ジャスパー・モリスMWが “Inside Burgundy 2nd Edition” 出版を記念してオンラインセミナー開催

ブルゴーニュワインのバイブル ”Inside Burgundy” のセカンド・エディションを昨年上梓したジャスパー・モリスMWは、自身のウェッブサイトでも、ブルゴーニュから多くの情報を発信している。

セカンド・エディションの出版を記念して、発行元であるBB&Rが主催するオンラインセミナーが開催された。大変充実した内容だったので、その内容を記す。

 

初版との違い

初版は、B B&R(ベリー・ブラザーズ&ラッド)にて勤務時代に、同社の前会長サイモン・ベリー氏がBB&Rで自費出版しようと即決してくれたことで成立した。それまでに見聞きしてわかっていても公にはなっていない情報も含めてまとめてみたいと考えていた。とくに、畑にフォーカスして書きたいと思っていた。今回は、初版よりページ数が大幅に増えて800ページにもなったが、それでもまだまだ書き足りない。

このセカンド・エディションでは大きく2つのことが変化した。ひとつは、自分がビジネスと関わらなくなったこと。BB&Rを退職し独立したため、ワイン商の立場としてではなくなり、より多くの生産者に話を聞くことができるようになった。そしてもうひとつは、(初版の2010年から)ここ10年で起こったことも書き加えており、さまざまな観点から分析し記している。

 

1)背景

最初のパートはブルゴーニュの背景について記しているが、歴史や地形的な部分は変化していない。流通は変化した。そして最も大きく変わったのは気候だ。

2000年代でも2003年、2005年といった暑い年はあったが、ゲームチェンジャーとなったのは2018年。これ以降、日照量が多く、暑く、成熟したブドウが得られるようになった。シャルドネの場合、すぐに糖度が上がるため影響が出やすく気をつけるべきだ。ピノ・ノワールは、シャルドネほどではないが香りに影響があり、また途中で生育をストップしてしまうケースもある。場合によっては果皮が収縮して煮詰まったようなニュアンスが出ることがあるため、ピノ・ノワールにとってのベスト・ロケーションが変わる可能性はある。

グラン・クリュの素晴らしさに変わりないが、例えば、これまではそれほど重要視されてこなかった丘の頂近くの畑がより面白くなる。また、斜面の下の低い位置は湿度が高くて良くないと言われてきたが、湿度が軽減されてより良い状態になると考えられる。

短期・中期的に考えると格付けの評価に関わるとは思わないが、ワイン商や評論家はより良い畑などを紹介していく必要がある。

 

2)栽培について

気候変動に合わせて栽培方法の変更を迫られている。ボルドーのように新たな品種の導入をするのか? との質問を受けるが、ブルゴーニュは伝統的に単一品種であるため、ボルドーのようにはいかないのではないだろうか。もしかすると赤についてはスイスのようにハイブリッド品種の導入はあるかもしれないが。例えば白品種では、かつて成熟が困難であったアリゴテが今とても良い結果が出ている。

水分不足は、とくに若木においては影響が大きいため、新たな台木の導入がなされている。

また、キャノピーマネージメントは、日陰を作ること、直射日光からの日焼けを防ぐこと、2つの役割がある。例えば、ルロワのように生長点を切らず葉をどんどん高く伸ばしていく生産者も増えてきた。生長点を切ってしまうと、ブドウが「何が起こったのか?」と疑問に感じ、もっと伸ばさなければならないと感じて葉っぱの成長に集中して次世代、つまり実のことを考えなくなる。しかし反対に、生長点を切ることで多くの葉っぱを茂らせて横に広げて傘のようにすることで直射日光から守る、との考え方の生産者もいる。

こういった試行錯誤は仮説に基づいて行われているので、すぐには結果が出ないが、数年後には何らかのことがわかるだろう。

また、栽培については、有機栽培やバイオダイナミックが増えており、化学的な肥料や農薬の使用は2000年以前に比べると間違いなく大きく減った。

収穫時期は8月に始まる年が多くなり、8月中に終了してしまう年もある。このため、収穫は涼しい早朝だけに行われるようになった。それでもコート・ドールにおいては皆、手摘みを続けている。そして、ブドウが温かいままで醸造するとリスクが高いため、収穫後にブドウを冷却するための冷蔵コンテナを準備する生産者も増えてきた。

 

3)カバー範囲の増加

初版ではグラン・クリュについて書いたが、今回はプルミエ・クリュの畑を所有する生産者のリストも加えた。また、シャブリ、マコネ、コート・シャロネーズなどの購入しやすいエリアもカバーし、地図も掲載した。

