第2回目を迎えた国際ワイン見本市 ProWein Tokyo 2025

4月15〜17日の3日間に開催されたProWine Tokyo 2025は、21か国から190社が出展し、5万6,000人を超える業界関係者が来場した。会場では国際的なワイン業界の最新動向が垣間見え、取材した出展者からも興味深い情報を得ることができた。

AIソムリエ「ワイサポ」が業界に新風

 会場で大きな注目を集めていたのは、ブロードエッジ・ウェアリンクが開発した飲食店向けのAIサービス「ワイサポ」だ。同社の松本義崇取締役社長は会見で「人手不足やコスト増を背景に、さまざまな飲食店の困りごとを聞いている。専門知識がないと、店にあったワインの選定をすることが難しい。さらに効率的な仕入れや在庫管理、インバウンドが増えてきている中で接客対応など、課題は多岐にわたる」と語り、開発の背景を説明した。

パネルに映されたAIソムリエ「Sommia(ソミア)」と、松本義崇取締役社長(中央)ら。

 このシステムは飲食店のワイン関連業務を一括でDX化する目的で開発されて、おもに3つの機能がある。1つ目は、ワインリスト作成機能。店舗コンセプトや料理の写真を読み込ませることで、AIが最適なワインリストを提案する。2つ目は、簡単な注文・在庫管理。一元管理システムで在庫状況を把握し、必要なワインをワンクリックで発注できる。3つ目は、AIソムリエ「Sommia(ソミア)」による接客支援。来店客のスマートフォンに表示されるAIソムリエが、チャット形式でワインの選択をサポートする。
AIの学習システムには、ソムリエや料理専門家の監修のもと、これまで蓄積してきた3万人のテイスティングデータと5,000種の酒類のデータベースを活用しているという。本リリースは今年9月を予定。会場では実際のワインリスト作成を体験できるデモ版が展示され、多くの来場者が集まっていた。

ドイツワインは多彩なテーマでセミナーを展開

ドイツワイン(Wines of Germany)ブースでは3日間を通じて複数のミニセミナーが開催。リースリングおよび他の白ブドウ品種、ゼクト、オーガニックワイン、品質等級の解説など幅広いトピックが紹介された。 赤ワインはシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)のセミナーが開かれ、5つの産地の生産者を紹介。ラインヘッセンで300年の歴史を持つ「Wasem」、アール地方の「MARC JOSTEN」、ドイツのベスト・オブ・ピノ・ノワールにも選ばれたラインガウの「Georg-Müller-Stifung」などが紹介された。ドイツはフランス、アメリカに次ぐ世界第3位のピノ・ノワール生産国で、13の生産地域のほぼすべてで栽培されている。

写真:Wines of Germany マーケティング・ マネージャーアジア担当マヌエラ・リープヘンさん(右)と日本オフィスの代表ロイック・ブリュノさん。ドイツワイン普及の取り組みは「WANDS 5&6月号」で紹介。

フランスワインブース、サンセールも注目

Business Franceが取りまとめたフランスブースでは、さまざまな産地からのワイン、スピリッツに加え、ノンアルコールの特設コーナーも設置された。

出展社の1つ「Cave de Sancerre」からは、ロワール/サンセール地区のワイン生産について情報を得た。この協同組合は1963年創業。300haのブドウ畑を所有し、生産比率は白ワインが80%を占めている。醸造担当のエレナ・ベルノー氏はプイィ・フュメや南西地方でも経験を積んできた注目のワインメーカー。彼女が強調していたのは、ソーヴィニヨン・ブランにとって収穫日の決定と熟成が最も重要だという点だ。2024年のサンセールは10月中旬の遅い収穫となった。試飲では3つの異なる区画から造られる個性的なキュヴェを比較。「Le Cros du Roy」は石灰質土壌の特徴が感じられ、「Les Granges brûléss」はみずみずしい印象。「PLUSRIBUS UNUM 2023」は構造がしっかりとした逸品で、ソーヴィニヨン・ブラン用に特別に選ばれた樽で熟成。

DOカバは品質とサステイナビリティを強化

スペインワインのブースにはDOルエダやDOカバなどの生産者団体が出展。DOカバは今年のアンバサダーにソムリエールの紫貴あき氏が就任し、試飲のミニセミナーが開かれた。サステイナビリティ強化として、グアルダ・スペリオール級(レセルバ、グラン・レセルバ、パラヘ・カリフィカード。18か月以上熟成)のカバは、2025年から全てオーガニック生産となる取り組みが強調された。紫貴氏はカバについて「地中海性気候で育まれたブドウから生まれる、親しみやすい味わいが魅力」と話す。

個別生産者の出展もあり、在来品種を活かしたワインを披露。「Vinicola de Castilla」はラ・マンチャに拠点を置く。グアディアナ川の恩恵を受け、地下水が蓄えられ、ブドウ栽培に適した環境となっている。「Guadianeja」のアイレンはこのテロワールを反映し、ワインにはミネラル感がはっきりと表れていた。同社はグレドス山脈でもガルナッチャを造り、「La Cendra」はこの地特有の凝縮した味わい。

このほか、ProWine Tokyoの会場では生産者団体によるテイスティングセミナーや、「Star Wine List of the Year Japan 2025」「Tokyo Italian Sommelier Award」といった表彰イベントも開催され、業界全体の活性化に寄与した。

次回のProWein Tokyoは2026年4月15日から17日、東京ビッグサイトにて開催予定。

(N.Miyata)

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