スペイン産の白ワインと魚介缶詰 さまざまなペアリングの提案

3月のフーデックスにて、スペインの白ワインと魚介缶詰にフォーカスしたペアリングセミナーが開催された。ワインの味わいの解説はコンラッド東京のソムリエール、森本美雪氏が行った。海の幸が豊かなスペインでは、ガリシアをはじめとする全国の沿岸地域で、質の高い魚介缶詰が生産されている。その紹介を兼ねて、今回はスペインから来日した水産加工品企業の担当者より、フーデックスに出品された缶詰とのペアリング例も示された。

 

ワイン7種について、森本美雪氏(コンラッド東京)が味わいとペアリングを解説。

①「カバ プエルタ パルマ レセルバ ブリュット ナチュレ」/ボデガスマルセリーノ・ディアス

マカベオ50%、パレリャーダ50%。白い花やイースト香を含む、ドライで軽快なアタック。中盤から余韻にかけては海苔を思わせるヨード香やミネラル感もしっかりと感じられる。ペアリングにはホッキ貝や帆立貝などの貝類など咀嚼が必要な料理と合わせるのがおすすめ。

 

②「カバ ハウメ・セラ ブリュット ロゼ」/ガリシア・カリオン

トレパットとピノ・ノワールをブレンドしたロゼのカバ。細やかな泡が持続的に続く。ピンクグレープフルーツやオレンジ、ジャスミンなど華やかな香りに、干し草やスモーキーなミネラル感が調和している。やや甘味を感じる味わいで、ビターな余韻が全体を引き締める。その高いグレープフルーツ香を生かし、揚げ物などと合わせると良い。

 

③「カスターニョ マカベオ オーガニック 2021」/ボデガス・カスターニョ

DOイェクラの家族経営ワイナリーが手がけるマカベオ100%。マカベオについて「この品種の特徴は豊かな芳香成分。ワインのストラクチャーを強化でき、リオハでは小樽発酵のタイプが多い。持ち味は、まったく酸化のニュアンスを感じないピュアな味わい」と森本氏。熟したレモン、オレンジなどの柑橘系に、金木犀やミモザなど花の香り。テクスチャーがオイリーなので、魚介はもちろん塩の焼き鳥にも。余韻に山椒のような苦味があるため、柚子胡椒などの味付けにも調和する。
なおこのワインとのペアリングで紹介された魚介缶詰は、ガリシア産の植物油に漬けたタコのスライス。食べ方はパプリカパウダーとオリーブオイル、塩を振るのがおすすめ。

 

ワインとともに紹介されたスペイン産の魚介缶詰。

 

④「トラスカンパナス 2021」/ワインズ&モア(ボデガ ゴティカ)

DOルエダのベルデホ100%。青リンゴ、白桃、ジャスミンなど花の香りに、グリーンノートが重なり、多層的で華やかなアロマ。心地よい苦味とスパイス、豊富な酸。終盤にかけてミネラル感があり、フレッシュで余韻が長い。蟹肉とリンゴのサラダなどの中華料理、マヨネーズで和えたキャビアやズワイガニなどのフレンチの一皿にも。

 

⑤「アバダル ピカポール 2021」/ロケッタ・オリヘン

カタルーニャ州のDOプラ・デ・バジェスから。ピカポールという珍しい品種の白。シュール・リーで3か月発酵&熟成。「ピカポールは、ピクプールと名前こそ似ているが、2006年に実施されたDNA解析によって、まったく別の品種ということが判明した。去年初めて試飲した時、この品種のクオリティに驚いた」と森本氏。
カタルーニャ州ではおもに、このプラ・デ・バジェスほかエンポルダやプリオラートで栽培されている。香りの強さはヴェルデホよりもやや控えめで、レモンのマーマレード、オレンジの花、ベルガモットに、フェンネルや山椒の香り。味わいはミネラル感と同時に軽やかな苦味を取れる。「このミネラル感がストラクチャーをつくるので、ある程度、咀嚼が必要な料理が合わせやすい。タコのアヒージョなど。このワインのオイリーなテクスチャーと調和する」と森本氏。併せる魚介缶詰として紹介されたのは、オイル漬けのカツオのハラミ。

 

⑥「ガレルナ・シャルドネ 2021」/ドニミオ・デ・プンクトン

VTカスティーリャ、内陸の標高600m、粘土質の土壌から生まれるシャルドネ。ラ・フランスのコンポートや金木犀、菩提樹の花に、MLF由来のヨーグルト香、さらにミネラル感など多層的な香り。溶け込んだクリーミーな酸。「余韻に中国茶が持つカテキンのような渋味がある。このため、中国茶と点心や、イベリコ豚を使ったシューマイなどとの組み合わせが提案できる」と森本氏。
魚介缶詰は、アボカドとイチゴを添えたオリーブオイル漬けのサバと。「このシャルドネが華やかなタイプであるため、アボカドのクリーミーなテクスチャーに寄り添う」と森本氏が述べるように、缶詰を使った料理の一例としても興味深い提案。

 

⑦「ボデガ ヴェルデ ガルナッチャ・ロサード 2021」/ボデガ・ヴェルデ

DOカリニェナのガルナッチャ100%のロゼ。華々しいリッチな香り。クランベリー、柘榴、バラや菊など花の香りも取れる。穏やかで溶け込んだ酸で、果実味は豊かだがアルコール度数は高め(14%)のため、ふくよかすぎない。余韻には心地よい苦味。うなぎの蒲焼のブルーベリー添えなど、リッチな魚料理と。このロゼにはガリシア産の定番の魚介「ムール貝」の缶詰がおすすめされた。
森本氏は「意外な組み合わせだったが、ロゼとムール貝それぞれがもつ苦味が合い、興味深い。このロゼには小鰯のオリーブオイル漬けの缶詰や、サバの缶詰とも楽しめる」とコメント。

 

(N. Miyata)

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