ドメーヌ・ジャン・ユーグ・エ・ギレーム・ゴワソ(サン・ブリ)

ドメーヌの二階で今回20本以上のワインを試飲。その一部しか紹介できないのは残念だ。

 

text&photos by Toshio Matsuura (Paris) 取材協力:ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)

ソーヴィニヨンの新たな側面
サン・ブリのポテンシャルに賭ける

ドメーヌ・ジャン・ユーグ・エ・ギレーム・ゴワソは、2003年にAOCサン・ブリが創設されて以降、同アペラシオンを代表する造り手として注目されている。

ゴワソ家は地元の農家として14世紀までさかのぼることのできる古い家系だが、ブドウ栽培のドメーヌとして知られるようになったのは、ギレーヌ&ジャン・ユーグ夫妻が1990年代に先代から正式にドメーヌを引き継いでからだろう。

2005年にドメーヌに加わった、ギレーム・ゴワソ氏。語り口は静かだが、ワイン造りにかける情熱がほとばしる。

「ワインは畑で造られる。醸造所ではない」をモットーに掲げ、濃縮したワインを得るために植密度をヘクタールあたり1万本に引き上げるとともに、収穫率を切り詰め、バランスの良いワインを得るためにブドウ樹の世話に多くの時間を割くようになった。同時にオーガニック栽培に取り組み、2001年にオーガニックの認証(エコセール)を、続いて2005年にバイオダイナミックスの認証(デメテール)を取得した。息子のギレーム氏が夫人のマリーさんとともに両親の下で働くようになったのは2005年。父親のジャン・ユーグ氏が4年前に引退し、以来15人の従業員を率いてドメーヌの管理・運営を行っている。ブドウ栽培、ワイン造りにかける情熱は両親以上だ。

耕作面積は約28ha。主力のAOCサン・ブリに加えて、AOCブルゴーニュ・アリゴテ(4ha)、AOCコート・ドーセール赤、白(7ha)、AOCイランシー(1ha)など。さらに、夫人の父親が2014年に亡くなり、所有していたAOCシャブリ(1.5ha)の畑を受け継いだ。しかし、ここ数年の天候不順で収穫量が激減。2019年と2020年は収穫の40%を失い、深刻な霜害が出た2021年の収穫は例年の30%にとどまった。

ドメーヌの丁寧な仕事ぶりは有名だが、とくに剪定に気を付けており、季節労働者には任せず、全ての作業を内部のスタッフでこなす。剪定の仕方が悪いとブドウ樹は早く劣化し、枯死し、質を維持する観点から重大な損失だという。

日本でももっとドメーヌのワインを味わってもらいたいが、「ストックがなく、注文に十分に応じられない」と言う。

オーガニック栽培は当初、ブドウ畑で働く人の健康を守るために始めたが、自然を尊重することでブドウ樹が本来の調和を取り戻し、病気に掛かりにくくなり、良く熟すようになったと言う。また、バイオダイナミックスを導入したことにより、ブドウ樹は最近の猛暑にも良く耐えるようにもなった。醸造、熟成には主としてステンレスタンクを用いるが、オークの小樽や土焼きの甕なども試している。赤ワインの醸造は、かつて毎日1~2回行っていたピジャージュを、ギレーム氏の時代になってからルモンタージュに。父親の時代は8~9日だったマセラシオンの期間を22~25日に伸ばすことで、大変エレガントなワインを得ることが出来るようになった。

 

●イランシーレ・マズロ 2019/標高180~200mの南西向き斜面。キュヴェゾン14日。石灰質土壌の濃密な構造がある。まだ少し閉じている。全て樽熟成。新樽率35%。イランシ―はいずれも100%ピノ・ノワールでセザールは使っていない。

●サン・ブリエグゾジラ・ヴィルギュラ2019/サン・ブリのブドウ畑は合計9ha。全て北ないし北西の斜面にあり、日照時間は短い。キュヴェ・エグゾジラ・ヴィルギュラはキンメリッジアン土壌のワインだけをブレンド。ステンレスタンクで醸造し、熟成に一部ステンレスタンク、一部樽、一部土焼き甕を使う。ミネラルと同時にエレガントな広がり、丸みが感じられる。

●サン・ブリムーリ 2019/大きな石が混じる100%ポートランディアンの白い土壌。ステンレスタンクで発酵、熟成。厚み、丸みがあり、複雑さが感じられる。ミネラルより豊かな内容のあるワイン。

●サン・ブリコール・ド・ガルド 2019/斜面の中腹にある粘土質土壌の畑。30%新樽を使った樽熟成。温かみのある飲みやすいワインで、柑橘、花のニュアンスが心地良い。少しシャブリに近いニュアンスがある。

●サン・ブリラ・ロンス 2019/ラ・ロンスの畑には2つの斜面があり、南向きの斜面はコート・ドーセール赤、北向きの斜面はサン・ブリに充てている。力があり、複雑。深みのあるミネラルと柑橘のニュアンスが心地良い。熟成によりさらに複雑な味わいが増すだろう。

続きは、WANDS 9月号
【特集】オーガニックワイン2022 さらなる旨さを求めて こだわりのビールで活性化へ
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