シトー派修道院の歴史を繋ぐ、オーストリア、カンプタルの「シュロス・ゴベルスブルク」

当主のミヒャエル・モスブルッカー氏

当主のミヒャエル・モスブルッカー氏

「トラディション」は、2001年から試し始めた。過去の醸造を学び、1800〜1850年の方法が一番よいだろうと判断した。この時代は、ふたつのベースがあった。それまでのバロック時代はどちらかといえばアロマに重きをおき、香り付けもしていた。19世紀はロマン派の時代で、アロマだけでなく、より自然を大切にした。この国の自然を再認識してもら材料がワインでもあった。1850年以降は、工業化、産業化が始まった時代。ワイン造りにも影響し、ポンプやフィルター機械も導入された時代が。

当時は、葡萄品種ごとにそれぞれ最大の品質を出せるように栽培・醸造していた。人を育てるのと同じような考え方。それぞれの個性に合わせて育てていた。強制するのではなく、自由にさせ、自分でワインになっていくのを待ち、それから瓶詰めした。

モダンな造りは、選果の、プレス、沈殿、発酵、シュール・リーを10か月強。伝統的造りは、選果の後、プレスではなく果粒を粉砕してからバスケットプレスへ。沈殿なしでそのまま発酵用の樽へ移す。2、3か月ごとに樽を代え、そのたびに澱を除去し、酵母との接触をさせない。当時は、酵母はワインの質を損なうと考えられていた。約2年2,700リットルぐらいの樽で熟成させることになる。フィルターの必要なない。

「グリューナー・ヴェルトリーナー シュピーゲル畑レゼルヴ2014」深いレス土壌。14年は夏が涼しく遅い収穫。熟したグレープフルーツやレモンピールなどキリッとした香り。シーシーさ、ミネラル感、フレッシュな

酸と共に、カンプタルらしいふくよかさも。

「「グリューナー・ヴェルトリーナー ラム畑レゼルヴ2014」特級に近い感覚の畑。レスでありローム。ハイリゲンシュタインの麓にある土壌。木製大樽で熟成。より厚みのある熟した柑橘や桃の香り。まろやかで果実味たっぷり。酸もフレッシュながらゆったり系。

「グリューナー・ヴェルトリーナー トラディション2012」よりアロマティック。繊細な立ちのぼる花の香り。とてもなめらか。酸も控えめでソフト。心地よい柑橘類の後味。

「リースリング ガイスベルク畑レゼルヴ2013」プライマリーロック。写真の上のほう。2013年は開花期が高温過ぎてミルランダージュが起こり、小粒で収穫量が少なかった。青リンゴ、緑系柑橘類、白い花など、立ちのぼるタイトな香り。酸もあるが、比較的柔らかく感じる。ネクター的ななめらかさ。

「リースリング トラディション2012」これもガイスベルク畑。よりソフトでアロマティック。口中もとてもふっくらとして酸もソフト。グレープフルーツ的ほろ苦さも感じる。ゆったり飲みたいタイプ。

トラディションの生産量は、それぞれ7,000本前後。澱を定期的に除去するため、既に既に均一化され、ミドルパレットでの味わいが強いという。モダンなワインはハリがあり、トラディショナルは落ち着きがある、というニュアンス。加えて、果皮を粉砕し香り成分が多く抽出されるからか、よりアロマティックな印象だった。

(Y. Nagoshi)

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