- 2022-6-13
- Beer
パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会(CFPR)は、ジャパンビアソムリエ協会会長、山上昌弘氏を講師に招き、6月2日にプレスセミナー「パルミジャーノ・レッジャーノの魅力と酒肴ビアペアリング」を開催した。
パルミジャーノ・レッジャーノは、北イタリアのアペニン山脈、ポー川、レノ川に囲まれた地域で作られる。その名はエミリア・ロマーニャ州のパルマ県とレッジョ・エミリア県に由来。この地域で酪農を営む修道士たちによって育まれた製法は、約1,000年の歴史を経て今なお継承されている。60種類以上の草が自生する牧草地では、良質な乳酸菌が生乳に独特の風味をもたらす。塩と天然の凝乳酵素のみの使用、添加物や保存料なしに長期熟成可能にする。世界に知られる熟成ハードチーズの代表格だが、正式名称の認定は1938年。1996年に原産地呼称保護(DOP)認定を受け、EU圏内では2008年に他のチーズが「パルメザン」を名乗ることが禁止に。CFPRの厳しい審査をパスしたものだけが、この呼称を許されている。
パルミジャーノ・レッジャーノの最低熟成期間は12ヶ月。熟成の度合いによって異なる旨みの深さと独特の食感、部位や調理法ごとに、ビールのペアリングは行われた。
山上氏は、酒肴としてのパルミジャーノをイタリア料理のコースに見立てて構成。まずは、アベリティーヴォとしてビールの泡の上にチーズを削って食べることを提案。泡が消えないうちの賞味期限15秒の楽しみ。
以下のペアリングが紹介された。
1.アンティパスト:皮ポップコーン風味
エルディンガー・アルコールフリー(ドイツ / 微アル / ABV0.4%)
電子レンジで加熱しポップコーン状に。サクッとした食感と泡のテクスチャーが合う。黒胡椒を振ると、ピルスナー、ヘレス、すっきりしたゴールデンラガーにも。
2.プリモ:12か月熟成
バラデンイザック(イタリア / ベルジャンホワイト / ABV5%)
ミルキーで滑らか、ヨーグルトの酸味のある若いチーズには、ベルジャンホワイト、ヴァイツェンなど苦みの穏やかなビールを。ある程度の苦味を求めるなら、フルーティーなアメリカンペールエールでも。このビールのオレンジピールとコリアンダーの爽快な香りが、弾力とねっとりした食感の残るフレッシュなチーズの魅力を優しく引き出す。
3.セコンド:24か月熟成
伊勢角屋麦酒Neko Nihiki(日本 / ニューイングランドIPA / ABV8%)
溶かしバターやミルク、柑橘の風味。アーモンドナイフでひと口大にカチ割って齧ると、アミノ酸の結晶のツブツブ感がアクセントとなり、まさに旨みの塊を頬張っているかのよう。ホップによるフルーティさとジューシーさが顕著なヘイジーIPAがおすすめ。ニューイングランドIPAは苦みが抑制された柔らかな口当たりだが、それでも苦みが気になるなら桃やマスカットなどのフルーツビールでも。応用編として、枝豆に細かく砕いたチーズと挽いた実山椒をまぶして、オリーブオイルを一振りしたアミューズ・スプーンを。チーズの旨みが強調され、まったりした飲み心地のビールと絶妙にマッチした。
4.テルツォ:36か月熟成
アインガー・セレブレーター(ドイツ / ドッペルボック / ABV6.7%)
芳醇でスパイシー、ドライフルーツの風味。旨みが更に凝縮し、ひと齧りの充足感が大きい。ドッペルボックやバレルエイジドなど、モルティで、じっくり味わうビールが良い。修道士が断食機関に栄養補給のために飲まれたこのスタイルは、まさに液体のパン。ロースト香とほのかな甘みのある重厚な味わいだが苦みは強すぎず、チーズの味わいを持ち上げる。
5.ドルチェ:パサンボン
抹茶ビア(オリジナルビアカクテル)
12か月熟成のパルミジャーノに和三盆をまぶしたオリジナルスイーツ。作ってすぐに食べるとチーズの風味が前面に、暫く置くと和三盆が溶けてチーズの旨みと馴染む。ビアカクテルは、上質な濃茶用抹茶を少量の水で溶き、ピルスナースタイルのビールで割ったもの。ビール100mlに1グラムの抹茶を使用。茶道の和菓子同様、食べた後でビールを味わう。式正織部流茶道を修め、日本茶の講師として経験を積んだ山上氏ならではの着想で、サプライズのある体験となった。
ペアリングのポイントは、余韻で合わせること。まずはビールを味わい、チーズを食べ終わってから、またビールを口に入れる。その後に、口中調味する際には、チーズの味を洗い流さないようにビールの量を少なく口に含むことが大切。
山上氏の個人的な経験として、胡瓜を丸齧りしながらパルミジャーノ・レッジャーノを食べると無限に止まらなくなるという。クラフトビールの世界統一の定義はなく、ざっくり言えば職人的なビール。使う材料の制約は殆どなく、ペアリングも正解を追求せずとも面白ければ良い。ゴクゴク飲んで次の1杯、というコミュニケーションツールとしての楽しさが大切と説く。こうした自由な発想に基づく提案に、ジャパンビアソムリエ協会の会長がこの役を務めた意義を感じさせるセミナーだった。
(Saori Kondo)
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