サンテミリオンのシャトー・ボーセジュール・デュフォー・ラガロス、1ha当り15億円強で売却

1847年からデュフォー・ラガロス家が9世代に亘って受け継いできた、サンテミリオン・グランクリュ・クラッセのシャトー・ボーセジュール・デュフォー・ラガロスChâteau Beauséjour Duffau-Lagarrosse(6.75ha)が、4月12日にフランスのコスメテック大手、クララングループを率いるクルタン家に売却された。売却金額は7500万ユーロ、1ha当り1200万ユーロ(15億6000万円)。これは2017年にシャトー・トロロンモンドが保険会社SCOORによって買収された際の1ha当り700万ユーロ(9億1000万円)をさらに大幅に上回る額だ。

今回の〈シャトー・ボーセジュール〉の売却では、当初、隣接する〈シャトー・クロ・フルテ〉のキュヴリエ家が買い取りの意向を示し、デュフォー・ラガロス家の大半のメンバーもこれに了承したため、商談は成立するかに思われた。しかし、一部の反対者が、農地移転を管理する土地開発および農村設立会社(サフェール、Safer)への委託を申請したため、複数の買い手が書類を提出し、最終決定まで二転三転した。

サフェールは農業省と財務省の監督下で若い農業従事者が経済的な圧迫を受けずに自立発展し、調和のある農業経済が行われるように調節するフランスの組織で、農地が売りに出た際に一旦買い取り、様々な状況を勘案して次の担い手を探すなどの活動を行っている。

サフェールは特に、40歳以下の若い農業従事者の支援に力点を置いており、シャトー・アンジェリュスのステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさんも、個人としてこの案件に興味を示し、サフェールに書類を提出した。そして、県単位のサフェールの検討会で支持を得たが、シャトー・アンジェリュスの社長という立場にあることについて問題視する意見がだされ、県から一段階上位のサフェール地方委員会で検討が行われ、今回の結果となった。

サフェールは、原則として、ファミリーなど、案件に近い買い取り希望者がいる場合は、そちらを優先するという考えにそって売買を処理しており、今回はデュフォー・ラガロス家の一員で、ベルナールマグレ・グループで働いたウノローグのジョゼフィーヌ・デュフォー・ラガロスさん(30歳)が、ファミリーの葡萄園を引き継ぎたいとして書類を提出したことに注目した。その際、資金的な後ろ盾となったのがクララングループを率いるクルタン家だ。売却条件として、デュフォー・ラガロス家の一員であるジョゼフィーヌ・デュフォー・ラガロスさんがワイン造りの中枢を担うこと、将来にわたって6.75haの〈シャトー・ボーセジュール〉を分割することなく引き継いでいくなどが盛り込まれ、最終的にクララングループを率いるクルタン家への売却が決定された。

これについて、〈シャトー・アンジェリュス〉のステファニー・ド・ブアール・リヴォアルさんは「私は〈シャトー・アンジェリュス〉の社長ではなく、あくまで、若い一栽培家として買収の意向を示したが、政治的な力やメディアからの批判があり、買収を実現できず残念だった。今後も様々な形で〈シャトー・アンジェリュス〉を中核とするグループの発展を模索したい」と語っている。(Paris / Toshio Matsuura)

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