- 2025-3-19
- Wine, メキシコ Mexico
- アグアスカリエンテ

メキシコの中央に位置するアグアスカリエンテ州。この地は自動車産業で知られている。日本メーカーの工場があり、日本人も多く住んでいる。そんなアグアスカリエンテ州が現在、新たなワイン産地として発展中だ。2024年11月、駐日メキシコ大使館で、日本初の同州ワインセミナーが開催された。

6社の生産者が来日し、ワインを披露した。アグアスカリエンテ州は標高1,900mの高地に位置する。ブドウの栽培面積はおよそ250ha。生産者数は70。「夜間は気温が大きく下がる。低緯度でありながら標高が高いため、ブドウ栽培に適した環境だ」と、来日した生産者のひとりは説明する。粘土石灰質土壌が広がり、雨はほとんど降らないため灌漑を行っている。
特筆すべきは、ほとんどのワイナリーが創業10年前後と比較的新しいこと。聞けば、メキシコ国内でのワイン消費者増加に伴い、ワイン文化が急速に発展しているという。品種の選択はさまざまで、試行錯誤の段階とも言える。アルゼンチンから醸造家が来るケースがあるためか、マルベックを使ったワインもいくつか見られた。
ビニコラ・エル・アグアヘというワイナリーが造る「REBORUJO(レボリュホ)」はマルベック60%とシラー40%のブレンド。甘いチョコのようなニュアンスを持つ。「レボリュホはアグアスカリエンテスでよく使う言葉で、異なるものを混ぜることを意味する」とCEOのアグスティン・ゴンサレス・ロペス氏。同ワイナリーのマルベック100%のワインは、はっきりとした辛口の味わいで、和食との相性も期待できそうだ。
ボデガス・オリヘンは、この地域で唯一ガルナッチャ・ブランカを栽培する。彼らの「ALBO(アルボ)」は、パイナップルの果実味にユーカリのようなハーブの香り、アフターにハチミツが香る、個性的な味わい。「ガルナッチャ・ブランカはこの土地によく馴染む。ブリュッセルで賞を獲得した誇りあるワインだ」とCEOのホルヘ・アルマンド・ナルバエス氏。
一方、ビニコラ・サンタ・エレナはアンフォラでワイン造りを行う。「アンフォラ シュナン・ブラン」は黄桃や熟したリンゴの鮮やかな香りに、白い花を思わせる優しい飲み口が特徴。同ワイナリーのカベルネ・フランは、アルコール度数12〜13%と現代の潮流に合った軽やかな仕上がり。
15人の異業種友人が2019年に立ち上げたババルは、マヤ語に由来する名前を持つ。「メルロ レセルバ」はリコリスやダークチェリー、プラムの香りに、丸みを帯びたタンニンとハーバルなニュアンスを併せ持つ。レセルバながら重すぎない。
ビニコラ・エル・セクレトのCEOアレハンドリナ・ゴザレス・コルドバ氏は「父が所有していた畑から、ワインを造ることを決めた。ワイナリーも新たに創設した」と話す。「VIÑA SECRETA マルベック レセルバ」は骨格がしっかりとした力強い一本。ブラックベリー、ブラックチェリー、タバコ、皮革、タンニンもしっかりしている。
カサ・デ・ケサダは9年前に始動。ワイン醸造家のパトリシオ・ケサダ・マシアスCEOは製造業や自動車業界でも活躍。現在はアスアスカリエンテス州ワイン生産者協議会の会長も務める。甘い果実感のテンプラニーリョ&メルロや、複数品種をブレンドの高級ロゼ等を披露。「ESTOICO(エストイコ)」の白はヴィオニエとシャルドネで、ヴァニラ、シナモン、砂糖漬けのパイナップル、ナッツ、後味にグレープフルーツのような爽やかさと苦味。
試飲を通して感じたのは、アグアスカリエンテ州のワインが成長途上であり、独自のスタイルを模索している段階にあるということだ。しかし、数世代前からブランデー用の栽培が行われていたり、親の代から続く伝統があったりと、ブドウ栽培に適した環境がすでに整っている。高地ならではのフレッシュさとスパイスのニュアンスを持つこの産地のワインは、これからの発展が大いに期待できる。
(N. Miyata)
最近のコメント