日本で唯一開催される2015年産ボルドープリムール試飲会 by 徳岡

徳岡が開催する「ボルドープリムール試飲会」は、今年で11回目を迎えた。「第1回は41銘柄だった。売上よりもまず、ボルドーのプリムール文化を広めることを目的として始めた」と、代表取締役会長の徳岡豊裕が感慨深げにスピーチして開会した。現地から5名のプレゼンターが来日し、偉大な2015年ヴィンテージについてプレス向けに解説した。

 

徳岡の徳岡豊裕代表取締役会長を囲む、バロン・フィリップ・ド・ロートシルト社エルワン・ル・ブロゼック(右)とヴィニョーブル・クレマン・ファイアのジャン・ミルティ・ローラン

徳岡の徳岡豊裕代表取締役会長を囲む、バロン・フィリップ・ド・ロートシルト社エルワン・ル・ブロゼック(右)とヴィニョーブル・クレマン・ファイアのジャン・ミルティ・ローラン

<2015年は偉大なヴィンテージ/左岸>

まず、バロン・フィリップ・ド・ロートシルト社のコマーシャル・ディレクターを務めるエルワン・ル・ブロゼックが、2015年の作柄について総括した。

冬は比較的寒く、葡萄はゆっくりと休養できた。特徴的だったのは、夏が乾燥し平均気温が高かったこと。ここ30年で8月の気温は最高値だった。そのためストレスがかかり葡萄の成長が一時とまることもあり、小粒で小さい房の果実がゆっくりと成長した。

8月末から9月にかけては恵みの雨が降った。メドック北部では、1日の雨量は多かった。これで成長の進度をキャッチアップでき、途中から予測していたより少し多めの収穫量を確保できた。収穫期日がとても長いのも特筆に値する。ポイヤックは9月14日〜10月6日まで23日間だった。

 

<右岸のほうがストレス少>

ヴィニョーブル・クレマン・ファイアのゼネラル・マネージャー、ジャン・ミルティ・ローランが、右岸の状況も説明した。

状況は、左岸と大きな違いはないが、メドック北部ほどは8月末の雨は降らなかった。しかし、右岸は粘土質が多いため保水力が強く、左岸ほどの水分ストレスはなく、成長速度は落ちたが止まりはしなかった。葡萄は水分ストレスが必要な植物だが、過度になると困る。また、サンテミリオンの丘には特に石灰質が多く、カベルネ・フランによく適している。2015年は、カベルネ・フランの比率が高めなシャトーが多い。

全体に、太陽に溢れて光の多いヴィンテージだった。収穫期も長かったが、よく晴れた。そして9月から10月は夜の気温が随分下がり、フレッシュな酸が保てた。2003年の猛暑と比較する人がいるが、日照や光の量は似ているが、秋の涼しさが異なる。長期熟成の条件が揃っていると考えている。

左からバロン・フィリップのエール・ダルジャン、シャトー・ダルマイヤック、シャトー・クレール・ミロンとそのセカンドのパストゥーレル・ド・クレール・ミロンの初ヴィンテージ2009。右2本はヴィニョーブル・クレマン・ファイアのシャトー・クレマン・ピションとシャトー・ラ・ドミニク

左からバロン・フィリップのエール・ダルジャン、シャトー・ダルマイヤック、シャトー・クレール・ミロンとそのセカンドのパストゥーレル・ド・クレール・ミロンの初ヴィンテージ2009。右2本はヴィニョーブル・クレマン・ファイアのシャトー・クレマン・ピションとシャトー・ラ・ドミニク

 

<試飲した2015年より>

Château d’Armaiac/畑はポイヤック北部。土壌は3種類。深い細かな砂利ではカベルネ・ソーヴィニヨン(以下CS)を、砂質混じりにはカベルネ・フラン(同CF)と少量カベルネ・ソーヴィニヨン、粘土質がある場所はメルロ(同MR)。2015はCS60%、MR29%、CF 9%、プティ・ヴェルド2%。/フルーティーで清々しさも感じるフレッシュな香りで、ロースト香やブラックベリーも。なめらかな果実味。まだ固いがかっちりとしたタンニンはとても細やか。

Château La Dominique/サンテミリオン北西部でポムロールとの境。2%の砂利質の表土がある場所はCS、青い粘土質土壌にはほぼMRで少々CF、粘土石灰質にはCF。23ha。2015年の熟成は新樽60%、1年使用樽20%、ステンレス20%(フルーティーさを保つため)。2013年にトロンコニックも導入。2009年に南に4.5ha購入。/かっちりとした果実とローストの香り。アタックはなめらかで凝縮感がある。タンニンもしっかりしている。メルロらしいボリューム感。ハツラツとしてアロマティック。

左から、クロ・レオの篠原麗雄、ソル・ベニのフィリップ・トルシエ、クロワ・ド・ラブリのピエール・クーデュリ

左から、クロ・レオの篠原麗雄、ソル・ベニのフィリップ・トルシエ、クロワ・ド・ラブリのピエール・クーデュリ

Clos Leo /カスティヨン・コート・ド・ボルドー/オーナー:篠原麗雄/2002年に畑購入。サンテミリオンの3種類の土壌のうち、ストラクチャーも酸も保てる粘土石灰質土壌の0.38haを見つけた。樹齢約40年。MR80%、CF20%。2015年は、特に右岸と左岸共に南が素晴らしい出来。2013も2014も困難だったため、2015はリスクを負っても完熟まで待ち10月9日より収穫開始。通常3.4ほどのpHは3.6で、アルコール度数も14.5%にもなったが、メルロとこの土壌を表現するのに素晴らしい年になった。フルーティーだが酸もしっかりし、今までで最上の出来。醗酵は12〜14日、その後3週間マセレーション。熟成は新樽20-30%(2012年から、350ℓのブルゴーニュ産の樽に変更)。/たっぷりした凝縮した果実の香り。なめらかなアタックで厚みがあり、ボリューム感も。きっちりした酸が余韻にも心地よく残る。

Croix de Labrie/サンテミリオンGC/オーナー:ピエール・クーデュリ/4haの畑。妻アクセルが醸造家。コンサルタントはミッシェル・ロラン門下。馬で耕作。2011年までは特別キュヴェのCroix de Labrieとノーマルの2銘柄だったが、2012年からChapelle de LabrieとLes Haute de Croix Labrieも別々にして合計3銘柄。ポムロールのような凝縮してボリューム感のあるメルロ100%のクロワ・ド・ラブリと、まるでピノ・ノワールなレ・オーが双璧だった。/Croix de Labrie 100%MR。樹齢50年。パヴィとシャペル・オーゾンヌの畑の間。表土はラモスと呼ばれる粘土石灰質土壌が30cmで、下層は岩。新樽100%で18〜24か月熟成。/たっぷりとした香りで、ロースト香や果実のエキスを感じる。厚みと深みがあり、ボリューム感も。タンニンもしっかりとしている。

Sol Béni/サンテミリオンGC/オーナー:フィリップ・トルシエ/2014年に、妻ミランデの出身地でもあるボルドーで1.1haの畑を購入。国道のすぐ南側で、砂と砂利質土壌。平均樹齢40-60年。MR80%、CF20%、3列だけ樹齢70年のCS。すべて新樽で24か月熟成。初ヴィンテージは今年年末にリリースされるがラベルは未完成。/香りは閉じている。少しずつロースト香と凝縮した果実が現れる。なめらかなアタックで厚みがありメルロらしさが全面に出ている。(Y. Nagoshi)

画像:左からクロ・レオ、クロワ・ド・ラブリの3銘柄、まだラベルのないソル・ベニ

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