- 2025-9-22
- Wines, フランス France

ドミニク・フルラン全国クレマン生産者連盟会長
好調続くクレマン・ド・フランスの今 ― 全国連盟会長が語る成長の理由と未来への展望
全国クレマン生産者連盟(Fédération Nationale des Producteurs et Élaborateurs de Crémant)は5月15日ブルゴーニュで第34回総会を開催し、ニュイ・サン・ジョルジュの「メゾン・ルイ・ブイヨ」で、ドミニク・フルラン会長らが出席して記者会見を開いた。
記者会見場として選ばれた、ニュイ・サン・ジョルジュのメゾン・ルイ・ブイヨはクレマン・ド・ブルゴーニュの最も重要な生産家の一つで、ブルゴーニュ地方全体に160ヘクタールの畑を所有している。本部のあるニュイ・サン・ジョルジュの建物は、19世紀の建築物を改装したもので、2021年に、アール・ヌーヴォー様式のガラス屋根を持つ素晴らしい来客対応施設とテイスティングルームをオープンした。
記者会見で、ドミニク・フルラン会長は好調な市場状況、各産地の動向、シャンパーニュやプロセッコとの差別化、そして気候変動や品質階層化など、「クレマン」の現在を様々な角度から以下のように語った。
市場での立ち位置
クレマンは高級品であるシャンパーニュと、安価で工業的なスパークリングワインとの間で、品質と価格の絶妙なバランスを見出し、消費者の支持を確固たるものにしている。これは一過性の現象ではなく、この10年から15年続く構造的なトレンドだ。
現在、フランスにはクレマン・ダルザス、クレマン・ド・ブルゴーニュ、クレマン・ド・ロワール、クレマン・ド・ボルドーなど8つのクレマンがある。出荷量でみるとクレマン・ダルザスの後、クレマン・ド・ブルゴーニュとクレマン・ド・ロワールが同規模の約2,300万本で競り合っている。また、最近、クレマン・ド・リムーもダイナミックな成長を見せている。消費者はクレマンを飲むことでフランスの偉大なワイン産地を旅することができる。この多様性こそが我々の強みだ。

