チロル地方、バロンロンゴのズィッヒルブルク。品種はソラリス。

オーストリアに近い北イタリアはチロル地方とも呼ばれている。由緒あるワイナリー「バロンロンゴ」は、ちょうどトレントとボルツァーノの間に位置するノイマルクトという街にある。

2015年におよそ100年ぶりにワイン造りを再開したというこのワイナリーには、「バロン」の名が示唆するように高貴な一族の歴史があった。

 

1656年にハプスブルグ家のオーストリア大公フェルナンド・カールによって、チロルの貴族に昇格したヨハネス・ドミニクス・ロンゴがこの一族の始まりだ。1800年代後半には、オーストリアへワインを輸出していた記録も残っている。しかし、第一次世界大戦の終盤になり、ワイナリーの維持が困難になったためロンゴ一族は追放の憂き目に遭う。第二次大戦中に捕虜となっていたがゆえに生き残った次男のヨハンが、1930年代に故郷のノイマルクトへ戻ることができたのが不幸中の幸いだった。そして、その息子フェリックス・バロンロンゴが再建へ全力で向かった。そして本格的にワイン造りを再開したのが、さらに次の世代アントン・フォン・ロンゴ・リーベンシュタインだ。

2020年には、有機栽培の認定も取得し、デメテールの規定に従ってバイオダイナミックの手法も取り入れているという。こだわりの詰まったワインには、「テロワール」シリーズと「ノビリス」シリーズがある。今回は、前者の1銘柄「ズィッヒルブルク」を試飲する機会に恵まれた。

 

SICHLBURG 2018 Baron Longo IGT.Vigneti delle Dolomitiズィッヒルブルク2018

テロワールシリーズの銘柄名は、畑の名前をつけているようだ。ラベルの表にhigh altitude viticultureと記してある。裏にはSolarisと記してある。ソラリスとは(日本ワインにも同名のものがありますが)ブドウ品種の名前だった。そして、バロンロンゴではソラリスを標高1,050mの畑で栽培している。

ちなみに、他にシャルドネ、ピノ・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴルツトラミネール、メルロ、ラグレインなどを栽培している。

清涼感があり、開けたては柑橘類やミネラル、スモーキーさも感じられ、どこかプイィ・フュメを思わせる鉱物的なニュアンスが感じられる香り。時間とともに丸くなり、熟したミラベルやアプリコットも。味わいは、ほんのり果実の甘みがあるが高い酸とミネラル感により、とても引き締まった味わいで、ほのかに収斂性も感じられる。柚子、カボス、スダチなど、和柑橘をミックスしたような後味で、魚貝類のサラダなど海の幸が食べたくなった。ミディアム・ドライとも記してあり12.5%のアルコール度数なので、残糖分があるけれど、酸が高くタイトなボディなので甘さは気にならない、程よいバランスだ。

 

ところで、ソラリス、という品種のワインとは初対面だったので少々調べてみた。1975年に、南ドイツで耐病性があり早熟な品種として開発されたハイブリッドだった。パワーと早熟の象徴として太陽=ソラリスと命名し、2004年にドイツが認可。酸が高くアルコール度数も高く、パイナップルやヘーゼルナッツのようなアロマティックな香りが特徴、とのこと。イタリアでは2011年に認可されているが、比較的寒い地方、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ベルギーなどで栽培されている。北欧でも栽培されているとは驚きだ。

 

珍しい品種だったので脱線したが、バロンロンゴの他のワインにも興味をそそられる、素晴らしい味わいだった。(Y. Nagoshi)

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