 

4)醸造

白ワインにおいては、ガンフリントの香りがするような還元的な造りをする生産者が増えていたが、ここ最近はあまり還元的になりすぎず果実の香りを主体にする造りが増えてきた。素晴らしい生産者、例えばバシュレ・モノやバンジャマン・ルルーなどは、果実の凝縮度とミネラル感のバランスを重視している。

赤ワインにおいては、あえて「モダン」という言葉を使うが、発酵前に温度を下げて7〜10日間低温マセレーションを行い、色や香りを引き出す生産者も多い。かつては、成熟が足りなかったため色を抽出するために行っていた工程だが、今では目的が異なる。今は、全房で、亜硫酸を加えないで早く発酵を始める方法が増えている。全房はさまざまな議論があり、全房を好む生産者もいるし、全て除梗する方針の生産者もいる。環境の変化に適合するために全房を採用し始めた生産者もいる。全房発酵のネガティブな点は、pHが高くなり酸度が下がるためワインの安定感が減ること。ポジティブな点は、酸度は下がるにも関わらずフレッシュなテイストが得られることと、アルコール度数も0.5%ほど下がる傾向にあること。かつてのように全房で亜硫酸を添加すると荒々しさ出てしまうことがあったが、全房でも亜硫酸を使用しないとハーベイシャスな要素やタンニンをあまり出さない。だから、全房で亜硫酸を加えない生産者が増えている。ただし亜硫酸については、醸造段階では使わないが瓶詰め前には必要最低限使う生産者が多い。

ユベール・ド・モンティーユがかつて、「ピジャージュを1日7回する」と話していたのを思い出す。しかし今は、一度もしない生産者が増えている。今はピジャージュしなくても、香りが自然に出てくるからだ。

 

5)その他の変化

今では醸造に使う容器のオプションが増えている。昔は228ℓの樽が主流であったが、今は樽のサイズも様々で、素材もテラコッタもありグラスコーティングされたものもある。

そして、世代も交代した。かつては自分と同世代がドメーヌの主体であったが、ラフォンや、ルーミエ、グリヴォなどにおいても、今では1980年代、1990年代生まれの人たちがメインだ。

流通にも大きな変化がある。価格が上昇している。以前はアメリカ、イギリス、日本がメインのマーケットだったが、ブルゴーニュに興味を持つ国が増えている。インターネットの発達も寄与している。外からの投資も相次ぎ、土地の価格も上がっているので、それも影響している。

加えて、天候不順や古木の寿命などによる収穫量減少も影響している。2011年以降、ほぼ毎年減っている。2017年と2018年は十分だったが、2019も減り、2021はさらに減った。収穫量が低くて需要が増加しているため、価格を上昇させている。

グラン・クリュのワインなど、今ではカルトワイン的な存在になってしまった。しかし、それほど有名ではないアぺレーションにも多く素晴らしい生産者が存在する。彼らを紹介していくのがとても大事なことだと考えている。

 

6)2020年と2021年について

ちょうど2020年のプリムールが出る時期だ。2018年、2019年、2020年と連続して暑い年だった。2018年は収穫量も多く、白はとても魅力的であるがさほど熟成は期待できず、赤は素晴らしいものもあれば熱量もあるブリリアントスタイルのものもある。 2019年は、 赤も白も温暖なニュアンスがあり、熟した感じを好きならばお勧めする。

そして、2020年は赤と白で驚くほど異なる。白は2014、2017、2020が、ここ10年で最も好きなヴィンテージだ。フレッシュでフラワリー、さらに酸がキリリとしたスタイルで、お勧めだ。生育も順調で、開花から結実まで100日というセオリー通りの年だった。バシュレ・モノは白だけでなく赤も良かった、ここ5年でベストな年。バンジャマン・ルルーの白が大変素晴らしく、赤も良い。

2020年の赤は2018年と少し似ていて、畑の位置と収穫のタイミングによる。収穫が遅ければ、糖度が上がり果皮がシュリンクして煮詰まったニュアンスになったが、収穫のタイミングよければ素晴らしく熟成可能性もある。

そして、2021年は収穫量が大変少ない。とくに白は少ない。生育も不安定だったが、4月の霜で白は壊滅的な打撃を受けた。しかし2016年と同様に霜害があり収穫量も少ないが、品質は大変素晴らしかった。

Inside Burgundy 2nd Edition 次回の配本は2022年4月の予定

 

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