JAPAN HOP〜遠野セゾン〜 スプリングバレーブルワリー東京限定

代官山のスプリングバレーブルワリー東京から、国産ホップのMURAKAMI SEVENの新たな魅力を引き出す、セゾンスタイルのビールが限定発売されている。

「遠野セゾン」は、岩手県遠野で生まれる国産ホップ ”MURAKAMI SEVEN” と、 ”セゾン酵母” を使って作られたクラフトビール。一般的に、前者はみかんやいちじくの香りと心地良い苦味が特徴とされ、後者はスパイシーで華やかな香りを生み出すとされている。今回、この掛け合わせによる狙いはどこにあるのだろうか。この一杯で最も表現したいことは何か。ヘッドブリュワーの古川淳一さんに聞いた。

 

「これまでにホップ同士の組み合わせ例は多くありますが、ホップと酵母の組み合わせは稀です。ただ、2017年に前例があります」と、古川さん。2017年3月に、SVBのマスターブリュワー田山智広氏とブルックリン・ブルワリーのブリューマスター、ギャレット・オリバー氏によるコラボレーションにより、「SVB×Brooklyn MURAKAMI SEVEN」を限定発売している。これが”MURAKAMI SEVEN” と ”セゾン酵母”の初めての試みだったと言う。

”MURAKAMI SEVEN” は、キリンビールのホップ博士こと村上敦司氏が育種した稀少な国産ホップだ。

「この大切なホップの良さやおいしさを、今年はもっとアピールしていきたい」というのが第一の目的だと言う。そのために過去の事例を検証したところ、2017年の “セゾン酵母” との組み合わせが良い結果を生んだとわかった。

「”MURAKAMI SEVEN” は、温州みかんのような香りが口中でゆっくり、じわりと出てくるのが特徴です。一方で、”セゾン酵母” はさまざまな種類があるものの、スパイシーで華やかで鼻先ですぐに感知できてわかりやすい。このふたつは香りが出てくるタイミングが異なるけれど、組み合わせても違和感がないとわかりました」。

 

実際に味見をさせてもらうと、まずマスカットのようなスキッとした香りが立っていた。これがきっとセゾン酵母由来の香りのひとつに違いない。そして、穏やかな「みかん」の香りも感じとれる。確かにオレンジではなく日本のみかんを想起させる。まろやかな口当たりは少し高めの7.5%のアルコール度数も寄与しているのだろう。爽やかな酸味もほろ苦さも心地よく、穏やかな香りが余韻に残った。

実は ”MURAKAMI SEVEN” にはひとつ悩みどころがあったそうだ。香りが出てくるのがゆっくりだから、良さをわかってもらいにくいという点だ。しかし、香りを強くしようとたくさん使うと苦味も増えて香りも変化してしまう。そこで、過去の”セゾン酵母” とのコンビが良好であった例に倣いアレンジを試みたのだ。

時には、掛け合わせがうまくいかず違和感を思わせる組み合わせになることもあると言う。しかし今回は当初想像した以上の仕上がりになったと感じている。ただ、「まだ完成形ではないと思っています」と断言。さらなる進化系を期待させる。

今回の ”MURAKAMI SEVEN” と ”セゾン酵母” の話を聞き味見しながら、ボルドーの白ワインにおけるソーヴィニヨン・ブランとセミヨンの関係に少し似ていると思った。ソーヴィニヨン・ブランはとてもわかりやすい華やかな香りと爽やかな味わいで、とくに若いうちから実力を発揮する。一方でセミヨンは、香り穏やかでどちらかと言えば味わい美人、そして数年熟成してからようやく花開く奥手のタイプ。両者のブレンドでバランス良い香味を形成する好例だ。

 

ところで、”MURAKAMI SEVEN” の栽培は拡大中だと言う。しかし、日本のブドウ栽培と同様に就農者が増えなければ将来の展望が見込めない。古川さんは、「日本のホップの良さを感じてもらい、評判を獲得し需要を増やすこと。そして就農者を増やすこと。これを同時進行しなければならないと考えています」と言う。だからこそ、今年は ”MURAKAMI SEVEN” の魅力を伝える強化年と位置付けているそうだ。この後の展開も楽しみにしたい!

 

<おまけ:古川さんのミニミニクラフトビール講座>

セゾンスタイル:セゾンスタイルのビールはベルギーが始まりで、農家が夏に飲むことを前提に自生酵母で自家製ビールを作っていた。糖分があまり残らずドライな味わいになるので、暑い夏にスッキリと飲めるビールだったのだ。

そもそもセゾンスタイルのビールは、コリアンダーやレモンピールなどを使うがホップをあまり使わないのが主流だったと言う。ただ、アメリカでクラフトビールがトレンドになる中でさまざまなホップとの組み合わせも出てきており、今後もホップとの組み合わせをさらに追求できると考えている。

(Y. Nagoshi)

スプリングバレーブルワリー東京

関連記事

ページ上部へ戻る