
函館の小高い丘の上に40haの敷地を有する「ド・モンティーユ&北海道」。そのうち13ha(29haまで拡張予定)がブドウ畑で2023年の収穫から自社畑のブドウを使ったワイン造りが始まった。それまでの2018年から2022年までは、余市の栽培者からブドウを譲ってもらっての少量生産を続けている。例年のごとくすでにどこでも完売してしまったようだが、今年リリースされたのは2021年ヴィンテージ。毎年ラベルに記される一文字の漢字があるが、2021年は「理 Comprendre」だった。
ゼネラルマネジャーの矢野映さんはこの5年間の文字、「豪」、「驚」、「学」、「理」、「探」について、「ことを起こして、驚いて、学んで、理解したつもりだが、まだ足りなくてまた探し始めた、ということのようです」と説明する。
函館の畑の写真を見ながら「湾に向かって右側は自根で植樹、左側は台木に接木しています」と、矢野さん。接木なしでの区画については当然フィロキセラによるダメージが懸念されるが、ブルゴーニュでも自根へ関心のある生産者は実は多いという。今のところ希望通りのクローンであるわけでもなく、状態も万全とは言えないながら、エティエンヌ・ド・モンティーユ社長の指令によりチャレンジ中だというから驚いた。また、雪が50〜60cm積もる北海道では通常ブドウの寿命は20〜25年と言われているが、ここでは樹齢40年以上までになることを期待しているという。
「ド・モンティーユ&北海道」ではワイナリーの一般公開が間もなく始まる。1階が醸造所で2階がレストランやワインの有料試飲スペースだ。
2023年の収穫はシャルドネ2.5tとピノ・ノワール1tの、合計3.5tだった。生育に関しては「接木のピノ・ノワールはわりあい順調ですが、自根のピノ・ノワールはゆっくりで個体差が大きく粒も小さい」とのこと。
これまでは余市のブドウによるケルナー、ピノ・ノワール、ツヴァイゲルトの3アイテムあり、次の2022年ヴィンテージまではそのまま継続される。
「ケルナーとツヴァイゲルトは北海道を知るための勉強として2022年までと決めていましたが、ケルナーは10年契約で継続することになりました」と、矢野さん。ケルナーのファンには朗報だ。ツヴァイゲルトについては未定とのこと。
2021年ヴィンテージを試飲した。
「理 ケルナー2021」
安藝農園の有機栽培による樹齢28年のケルナー。発酵はステンレスタンクで、55%は樽(ドゥミ・ミュイと小樽)・45%はステンレスで熟成。100%マロラクティック。
アロマティックでフレッシュな香りで、青リンゴや柑橘類などが繊細に香り立つ。およそ半量を樽熟成していると言われなければ気がつかないほどバランス良くフレッシュで、心地良いテクスチャー。
「理 ツヴァイゲルト 2021」
中川農園とココ10Rの畑のツヴァイゲルト。100%除梗。発酵も熟成もステンレスタンク。
スパイシーで、白胡椒のようなきれいなトーン。赤い果実は赤スグリやグミのような、日本的な印象を感じる。なめらかなテクスチャーで、すっきりとした酸が味わい全体をリフトアップするような爽やかさ。タンニンは細やかで、馴染んでいる。
「理 ピノ・ノワール 2021」
木村農園の樹齢15年のピノ・ノワール(木村農園のピノ・ノワールの使用は2023年までの予定)。35%除梗。天然酵母のみい。2〜4年使用樽で16か月熟成。
淡い色調で、繊細な赤い果実の香りが漂う。しっとりとしたアタックで全体に上品な味わい。酸がとてもフレッシュで、余韻の白胡椒のような香りもフレッシュさを助長する。サラリとしながらも鰹節的な旨みの要素も感じられる。
もう少し先になるが、自社畑のブドウによる自社ワイナリーで醸造されるワインたちが待ち遠しいばかりだ。
(Y. Nagoshii)
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