日本ワイン特集/産地レポート 優良葡萄産地として注目集める山形

山形県は、生食用葡萄も含めると葡萄の作付け面積も出荷量も、山梨、長野に続いて全国で第3位にある。全国一の最高気温を長年保っていたことでも知られており、山に囲まれた盆地が多く、日較差が大きい。また、地域や年にもよるが、梅雨や秋雨の影響が少ない場所でもある。このような葡萄栽培に恵まれた環境において、現在12軒となったワイナリーがどのような取り組みをしているのか、また山形ならではのワインの特性は何かを探るべく、その半数ほどを訪ねてみた。9月上旬の収穫の真っ最中であるにも関わらず、話を聞かせてくれた皆さんに心から感謝する。

 

*ワイン売上数量の推移

赤ワインブームの影響を受けた1998年の課税数量2,059kℓを頂点に、その後低下の一方だったが、2010年の1,097kℓを底に、毎年上昇している。2014年の1,327kリットルは、ほぼ2002年に並ぶ。ただし、山形の場合には、県外に販売している葡萄の数量が多いようだ。日本ワインへの注目度が上がる昨今、ワイン用の日本産葡萄の不足が叫ばれている。今後、日本ワイン法との関連も含めて動向が注目される。

*認定制度

1998年から始まった山形県ワイン酒造組合による「山形県産認証ワイン」制度は、昨年度で終了した。認定シール(1枚3円)を貼るには、県内の葡萄を使用していること、自ら醸造しているワインであること、また年3回の学識経験者らによる認証委員会の官能検査をパスすることが条件とされていた。

しかし義務的なものではなかったためか、県内ワイナリーの半分ほどしか実践していなかったようだ。この制度に賛同していたワイナリーからは「結局認知度があがらなかった」という声が聞こえた。認定シールがイメージアップや売上増に貢献したという実感が得られなかったようだ。

*日本ワイン法について

町名、地域の伝統的な呼び名を使っている銘柄がいくつかある。ワインのラベル表示規制によって「昔から馴染みのある看板ワインがなくなってしまう(かもしれない)のは、寂しい」という声が聞かれた。

「日本の葡萄が不足しているため、海外原料でワインを造ることは必要だと思う。ただし、消費者にとって正しい情報を与えることも重要だと思う。しかし、地理的表示については、時期尚早ではないか」という意見もあった。

また「多様性があり、自由度が高い今の日本ワインの現状は、法律制定に向けて掲げられている『クール・ジャパン』からはほど遠い。輸出できる量は極限られている。『クール・ジャパン』を謳う前に、日本のワイン用葡萄の量を増やすほうが先決であり、栽培家や造り手を増やすための手立てを考えるべきではないか」と、違和感を覚えている。

ともあれ、日本産葡萄で醸したワインと海外原料によるワインの区別を明確にすることは必要だが、あまりにも現状を無視した高いハードルを課せられるのには抵抗がある、というのが共通意見だった。(Y. Nagoshi)

つづく/これ以降の内容につきましては、「ウォンズ」本誌「11月号」P.21〜32をご覧下さい。WANDS本誌の購読はこちらから

=訪問したワイナリー=

「高畠ワイン」「大浦葡萄酒」「タケダワイナリー」「ウッディファーム」「南果連協同組合」「朝日町ワイン」「月山トラヤワイナリー」

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