グレイス ブランドブラン2014発売開始&垂直試飲

2016年6月に、山梨で朗報を聞いた時のことを今でも覚えている。当時「グレイス エクストラ ブリュット」という名前だった中央葡萄酒のスパークリングワイン2011年が、英国デキャンタ誌のアワードでプラチナ賞を獲得したのだ。その後、「グレイス ブランドブラン」と改名し、この12月には5年熟成の2014年が発売が始まった。栽培醸造責任者の三澤彩奈さんとオンラインで2014年含め数本を試飲しながら、その進化の過程を確認した。

 

初ヴィンテージの2008年

2008年だけはブランドブランではなく、シャルドネに25%のピノ・ノワールがブレンドされている。そのためか、あるいは熟成を経たからなのか、少し色合いが濃く味わいにも丸みが感じられ、加えてナッティーなニュアンスも出始めていた。

実際に販売したものは瓶内でのシュール・リー期間(以下、瓶内熟成)が2年だが、試飲したものは2013年7月にデゴルジュマンだから瓶内熟成4年。この検証により、瓶内熟成期間の長さで「これほどまで違いが出るのかと驚きました」と、彩奈さん。「でも、当時は今から思えばおままごとのようです」と笑う。

搾汁したピノ・ノワールがピンク色を帯びていて心配したが、樽発酵したことで樽のタンニンと色素が重合して色が落ちてホッとしたり、冬には静電気が発生して瓶内でのオリ下げがうまくいかなかったり。初めてのことが多くて、ドキドキハラハラしていたのだろう。

 

飛躍のきっかけとなった2011年

2011年のエクストラ ブリュットは、シャルドネ100%で2015年6月にデゴルジュマンした瓶内熟成3年。涼しい年だったということもあり、2016年に試飲した時にはキリッとした酸があり、カリッとした固い果実を思わせる香味だったと記憶している。それが、4年の時を経てソフトになっていた。ほのかに蜂蜜のニュアンスも出て、味わいにも柔らかさが加わった。しかし、彩奈さんらしいピュアでエレガントなスタイルはそのまま。

大きな賞をもらったことがきっかけとなり、責任感や緊張感が増したようだ。2011年からさらなる飛躍を遂げるために、翌年から瓶内熟成期間を5年へ延長。名前も「グレイス ブランドブラン」と改めることにした。

 

彩奈スタイルが確立した2014年

2014年は、リリースが始まったばかりの5年熟成を、3年熟成でデゴルジュマンしたボトルと比較試飲した。2014年も涼しい年で、真夏でも35℃まで気温が上がらなかったという。

3年熟成は、少しスモーキーで還元的で味わいもキリッとして固さがある。ミネラル感、あるいは骨格がそのまま見えるイメージだ。

 

ところが5年熟成になると、オリの自己分解に由来するトースティーな香りがほんのり感じられ、果実のニュアンスにもまろやかさが加わりミネラル感を優しく包み込み、なめらかな食感を醸し出していた。

当初は「5年熟成する!」と決めたものの、「大丈夫かな?」との不安もあったという。

結果は、お見事! 素晴らしい仕上がりだ。とてもピュアでエレガントな、冷涼産地のシャルドネらしさが表現されていて、大変印象的な1本だ。

暑い年だった2013年(やはり5年熟成)は、トーストや熟したリンゴのふっくらとした香りがあり、丸みも感じられ、酸も厚みも兼ね備えてる。好対照な2014年は、実にスレンダーでテンションがあり、エレガント。好みは分かれるのだろうが、個人的には2014年に一票を投じたい。

「ありがたい評価をいただいた2011年は、甲州を突き詰めている最中での遊び心の延長線上にあったように思うのですけれど、2014年は初めて納得のできた仕上がりとなりました」と、彩奈さん。

 

2015年からは基本はすべて5年熟成にし、今後はさらに7年熟成、10年熟成のトライアルもするようだ。標高が高く冷涼で、しかも日照時間が長い明野。その北向き斜面の畑で、ゆっくりと成熟するシャルドネ。ギュイヨ仕立てで収穫量は40hl/haと、まるでスティルワインのような少なさだ。2014年5年熟成の、本当に芯が強く若さがみなぎっている様子からすると、7年でも10年でも平気でクリアしてしまうのではないかと、勝手に想像してしまう。多くても毎年3,000本しか生まれないということだけが残念でならないが、今後がますます楽しみだ。

(text: Y. Nagoshi, photo:Tadayuki Yanagi)

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