ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密「マイ ウイスキー、マイ ストーリー」 第3回

〜食後酒から食中酒へ/前編〜

実は、昔から抹茶が好きだ。和菓子をいただき、3度回して茶碗の表を避け、3口で飲み干す。これが抹茶への対し方だった。

ところが、いつの間にかグリーンティーとか抹茶ラテとか、抹茶のアレンジドリングがたくさん出てきた。海外で見つけたペットボトルのGreen Teaには甘い日本茶が入っていて閉口したが、抹茶の多様化は許せる。いや、むしろそれを飲みたくなる時があるぐらいだ。

伝統的な飲み方も、もちろんいい。けれど新しい楽しみ方が増えるのもまた面白い。

 

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<Bistro BORDEAUX ワインも一緒に楽しみたいなら、このビストロ @渋谷>

塩釜焼きのジューシーなラムにオールドパーはいかが?

塩釜焼きのジューシーなラム肉に オールドパーはいかが?

渋谷駅からほど近くに、シックで重たそうな扉の店がある。1970年にオープンしたビストロ・ボルドーだ。まだワインブームなどほど遠く、まさに「ウイスキーのボトルキープ全盛期だった」頃に、ワインを飲める料理店を開いたのは、田中一さんだ。当時の流れにあらがわず「シメの一杯として飲みたい方も多かったので、オールドパー 12年をずっと置いていた」。

そしてまた、5年ほど前からボトルキープ制度を復活させた。ワインがメインの店だからだろう。とても手頃な価格でキープできる。食後酒として飲むだけでなく、シャンパーニュと白ワインをグラスで飲み、メインにオールドパー 12年を合わせる、というのもよさそうだ。水割りにしてワイングラスで飲めば、より香りを楽しめるのかもしれない。

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生粋のサービスマン田中さんには、優秀な後継者が育っていた。娘の雅子さんもまた、楽しく素敵なサービスをしてくれるから、あいかわらずここは竜宮城のような時間を忘れる空間だ。

【Bistro BORDEAUX】

東京都渋谷区渋谷1-15-16   03-3400-5949

 

 

<BAR保志 〜伝説のバーテンダーに会える(かもしれない)オーセンティック・バー〜 @銀座>

hoshisansilverzakuro「マイルドな味なので、いろいろなものと相性がいい。食事を美味しくしてくれて、料理に連れ添って歩んでいくタイプ」。

オールドパー シルバーの味を見ながらこう言うのは、銀座に【BAR保志】を6店舗展開する保志雄一さんだ。保志さんはインターナショナル・バーテンダーズ・コンペティション・ジャパン・カップで総合優勝を果たした、世界一のバーテンダーでもある。

 

「昔はウイスキーは『色つき』『茶もの』と言って、「白もの」のウオッカやジンとは違い、構えて飲む酒だった。食後にゆっくりシガーと供に、あるいはナイトキャップに飲むものだった。でもこの『オールドパー シルバー』ならネームバリューがありながら気軽に遊べるウイスキーだ」。そう言いながらボストン・シェイカーを手にしてカクテルを作り始めた。

「伝説のバーテンダー」とも呼ばれる保志さんが、瞬間的に閃いたのはザクロだった。

スタンダードカクテルのウイスキーサワーをアレンジして生のザクロを使ったもので、フルートグラスに注がれて艶やかなウイスキーカクテルとなった。ザクロの香りと甘酸っぱさを楽しみながら飲んでいると、後半にオールドパー シルバーの香りが口いっぱいに広がってきた。この絶妙な香りの連携には驚いた。

カクテルにも、胃を刺激したり食欲を湧かせたりする「食前酒」タイプと、個性が強くて食事には影響を与えてしまうけれど「食後酒」に向くタイプもあるという。ちょうどこのシルバーのマイルドさが「食中酒」にちょうどいい。

オーセンティックなバーなのだが、ここでは美味しいおつまみも味わえる。ウイスキーには燻製など香ばしいものがよく合うと、ふたつのおつまみを薦めてくれた。

ひとつは、秋田の燻りがっこにクリームチーズをのせたカナッペ風。いくぶんジューシーで歯ごたえのよい燻りがっこのスモーキーさと塩味が、クリームチーズのまろやかさと程よい相性で、何かを飲みたくなる。シルバーは、このバランスをそのまま保ちつつ、爽やかさを加えながらも自らの香りも残す。まさに寄り添うタイプの組み合わせだ。

もうひとつは、オイルサーディンをつゆや柚子胡椒といった和の調味料で仕上げたオーブン焼き。和洋折衷の味わいに、シルバーは分け入るように進んでいき、相手の味を壊さずに全体の後味をフレッシュにまとめ上げた。

「シルバーには柑橘系の香りがあるから、柑橘類もいい」と、オレンジジュース・バージョンとグレープフルーツ・バージョンも出してくれた。シルバー:ジュースを1:2の割合で「ビルドしてステア」すればよいという。「グラスの中でカクテルを作って(ビルド)かき混ぜる(ステア)」ということだった。

どちらかといえば、オレンジジュースの場合にはオレンジの方がやや優勢、グレープフルーツの場合にはシルバーの方がやや優勢、といったバランスだった。シルバーらしさを楽しむには、より爽やか系の果実がよさそうだ。

でもやっぱり、保志さんの生ザクロのカクテルの味が忘れられない。

まるで生き字引のような保志さんは、それぞれの店は店長に任せている。だから、いつどこの店に保志さんが現れるかはわからない。

hoshilogo【BAR保志】IRIS

東京都中央区銀座6-3-7 AOKI TOWER 2F   03-6280-6466

IRISは店長の脇坂真矢さんが仕切る女性チームによるバーで、同じビルの8階に「本店」、9階に「No.9」と、3つの店が入っている。銀座の他には、保志さんの故郷会津若松市、保志さんが修業した宇都宮市にも店がある。

最近、美味しい食事も楽しめるバーがいくつもできているようだ。その道の人に厳選してもらったウイスキーファン垂涎の2軒を、後編で紹介する。(Y. Nagoshi)

ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密 第1回 〜オールドパーの格とオーセンティシティ〜

ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密 第2回 〜世代を超えてオールドパーを選ぶ理由(わけ)〜

ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密 第4回 〜食後酒から食中酒へ/後編〜

 

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