「リーファーワイン協会」発足記念講演にてドライとの違いを科学的に証明

*品質劣化の具体的な原因と結果

「温度帯40度、25度、20度、15度」、「期間10日、20日、30日、40日」をそれぞれ組み合わせて、科学的データを得るための実験が行われた。

その結果、以下の事柄が明らかにされた。

写真では判別しにくいが、右のグラスがリーファーコンテナによる輸送のもの

写真では判別しにくいが、右のグラスがリーファーコンテナによる輸送のもの

「色」ワインの貯蔵温度が20度以上になると、遊離亜硫酸の濃度が50mg/ℓ以上であっても、色調の褐変が生じる。ただし、日常酒の場合には、赤ワインにおいては差を認められたが、色調の淡い赤や白においては差を把握することが困難。理由はポリフェノール含有量の差によるものと考えられる。

ドライコンテナ輸送の日常酒に混濁が認められた場合には、微生物の増殖に最適な40度という温度帯から考えて、酵母や乳酸菌によるものと疑ってよい。

「香り」GC-MS-SBSE法とGC-HS法で分析した。ぶどうに由来する第一アロマのモノテルペン、イーストや微生物が生成する第二アロマのエステル類が減少した(他の香気成分へ変化した)。

また、15度貯蔵よりも40度での貯蔵した場合に、大幅に増加する化合物を特定することができた。そのひとつはフルフラールという、チョコレート(あるいはキャラメル)のような甘く香ばしい香りで、閾値は20mg/ℓ。もうひとつはTDNという、リースリング独特の香りともいわれる石油に似た香りで、閾値は2mg/ℓ。

「味わい」官能検査によると、赤ワインでは、明らかに酸のフレッシュ感がなくなり、渋みが減少し、味わい全体がフラットになり、苦みが出ることが明らかだ。味センサーのMCTSを使ったところ、同様の結果がCPA値で確認された。

これらは、高温で貯蔵することによって有機酸のエステル化(通常、瓶熟成=嫌気的条件したでゆっくり進行する作用。乳酸、リンゴ酸、コハク酸などがエタノールと反応し、有機的なジエステル類となり甘い焦げ臭が発生する)が進行するとともに、渋みを呈するアントシアニジンなどのポリフェノール類は重合化あるいは小分子化することによって渋みの少ない形態に変化したものを思われる。

苦み物質については、ポリフェノール類であることは確認されているが、現在その同定を進めている段階。

*参考数値など

同じ銘柄のイタリアワインをドライコンテナとリーファーコンテナで輸入した場合、フルフラールもTDNも、ドライコンテナのほうが赤で3〜5倍、白で3〜4倍に増加した。

海上輸送はリーファーコンテナで行い、日本到着後の1か月を常温保管した場合でも、フルフラール、TDNは3倍前後増えた。

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