フランス産チーズ「コンテ」とパンの関係

ワインやシャンパーニュとの相性抜群のフランス産チーズ「コンテ」。凝縮した旨味があり、日本でも人気上昇中だ。コンテチーズ生産者協会(CIGC)が、チーズプロフェッショナル協会公認キャラクター「チーズマン」として、チーズ普及活動を行っている清水啓介さんを講師に招き、オンラインで「コンテ」とパンのマリアージュについてセミナーを開催した。

 

コンテのテイスティングを指南する清水さん。ポキっと折って香りをとっているところ。

清水さんは「チーズ星からやって来たチーズマン。仮の姿が清水啓介」と、ユニークなコスチュームで自己紹介した。清水さんはパンマニアで、日本のパン屋1000軒以上を訪問していて、炊飯器を持たない時代があったほどだという。そして、パン好きが昂じて渡仏。「半年間のフランス滞在中に、フランス人のパンの食べ方だけでなくチーズの食べ方も学び、帰国後は、パンマニアというだけではなくチーズマニアにもなっていることに気が付きました」という。

 

テイスティングのポイント&コンテの多様性

まず、チーズの「テイスティング」を披露した。

  • 理想的な温度は、15〜18℃(夏は30分前、冬は1時間前に冷蔵庫から出しておく)
  • 五感で感じることが大切(外観、触感や密度、香り、味わい、結晶の音)

24か月熟成になると「結晶の音」というのもポイントになると聞いて、なるほど!と感心した。

「12か月熟成は、水分があり柔軟で口の中でも溶けやすい。ちなみに、皮のキワの部分は旨味が凝縮している部分なので、厚く残すと勿体無い。皮そのものは食べないのが基本」。

「24か月熟成は、ポキッっと折れる。香りが強く、結晶も出ている。アミノ酸の結晶のシャリッという音がし、旨みが爆発する」。

そして、コンテは実に多様であるという。

例えば、「コンテの最大の魅力はアロマの多様性。地域により生息する草花が異なるためで、60軒のチーズ工房の周辺の牧草の種類は1工房あたり130種類ほど、合計576種類にも及ぶ」。

また、冬と夏で風味が異なり、夏はフルーティーで、冬はナッティーになる。加えて、熟成期間による違いもあり、水分が抜けるだけではなく、絶えず進化しているという。

 

コンテとパンのマリアージュ

あらゆるパンとチーズを食べ続けてきた清水さんが、12か月熟成と24か月熟成のコンテとパンの理想的な組み合わせをいくつか紹介した。

1)カンパーニュ&コンテ24か月熟成、蜂蜜がけ

パンはジョエル・ロブションのパン・ド・カンパーニュを使用。

スライスしたパン・ド・カンパーニュをトーストし、焼き立てのうちに野菜のピーラーで薄く削いだ24か月熟成コンテを乗せる。パンの熱でコンテが少し溶けたところに、蜂蜜を少々垂らす。

焼き加減とコンテの薄さが肝心で、カンパーニュは薄めにスライスしてコンテの味わいを引き立たせる脇役とする。

2)コンテの目玉焼きチーズトースト、黒トリュフ風味

パンは、さっくり系の食パン。今回はセントル・ザ・ベーカリーのプルマンを使用。コンテは12か月熟成。

「マヨネーズ目玉焼きトーストが人気で、ラピュタトーストと言われています。これは、コンテ・ラピュタ・トーストでしょうか」と清水さん。「実はもっちりとした高級パンはチーズには合わない」とも付け加えた。

食パンを、5枚切りぐらいの厚さにスライスし、耳の部分から内側1センチに切れ目を入れる。その内側を手で少し抑えて低くしてから、軽くトーストする。

コンテはフライドポテトぐらいの棒状にカットし、窪みにコンテで土手をつくる。底の部分には薄く削いだコンテを敷き詰める。窪みに生卵を割り入れ、トースターで10分焼く。

焼きあがったら、トリュフ塩をふりかける。

3)イチジクパン&コンテ

パン・オー・フィグは、三宿のブーランジェリー ボネダンヌのものを使用。コンテは24か月熟成。

「パンの大きさに合わせて薄切りして乗せるだけ。シンプルだが。美味しいパンと合わせるのが一番」。

まだ、1の例しか試していないが、そのまま食べるコンテとはまた異なる魅力がある。

色々とトライして、さらにワインとの組み合わせを考えるのも面白そうだ。

 

おまけ:コンテのミニ知識

コンテは、フランス東部のジュラ山脈一帯(スイスと隣接するフランシュ・コンテ地方)で1,000年以上も前から毎日作られ続けている。厳しい冬を乗り越えるための保存食として作られたのが始まりだとか。

コンテはとても大きく、直径60cm、高さ10cm、重さ40kgもあり、ひと玉に牛乳400リットルを必要とする。

フランス産チーズおよそ1000種類のうち、45がAOPを取得している。そして、中でも生産量が多く人気の高いのがコンテで、AOPチーズの総生産量の28%を占め、フランスチーズの王者とも言われている。

(Y. Nagoshi)

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