山から生まれる瓶内二次醗酵トレントDOC&ドロミテからガルダまでのスティルワイン コンチリオ Concilio

「コンチリオ」のラインナップ

「コンチリオ」のポートフォリオにはヒエラルキーができている。まず、IGTデッレ・ヴェネツィエ、IGTデッレ・ドロミテといった、広い範囲のブドウが使用可能なシリーズがある。そして、トレンティーノ地区のブドウだけを使用したトレンティーノDOCで、「ナティヴィ」という周辺に棲む動物たちをラベルに描いたシリーズ。さらに上級キュヴェとして、単一のエリアや単一畑のブドウを使用したセレクション・シリーズが存在し、ラベルには畑の様子が描かれている。そして頂点にここの伝統を表すボルドー・ブレンドの「モリ・ヴェッチョ」がある。

例えばピノ・グリージョで3つのラインを比較すると、IGTは軽やかでフレッシュ&フルーティーな香りで、DOCになると花の香りがより豊かに感じられ厚みが増し、単一畑のセレクションでは熟度の高さが感じられる桃の香りに加え厚みがありながらテンションが感じられる味わいとなる。アルコール度数も12.5%、13%、13.5%と上がっている。

赤用のこの地の伝統品種テロルデーゴも3つのシリーズが揃っている。テロルデーゴはカベルネ・ソーヴィニヨンに性質が似ているとも言われ、タンニンが豊かなことで知られている。しかし、IGTではフルーティーさが引き出されている。DOCになるとタンニンが顕著になり、単一畑になると果実も酸もタンニンも全ての要素が高いレベルでバランスし、力強い構成だ。

醗酵は、スタンダードのラインはすべてステンレスタンクで行い、セレクションのシリーズには大樽も使用する。

また、まだ日本には入荷していないようだが、ニューフェイスのスプマンテ ”Cuvée 600 UNO Trento DOC” も興味深かった。「600UNO=601」は標高600m以上に位置する畑のシャルドネだけを使用していることを示す命名で、畑はトレントの街からすぐ東側にある丘の斜面にある。2013年収穫のブドウで、瓶内熟成は36ヶ月施している。熟した桃の香りが華やかで、優しい香りと味わいが心地よい。総酸度6.5〜7g/lで、ドザージュは4g/lと数字では少なめに感じるが、酸とのバランスがほどよい加減だった。これが初試みで生産は3万本のみだが、今後、リザーヴやゼロ・ドザージュ、ロゼなど幅を広げていきたいと考えているようだ。

由緒ある「コンチリオ」の顔を残し、さらなる進化につながる試みをしていく姿勢が印象的だった。

Pinot Grigio IGT delle Venezie 2016 3ヶ月ほどシュール・リーでバトナージュも行う。香り高く、クリーンで繊細な洋梨や花の香り。味わいもフレッシュで心地よい軽やかさがあり、後味に柑橘類の香りが残る。「今はフルーティーだが1年経過するとミネラルが感じられるようになる」という。

Pinot Grigio Trentino DOC 2016 “Nativi” 花の香りが華やぎ柔らかさがある。口中でも香りが広がり、厚みも出てきてグリップが感じられ生き生きとしている。

Pinot Grigio Trentino DOC 2016 “Contessa Giovanna Manci” トレントの街の東側にあるポヴォ丘にある標高400mの単一畑。畑のオーナーの名前を冠した。火山性の土壌。ステンレスタンクのみ使用。TA 5.6g/l。よく熟した桃と花の香りが豊かで、なめらかなアタック。厚みがありリッチでありながら、テンションのある余韻も長い味わい。

Marzemino Trentino DOC 2015 “Narivi” ステンレスタンクのみ使用。チェリー、ブラックベリー、プラムなど様々な果実を思い起こさせる香りで、アタックは優しく酸もソフト。タンニンも多くはないため親しみやすい味わい。

Marzemino Trentino DOC 2015 “Mozart” 畑は南部のヴォラーノの近く。ステンレスタンクのみ。バラのような花の香りに、少しジャム状のチェリーが香る。まろやかなアタックで、厚みがあり凝縮感のある味わい。酸とタンニンも増す。モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」でマルツェミーノを所望する場面があることから「モーツァルト」と命名した。マルツェミーノの生まれ故郷は、玄武岩と粘土が豊かな土地でコンチリオが設立されたヴァッラガリーナだと言われていることもあり、大切にしている品種のひとつだ。

Teroldego IGT Vigneti delle Dolomiti 2016 フルーティーで甘みも感じるチェリーリキュールのような素直な香り。短期間の醗酵のためかタンニンがあまり表立たず、親しみやすいフレッシュな味わい。

Teroldego Rotaliano DOC 2015 “Nativi”(日本未導入)ロタリアーノは、ふたつの川が運んできた豊かな土壌上層にあり下は石の層で乾燥しやすい地区で、日照量に恵まれるが夜間は冷え込む。少しスモーキーでスパイスも感じられ、よりタンニンが表立つ。

Teroldego Rotaliano DOC 2015 “Vigna Braide” テロルデーゴに最適だとされるロタリアーノにある単一畑キュヴェ。香りはまだ開ききっていないが、黒い果実の力のある香り。果実味も酸もタンニンもしっかりとして、バランスがとても良い。しっかりとした味わいで何年か置いておきたい。

Lagrein Trentino DOC “Khnott” 2015 (日本未導入)ノット家が所有していた丘にある単一畑。粗々しい品種だと言われているが、これはきちんと手なづけられている。香りはまだこれから。上品なアタックで、酸もタンニンもたっぷりしているが粗くはない。綺麗にバランスしている。「あと6ヶ月経つとさらによくなる」。樽との相性がよい品種。全て樽熟成しているが古樽のみを使用。

Mori Vecio Trento DOC Riserva 2013  (日本未導入)1967年が初ヴィンテージ。「コンチリオ」は、トレントの司教の名前で、Moriはコンチリオが設立された地。Vecioは古い、という意味。カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロのブレンド。フレンチオークの小樽で24ヶ月以上熟成。熟した果実の香りとスパイスが程よいバランスで、味わいにも果実の熟度の高さが表れている。なめらかな舌触りでタンニンもまろやか。(Y. Nagoshi)

輸入元:メルシャン株式会社

WANDS 2017年11月号には、トレントDOC、トレンティーノDOC生産者の現地取材レポートを掲載しています。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

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