ルイ・ロデレール Louis Roederer/ブリュット・プルミエはバランスを追究したクリエイション

<ビオディナミの効果>

ところで、ルイ・ロデレールでは自社畑でビオディナミを採用している。冷涼なシャンパーニュではリスクが高いため、実践者はそれほど多くないが、苦労の末に本当に「完璧な葡萄」を得られているのだろうか。

自社畑の86haすべてでビオディナミを採用しているが、デメテール認証を取得しているのはキュミエールの10haだけ。そして契約畑は、フランスで最も高いレベルのサステイナブル法で栽培している。「土壌は、雨や日照量などの天候を濾過して最終的なバランスを決めるものだから、除草剤は使ってはならない」と考えている。

ビオディナミを始めたのは15年前で、3〜4年経ってわかったのは、本当にベストな土壌、丘の中腹で水はけの良い区画でしかよい結果がでない、ということだ。

そして、実際にビオディナミの区画は、葡萄の熟度が上がったという。「ただ、1940〜50年代に戻っただけだと思っている。60〜70年代から化学物質を多用したり科学的見地を優先させたりと間違いをしたから。今は、土や葡萄をつぶさに観察するという方向へ戻ってきていると感じている」。

右3本がベースワイン違いのブリュット・プルミエ。ヴァン・クレール試飲については別途報告予定

右3本がベースワイン違いのブリュット・プルミエ。ヴァン・クレール試飲については別途報告予定

 

<バランスを追究したクリエイション>

「ノン・ヴィンテージというよりはバランスを追い求めたクリエイション」である「ブリュット・プルミエ」の原型を垣間見ることができた。2015年ベースの瓶内二次発酵前のワインを試飲した。

2015年は、全体に温かく8月もドライで、熟度が高く、病気もなく量も確保できた。ただしルイ・ロデレールでは、アロマの成熟を待ち、特にシャルドネの収穫は遅めにした。ムニエは、フレッシュでシンプルだが優しく、ピノ・ノワールは複雑で力があり精緻で、シャルドネも実に美しい出来となった。ゆっくり進行したので、ワインも遅咲きのようだ。

ブレンド内容は、ピノ・ノワール42%、シャルドネ40%、ムニエ18%。50のクリュの400区画をブレンド。リザーヴワインは35%で、自社畑のピノ・ノワールとシャルドネのみ、大樽で貯蔵。よく成熟した年にはベースワインにピノ・ノワールが多くなるため、リザーヴはシャルドネが多い。内訳は2014, ‘13, ‘12, ‘10, ‘09, ‘08年。マロラクティックは全体の28%で、熟度の高い15年は10%未満。ただし14年、13年についてはゆっくりと低温でマロラクティックを行った。

多種多様なコンポーネントをブレンドし、しかも数年後を見越して「ブリュット・プルミエ」のあるべき姿にするのだから、本当にクリエイターの仕事だ。ブレンドするにあたり最も重要なポイントは「まずはエレガンス。春の果実の香り、バランス、生き生きとした様子、精密さ、密度の高さ」。9月から2週間ごとに継続してブラインド・テイスティングを行い、2月にはおよそのデザインが決まる。

バニラ、洋梨、ユズなどの柑橘類などの香りがし、フレッシュでしなやかで、酸も綺麗で上品な味わいだった。およそ3年後のデゴルジュマンが待ち遠しい。

<ブリュット・プルミエの異なる顔> へ続く

本稿はウォンズ2016年6月号のシャンパーニュ特集「シャンパーニュのドザージュの変化に関する考察」に掲載したひとつの記事です。ウォンズ本誌のご購入・ご購読はこちらから

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