[セミナーレポート]リオハの突破口は、日本市場での切り口を考える

リオハをどう売るか。その問いに向き合う試飲会が10月7日、都内で開催された。主催は現地の州でも生産者団体でもない。ティンガナ シェフソムリエの菊池貴行氏、Wine in Motion代表の別府岳則氏、そして13社のインポーターが手弁当で動いた。
「リオハは、スペインの歴史的銘醸地でありながら、日本でのまとまったプロモーションが途絶えてしばらく経つ」と、菊池氏と別府氏は言う。セミナーでは産地の基礎知識に加え、「日本市場でどう使うか」という実践的な提案が示された。

産地構造と2000年代の揺り戻し

セミナー前半、菊池氏はリオハの産地構造を整理した。ラ・リオハ、バスク、ナバーラの3州にまたがる産地は、3つのサブゾーンに分かれる。リオハ・アルタの土壌はおもに粘土質。鉄分が豊富なため、骨格のある長期熟成型のワインが生まれやすい。対してエブロ川左岸のリオハ・アラベサはほぼ石灰質土壌で、ミネラル感や純粋な果実味が際立つ。東のリオハ・オリエンタルは温暖な地中海性気候の影響を受け、テンプラニーリョよりガルナッチャの栽培面積の方が大きく、よりジューシーな果実味を持つ。

この産地が大きく揺れたのが2000年代だ。「2007年にはカベルネなどの国際品種が容認され、短期間の熟成で果実味を前面に出すモダンスタイルが台頭した」と菊池氏。だが2010年頃から原点回帰の動きが顕在化する。新樽を抑え、フードル、コンクリート、アンフォラを使う生産者が増えた。菊池氏によれば、現地では「2000年代初頭は国際市場を意識しすぎて自分たちの道を失った」と反省する生産者も多いという。
並行して、産地全体ではテロワール重視の動きが加速している。2017年からラベルの村名・畑名表示が可能になり、生産者たちは畑ごとの個性を打ち出し始めた。
白ブドウでは、2007年に認可されたテンプラニーリョ・ブランコが急伸している。冷涼な場所では清涼感を、温暖な場所ではパッションフルーツの香りを示すカメレオン的な品種で、現在は白ブドウの栽培面積の20〜30%を占めるという。
「昔の畑にはテンプラニーリョの中に白ブドウが混植されていた。そうした畑を大切にし、村としての評価を高める動きが活発化している」と菊池氏は語る。

「他では得られないもの」を売る

セミナー後半、別府氏は、世界市場でのリオハの確固たる地位と、日本市場における現状とのギャップを指摘した。「世界市場では過去40年間、リオハの輸出量が右肩上がりで安定的に成長している。一方、日本は主要輸入国の中でスペインワインの単価が低く、高級市場が盛り上がっているとは言えない現状」。この課題に対し、別府氏はスペインワイン専門外の消費者にもリオハを効果的に「売り込む」ため、具体的な三つの切り口を提示した。「特にリオハは他の産地では得づらい価値を提供できる」という。

第一の武器は「クラシック・レッド」と別府氏。ニューワールドを含め、世界的に樽のニュアンスが強いものや酸化的なスタイルの赤ワインは減少しつつある一方で、「リオハには、アメリカンオークの甘い香りが際立つ、フルボディで長期熟成向けのクラシックなスタイルが依然として存在する。特にレセルバクラスが2,000〜3,000円台という優れたコストパフォーマンスで提供され、バイザグラスのラインナップに1本加えることで差別化になる」と提案した。
第二の武器は、長期熟成の白ワイン、すなわち「グラン・レセルバ・ブランコ」。別府氏は「樽熟成をした3,000円前後のもので、シャルドネではない」という条件を満たすワインは使いやすく、これはリオハの白の大きな強みであると強調する。樽熟成を経て果実味の表現が穏やかになった白は「和食やハーブを効かせた料理、東南アジア系の料理など、幅広い料理とのペアリングが考案できる」という。
第三の武器は、2017年から表示可能になった村名や畑名を持つ「格付けワイン」。畑の細分化やテロワール探求は世界的に制度化が進み、リオハもその軌道に乗り出している。ただし別府氏は注意を促す。「ブルゴーニュのように単独で理解されるほど認知されていない。アルタとオリエンタルなど、2本以上並べて比較させることで、サブゾーンごとの違いが伝わる」。

DOCaリオハは2025年に設立100周年を迎えた。これに伴い収量制限の厳格化、低アルコールワインの下限緩和などが決定している。気候変動や若年層への対応を見据えた動きだ。
試飲会の会場では、伝統的な樽熟成から畑の個性を表現するモダンなスタイルまで、日本で輸入されているリオハが一堂に会した。クラシックとモダンでは明確なスタイルの違いがあり、それぞれの生産者がその味わいを一貫して表現している。今回示された切り口が、日本市場での広がりにつながることを期待したい。

(N. Miyata)

アベル・メンドーサのテンプラニーリョ・ブランコ(中央)は骨格がしっかりしていてフェノリックな苦味もあり、黒ブドウから突然変異で生まれた品種ならではの骨太さを持つ(輸入元:TOMATE)
リオハのクリアンサは熟成感と果実味のバランスが今の市場のニーズに合うのではないか、と思わせるキュヴェが多かった。オバロのクリアンサはバランスが良く、果実味の充足感と樽の熟成感が調和している。(輸入元:ミリオン商事)
リオハ・オリエンタルのボデガス・カルロス・マソはエレガントな個性。白の「コストゥンブレス 2022」は赤に負けない味の濃さがあり、後味もグリップが効いている。(輸入元:ラフィネ)
リオハ・アラベサの造り手カンピーリョ。樽熟の味わいはクラシック路線だが、「エル・ニーニョ」(左)はセミ・マセラシオン・カルボニックをし、早いうちから楽しめる、若年層を意識したキュヴェ。(輸入元:飯田)

 

 

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