エドモンド・ド・ロチルド・エリタージュ所有のシャトー・デ・ロレのキュヴェ・スペシャル「シャト・デ・ロレ・バロン(Chateau des Laurets-BARON))垂直試飲

パリのホテル・ムリスで「エドモンド・ド・ロチルド・エリタージュ」が所有する「シャトー・デ・ロレ」のキュヴェ・スペシャル、「シャトー・デ・ロレ・バロン(Chateau des Laurets-BARON))の垂直試飲会が催された。ピュイスガン・サンテミリオンにある40haのこのシャトーはシャトー・クラークをエドモンド・ロチルド男爵から受け継いだ一人息子のバンジャマン・ド・ロチルドがシャトー経営の拡大の一環として2003年に購入したもの。

 

作付け品種はメルロ80%、カベルネ・フラン20%。生産の多くは「シャトー・デ・ロレ」として出荷されるが、偉大なヴィンテージに限り「シャトー・デ・ロレ・バロン」を生産している。「シャトー・デ・ロレ・バロン」に当てられるのはシャトーの畑の中で最も高台にある平均樹齢70年のメルロの最良区画4ha。剪定、摘芽、除葉、夏季摘果など細心の注意を払った畑作業を行い、全て手摘み。醸造所においても厳密な選果作業を行う。

その後、低温でマセラシオンを行い、亜硫酸無添加で木製発酵槽で醸造する。発酵後マセラシオンの間にミクロオキシジェナシオン(微酸化作業)を行いタンニンと果実味の調和を図る。マロラクテック発酵を全て新樽で行い、16か月間樽熟成した後、目隠しで試飲し最良のキュヴェを選ぶ。

シャトーを管理するファブリス・バンデラ氏はアントル・ドゥー・メールの栽培家の出身。醸造、栽培を学んだ後、ランシュ・バージュ、ピション・バロンなどを経てプルミエ・コート・ド・ボルドーの45haのシャトーの総責任者を務めた。その後、1996年にシャトー・デ・ロレに加わり2002年から生産責任者として、現場の全ての作業を管理している。

今回の垂直試飲の為に用意されたボトルはキュヴェ・スペシャル「シャトー・デ・ロレ・バロン」2004、2009、2010、2016、2018、2019のマグナム6本。醸造コンサルタントとしてミッシェル・ロラン氏が助言をしており、2010年産までは豊かで厚みのある果実味が口の中で広がるミッシェル・ロランスタイルだが、2016年産以降は繊細で新鮮、緊張感のあるスタイルに変わってきている。

エドモンド・ド・ロチルドグループの資金力を背景に、最高の栽培、醸造技術を使って造られた「シャトー・デ・ロレ・バロン」はアペラシオン・ピュイスガン・サンテミリオンながらサンテミリオンのトップグループと十分比肩できる水準だ。個人的にはクラシックなスタイルを踏襲する2009年、2010年、そして現代的なスタイルの2018年、2019年を高く評価した。

ロチルド家の歴史は18世紀にフランクフルトのユダヤ人ゲットーで古銭商として働いていたメイヤー・アムシェル・ロチルドから始まる。その後、父親の意思を継いだ5人の息子がフランクフルト(AMSCHEL)、ロンドン(NATHAN)、ウイーン(SALOMON)、ナポリ(CARL)、パリ(AMES)で銀行業を立ち上げ成功し、ロチルド家の5本の矢の紋章となった歴史はよく知られている。

ワインの世界ではパリ分家のジェームスがシャトー・ラフィット・ロチルドの基になるシャトー・ラフィットを1868年に購入し、またロンドン分家の3男ナタニエルが後のシャトー・ムートン・ロチルドとなるシャトー・ブランヌ・ムトンを1853年に購入している。今回の試飲を主催した「エドモンド・ド・ロチルド・エリタージュ」を所有するエドモンド・ド・ロチルド家はパリ分家の3人息子の末っ子のエドモンドに連なる家系で、1973年にリストラックのシャトー・クラークを購入している。

エドモンド・ド・ロチルドグループを率いるアリアンヌ・ド・ロチルドさん(左)と、 ありし日のバンジャマン・ド・ロチルド氏。

メドック1級のシャトー・ラフィット・ロチルド、シャトー・ムートン・ロチルドに比べるとリストラックのクリュ・ブルジョワ、シャトー・クラークが話題になることは少ない。しかし、エドモンド・ロチルド・グループは銀行業務を含む資産規模が1660億スイスフラン(約20兆円)、従業員2600人と巨大だ。うちワイン部門は食品、レストラン、ホテルなどの事業と共に「エドモンド・ド・ロチルド・エリタージュ」の傘下にあり、今年の1月に57歳で急逝したバンジャマン・ド・ロチルドの跡を継いでグループの最高責任者となったアリアンヌ・ド・ロチルド男爵夫人の指導の下で新しい戦略を構築している。

シャトー・デ・ロレ、責任者ファブリス・バンデラ氏(右)とエドモンド・ド・ロチルド・エリタージュのワイン部門責任者、ボリス・ブレオ氏。

グループのワイン部門は1973年にエドモンド・ド・ロチルドが購入した「シャトー・クラーク(リストラック、55ha)」、「シャトー・マルメゾン(ムーリス、33ha)」そして、2003年に息子のバンジャマン・ド・ロチルドが妻のアリアンヌ・ド・ロチルドと共同で取得した「シャトー・デ・ロレ(ピュイスガン・サンテミリオン、40ha)」、「シャトー・ド・マランジャン(モンターニュ・サンテミリオン)」などボルドーのシャトーに加えて、1997年にアントン・ルパートとエドモンド・ド・ロチルドが南アに共同で購入した「ルパート&ロチルド・ヴィニュロン」、1999年にロラン・ダッソーとアルゼンチンのメンドーサに共同購入した「フレシャス・デ・ロス・アンデス(140ha)」、2012年にバンジャマン・ド・ロチルド夫妻がニュージーランドに購入した「リマペレ(24ha)」、2013年にリオハ、アルタにベガシシリアと折半で購入した「マカン(102ha)」など、ブドウの栽培面積は合計で500ha、生産本数は350万に達する。これらのワイン部門は2019年からブレス・ブレオ氏が統括している。

©PrinceGyasi

エドモンド・ド・ロチルド・グループを率いるアリアンヌ・ド・ロチルドさんはライフスタイル、芸術分野に高い関心を持ち、「エドモンド・ド・ロチルド・エリタージュ」部門の事業の一つとして展開している。工芸品アーティストのジル・シャブリエによって制作された、特別デザインの2016年産マグナム36本、ダブルマグナム36本の「シャトー・デ・ロレ・セレクション・パルセレール・バロン・エドモンド-ラテール(Château des Laurets, Baron Edmond, Sélection Parcellaire 2016, La Terre)」もその一つで、アリアンヌ・ド・ロチルドさんの依頼でガーナのアーティスト、プリンス・ジャーシーがボトルのプレゼンテーションを担当した。

(Toshio Matsuura / Paris)

 

 

 

 

 

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