コブス・ハンター教授によるぶどう畑実習と樹冠管理セミナー「キャノピーは土中の根系で決まる。開園時にいかに土をコントロールするかだ」

今夏、山梨県農政部が葡萄生理学の第一人者であるコブス・ハンター教授を招き、一週間にわたり県下の葡萄栽培醸造技術者を対象とした葡萄畑での実習とキャノピーマネージメント(樹冠管理)に関するセミナーを行った。この実習セミナーは、招聘元である山梨県の配慮とサントリー登美の丘ワイナリーの厚意により、山梨県外の栽培担当者にも開放。9月4日、日本ワイナリー協会初の栽培ワークショップとして、全国各地の栽培家達30名を集めて、登美の丘ワイナリーで開催された。

ハンター教授は30年近くにわたりワイン用葡萄生理学を研究してきた。現在は、ARC(南アフリカ農業研究所)葡萄栽培部門の責任者を務めるほか、イタリアのトリノ大学でも教鞭をとっている。また、ヨーロッパや南アメリカ、日本でも葡萄栽培の実践的な指導を行っており、日本では、明野の三澤ヴィンヤードがハンター教授の提案に基づき、垣根甲州に高畝式を導入し実績を上げていることでも知られている。

この日のワークショップは、実際の葡萄畑で根の張り方を観察しながら、根系とキャノピーとの関連を学ぶ実習と、植物生理学を踏まえたキャノピーマネージメントのあり方についての講義という2部構成。以下、講義の概要を報告する。

 

第1部:メルロ畑で学ぶ

ホルモンバランスを左右する根系づくり

実習の第一歩はメルロの畑。登美の丘ワイナリーの最高点、見晴らし台近くにあるメルロの畑はかつてテラス式で棚栽培されていたが、(樹勢を抑える効果があるとされる)「101-14Mgt」の台木を使って4年前に垣根仕立てに変えた。このワークショップのために、畝の間には、土壌の特徴と根の張り具合を目視で確認できるように側溝が掘られている。

「2mも掘ると、白っぽい火山性の凝灰岩と砂質があり、その上には黒色あるいは茶色の表土が覆っている。ここは草生栽培を実践し、耕作は一切していない。マネジメントの基本は傾斜に沿って植え、雨が降っても表土の上の水を傾斜に沿ってなるべく早く流してあげる。そうすると、徐々に上から乾燥し、5 日もすると根がある部分も乾き、水分ストレスを与えることができる」と、渡辺直樹登美の丘ワイナリー所長。

(中略)

ハンター教授はこの畑に着くやいなや側溝に飛び込み、無言のまませっせと側溝の土壁を丹念にこそいで根の状態を調べる作業に専念している。暫くして口を開いた教授は、「一般に様々な有機物やミネラル分は乾いた土のところに多く集まっているが、逆に水分量が多く、土の温度が低く酸素量が少ない状況は根にとって苦手な状況だ。ここは前回よりも長く1.2~1.4mまで入っている根もあるが、表層20~30cm のところに細根が集中している。しかし、表層20~30cm のところにしか根が無いと、葡萄樹そのものが生きられない。冬には温度が下がるのでそのダメージを避けるためにも根はもっと深く入ることが大切だ」

「根は太いもの、中くらいのもの、細いものそれぞれが存在することが理想的だ。なぜなら、細根はホルモンをつくり出し、太い根は窒素やデンプン質といった栄養分を蓄える役割を担っているからだ。栄養素としてのデンプン質は一番多く根に蓄えられ、次いで主幹、コルドンの場合はコルドン、新梢、葉の順で蓄えられている。果実には一切デンプン質は含まれていない」。(M. Yoshino)

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