結果を生むというインスピレーションでした」

実はシュタイン氏は元々蒸留所を経営するファミリーの出身。5人兄弟の末っ子として生まれた彼は、祖父や父親がシュナップスを造る姿を見て育ち、青年期には休暇に家業の手伝いもして、その世界の空気に馴染んでいたという。それもそのはず、シュヴァルツヴァルトは28000軒ものマイクロ蒸留所がある土地柄なのだ。コリンズ中尉が、友人たちと嗜むためのジンを造るのに組んだ蒸留所もそんな中の一つだった。しかし、シュタイン氏は、酒造の道には進まず、全く別分野のノキア(フィンランドの携帯電話会社)に就職。10年間勤めて、マネージャーの地位に就くまでになった頃、件のレシピと運命的な出会いを果たす。

「ジンを生産するにあたり、市場リサーチもしましたが、当時主流だったジンはどれも似たり寄ったりで参考になりませんでした。それで私は考え方を変え、自分の好みとするジンとは? を追求し、それを目指すことにしました。最初に到達点を決め、そこを目指すことにしたのです」2年間の試作期間に、試したボタニカルの数は140に上るという。その中から理想のアロマを構成するものを47種選んだ。「5、6種類のボタニカルでもジンを造ることは可能です。しかし、私が目指した複雑み、そしてシンフォニーのような味わいを実現するためには47種類が必要だったのです」ラムやウイスキーと比べ、ジン造りが最もクリエイティブだとシュタイン氏。そこには様々なボタニカルを試す余白が残されているからだと。「最も大切なのはレモンの皮です。フレッシュでクリスピーなレモンでないと。毎日6人の女性スタッフが皮むきをしてくれています。私自身も皮むきをしますよ」

パリ滞在中の日本人から電話

ローンチした当初から、輸出市場を視野に入れていたという。「2012年のある日、パリに滞在しているという、見知らぬ日本人から電話が入りました。蒸留所を見せてくれと」アブサンの買い付けのため渡仏していた伊藤氏だった。翌日、蒸留所を訪ねた伊藤氏は、その場で「MONKEY47」の輸入を申し込む(当初は伊藤氏の会社が輸入元になった)。シュタイン氏サイドはウェブサイトも整備できていない段階のことであった。

「日本ではまだクラフトジンという言葉さえなかった頃ですから、認知してもらうのは大変でした」と伊藤氏は振り返る。一方のシュタイン氏にとっても遠い日本の地で自分のジンが評価されるのか不安だった。が、素早く浸透した結果を目の当たりにした今では、ドイツ人と日本人に共通する完璧主義、クオリティ重視、ディテールへのこだわりと言った部分が商品理解につながったと分析する。

「日本はあらゆるプロダクツにとってベンチマークになる市場だと思います。それがクラフト物である場合は特に」

時にジョークを交えて来場者を和ますシュタイン氏に目を細めつつ、伊藤氏は「彼のユニークでユーモアのある人柄に触れてもらうことで『MONKEY47』に対する理解も一層深まると思います」とコメント。

一方、「日本に、そして伊藤氏に心から感謝しています」という言葉で、シュタイン氏は自らのトークを締めくくった。(Yasuyuki Ukita)

輸入元:ペルノー・リカール・ジャパン

 

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