- 2024-9-19
- Events, Wines, スペイン Spain
2024年9月11日、コンラッド東京。この日、スペイン食文化の精髄が日本に降り立った。「Spain Fusion Tokyo 2024」。毎年マドリードで開催される国際料理学会「Madrid Fusion」の日本版サテライトイベントが、東京で初開催された。
キケ・ダコスタ、アンドニ・ルイス・アドゥリス、ジョアン・ロカら、スペインの美食を代表する名だたるシェフが集結。スペインの食文化を再発見する特別な体験型イベントとして多くの参加者を魅了したこの催しでは、ミシュラン星付きシェフたちによる革新的な料理技法のデモンストレーションが行われた。スペインワインにとっても重要な機会で、日本未輸入のワインが数多く出品された。
注目を集めたセミナーの一つは、日本生ハム協会代表理事 渡邉直人氏と、マスター・オブ・ワインのフェルナンド・モラ氏による、生ハムとスペインワインのペアリングセミナーだ。渡邉氏は「生ハムはローマ帝国時代からの伝統を誇る食材。しかし、日本では流通している生ハムの8割が短期間スモークしただけのもので、伝統的な製法のものはわずか2割。本物の生ハムの魅力と、地中海食文化における重要性を日本の皆様にもっと知っていただきたい」と語った。セミナーでは最高級生ハムとして知られるハモン・イベリコ・ベジョータのJOSELITO(ホセリート)の長期熟成3種が供された。
モラMWはスペインの地理的多様性を概説。「スペインは山々の国」と述べ、山、谷、川、海岸線など地形の多様性が、ワインの個性を形作る重要な要素であると強調した。「土壌の多様性が、すなわちスペインの在来品種の多様性に繋がっている」と、モラ氏は言う。
その言葉を反映するように、会場には興味深い在来品種のワインが見つかった。Bodegas Gordonzelloの「Peregrino Albarín」はDOティエラ・デ・レオンで生産される希少品種アルバリンの白。アルバリンという響きからアルバリーニョとの関連性が気になるが、亜種ではなく、全く違う品種という。アロマティックで、味わいは充実した白桃の果実味に、口の奥側でスパイスの要素が広がる。オリエンタル料理などとの相性が良さそうだ。Bodega Toni Beneitoはバレンシアの新興ワイナリーで、数年前にプロジェクトを始動。放置されていた古い畑の復興に努め、在来品種ボニカイレ(トレパットのシノニム)の赤を少量生産する。
モラMWが造る3種のワインも振る舞われた。「オス・カンタルス クエヴァス・デ・アロム 2020」はDOカラタユのガルナッチャ100%。スペインの高品質ガルナッチャといえばプリオラートやグレドスを想起する人も多いだろうが、負けないほどハイクオリティ。洗練された果実味とハーブやスパイスの香りが綺麗に調和している。モラMWは「スペインには多くの可能性が眠っている」と言うが、彼自身のワインの品質の高さもその証左と言えるだろう。
スペイン食文化業界の多くの関係者が集合した夜の会では、こうした高級ワインと料理が存分に振る舞われ、会場がスペインの熱気で沸いた。次回の開催が待ち遠しい。
(N. Miyata)
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