クレマン全国連盟が開催したクレマンコンクールの金賞ボトルの中から、ワインジャーナリストが最優秀ボトル3本を選んだ。左から、●ラシュトー(LaCheteau) クレマン・ド・ロワール、●デルマス(Delmas)、クレマン・ド・リムー、●ドメーヌ・ロレ(Domaine Rolet)、クレマン・ド・ジュラ
各産地が抱える課題
一見すると順風満帆に見えるクレマンだが、各産地はそれぞれに課題を抱えている。特にジュラは、2021年の霜害により生産量が通常の10分の1にまで落ち込むなど、気候変動の深刻な影響を受けている。
最大の生産地であるアルザスは、2023年7月に全国連盟を離脱した。これは人間関係が主な原因であり、残念なことだ。しかし、関係は断絶していない。クレマンの全国コンクールには変わらず参加しており、我々は彼らの復帰を心から願っている。
ボルドーは赤ワインの苦境からクレマンへの転換が進み注目されているが、クレマン造りには手摘み収穫や専用の醸造設備への投資、そして何よりノウハウが必要だ。安易な転換は品質を損なうリスクも伴う。慎重な取り組みが必要だ。
アペラシオン設立50周年の節目を迎えたブルゴーニュは今年、高品質なキュヴェのラベルにリューディ(単一畑)の表示が認められた。これは「革命的」であり、テロワールを表現するスパークリングワインとしてのさらなる品質向上への意欲の表れと言える。
品質階層化への取り組み
クレマンの次なるステップとして、連盟内で活発に議論されているのが「品質格付け」の導入だ。ブルゴーニュが独自に設定した上位規定「エミナン」、「グラン・エミナン」(最低24ヶ月以上の瓶内熟成などが条件)をモデルに、連盟全体でプレステージ・キュヴェを定義する動きがある。
市場のボリュームゾーンは現在、10ユーロ以下の価格帯だが、10〜15ユーロのセグメントを確立し、その価値を消費者に正しく伝えるための共通基準が必要だ。これは特にレストラン市場を開拓する上で重要な鍵となる。
地球温暖化という避けて通れない課題に直面しているが、連盟は新品種の導入に慎重だ。むしろ注目されているのは、忘れられていた土着品種の再評価だ。例えばリムーでは、モーザック種への回帰が見られる。気候変動への適応と、各産地の個性を守ることは同義だ。土着品種の再発見こそが、クレマンのアイデンティティとテロワールを守る道だと思う。
現在、クレマンの総生産量のうち約40%が輸出に向けられており、国際市場での存在感は年々高まっている。これは、高価になりすぎたシャンパーニュに代わる、高品質でストーリーのあるワインの選択肢として、クレマンは非常に好意的に受け入れられていることによる。
今後は、プロヴァインなどの国際見本市において「クレマン・ド・フランス」として共同出展するなど、連盟一体となったプロモーションを強化していく。クレマン・ド・フランスは、単なる「シャンパーニュの代替品」という時代を終え、その多様性と卓越したコストパフォーマンスを武器に、独自のアイデンティティを確立しつつある。
(Toshio Matsuura)
| 産地 | 主なブドウ品種 | 生産量・栽培面積 | 特徴・歴史 |
| クレマン・ダルザス | ピノ・ブラン、リースリング、ピノ・グリ、オーセロワ、シャルドネ、ピノ・ノワール 。ロゼはピノ・ノワールのみ 。 | 2023年の生産量は290,219hl。クレマン生産に割り当てられているブドウ園面積は3,673ha 。 | 8つの産地の中で最も輸出量が多く、フランス国内で最も人気がある 。冷涼な気候と粘土石灰岩の土壌により、爽やかな酸味と繊細な味わいを持つ 。1976年にAOCとして認定 。 |
| クレマン・ド・ブルゴーニュ | ピノ・ノワール、シャルドネ(30%以上)、アリゴテ、ガメイ(20%以下)、ピノ・グリ、ムロン、サシー 。 | 2023年の生産量は251,585hl。生産面積は約2,981.64ha 。 | ブルゴーニュはフランス最高峰のワイン産地として知られ、エレガントで高品質なクレマンが造られる 。初めてクレマンを造ったのは1927年創業の「カーヴ・ド・リュニィ」とされている 。 |
| クレマン・ド・ロワール | シュナン・ブラン、シャルドネ、オルボワ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、グロロー、ピノ・ノワールなど 。 | 2023年の生産量は271,376hl。植栽面積は3,659ha 。フランスのスパークリングワイン生産量ではシャンパン、クレマン・ダルザスに次いで3位 。 | 広範囲にわたるアペラシオンで、土壌は片岩や粘土片岩が主 。1811年にアケルマン社が、1855年にはラングロワ・シャトー社が生産を開始するなど、長い歴史を持つ 。1975年にAOCに認定された 。 |
| クレマン・ド・ボルドー | カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、セミヨンなど 。 | 2022年の生産量は91,000hl。2023年のブドウ畑面積は1,825haに増加 。 | 赤ワインの産地として有名だが、クレマン生産が拡大している 。メルローやカベルネ・フランといった黒ブドウ品種が使われることが特徴 。1990年にAOCに認定 。 |
| クレマン・デュ・ジュラ | シャルドネ、 サヴァニャン、 ピノ・ノワール、 プールサール、トゥルソー 。 | 平均生産量は年間約17,300hl 。生産面積は約210ha 。ジュラ地方の全AOC生産量の約16%を占める 。 | ブルゴーニュとスイスに挟まれた冷涼な気候とミネラル豊富な土壌が特徴 。ロゼはピノ・ノワールとトゥルソーから造られる 。1995年に創設 。 |
| クレマン・ド・リムー | シャルドネ、シュナン・ブラン、モーザック、ピノ・ノワール 。 | 生産量は30,000hl 。アペラシオン全体の生産面積は7,800ha 。 | ラングドック地方に位置し、クレマンの中でも長い歴史を持つ産地の一つ 。規定により、瓶内での最低熟成期間は9ヶ月 。1990年にAOCとして認定 。 |
| クレマン・ド・ディー | クレレット、アリゴテ、ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン 。 | 生産量は8,000,000本 。栽培面積は400ha 。 | ローヌ地方に位置する唯一のクレマン 。山岳の影響を受ける地中海性気候と粘土石灰岩の土壌が特徴 。1993年にAOCとして認定 。 |
| クレマン・ド・サヴォワ | ジャケール、アルテス、シャルドネ。地元品種が60%以上を占める 。 | 栽培面積約200ha。生産量11,000hl 。 | 2015年にAOCに認定された最も新しい産地 。アルプスの山々に囲まれた冷涼な気候がエレガントで爽やかな味わいを生み出す 。 |


















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