【特集】カリフォルニア ローダイ

ブドウ栽培の歴史と ヘリテイジ畑

ワイン用ブドウ栽培の歴史は1950年代に遡る。イタリアやドイツからの入植者がヴィニフェラ種をもたらした。アルジェリア原産とされるフレイム・トケイはミッションとともに早い伝来品種のひとつで、19~20世紀にかけての植栽面積はジンファンデルよりも広かった。ジンファンデル同様、輸送に耐えることから、禁酒法時代には食用兼自家醸造用ブドウとして国中に鉄道で運ばれた。だが、1960~70年代にはロバート・モンダヴィが興したムーブメントにより、消費者の嗜好は酒精強化の甘口ワインやジャグワインから辛口ヴァラエタルワインへと移行する。食用あるいはブランデーや甘口ワインに多用されたフレイム・トケイは廃れ、ジンファンデルは次世代に残った。この品種の魅力を語る際に功罪問われるホワイトジンファンデルだが、このブームのお蔭で、貴重な古木は多品種への植え替えを免れ、保護に役立ったとも言える。

ジンファンデルの首都と呼ばれるローダイのアイコンとされる株仕立てのヘッドプルーニングには大きな利点がある。杭や針金を必要とせず、最小限の灌漑やキャノピー操作で、適度な水分ストレス、果実への適度な日照量、バランスの取れた果実と葉の成長を可能にする。とはいえ機械作業が出来ず、作業効率は低いため、樹齢の恩恵を受ける味わいの品種に向く。ローダイのヘリテージと言うべき単一畑にある品種たちがそれだ。

ローダイ最古の畑のひとつ、1886年植樹のベクトールド・ヴィンヤードのサンソーは、当初はブラック・マルヴォワシーと認識され、安価な食用ブドウとして1tあたり200USDで販売されていた。2004年にUCデイビスの分析によりサンソーと分かり、価格は10倍に。それでもボニー・ドゥーンはじめ、ターリーやビリキーノ、スコリウム・プロジェクトなど、地域内外のワイナリーからの引き合いは絶えず、2014年にはカリフォルニア・ヴィンヤード・オヴ・ザ・イヤーに選ばれている。

ここではカリニャンもまた、樹齢を重ねて魅力を発揮する。その大きな房は他品種にブレンドする水増し用原料ブドウとしても重宝され、1960~70年代には州内で最も広く植えられた。が、古木のカリニャンはチェリーやベリー、時にはルバーブのような性格を持つ。現存する最古の混植畑、1889年植樹のロイヤル・ティー・ヴィンヤードでは、8割を占めるジンファンデルが、ミッション、フレイム・トケイ、ブラック・プリンスとともに醸され、白ワインのようなフローラルな芳香性に富む味わいに仕上がる。

以上の単一畑は自根だが、ルース・ヴィンヤードには、1909年にセントジョージ (ルペストリス) の台木に接ぎ木されたジンファンデルがある。現オーナーが畑を購入した90年代は、ホワイトジンファンデルのために灌漑され、収量は今の倍、18.5°Bxで収穫されていた。今日アイアン・ストーンが産する赤ワインは25 °Bx程度で収穫され、自根の樹に引けを取らず、時には上回る、畑の特性に忠実な質感を呈している。

ローダイは歴史的価値の高い単一畑の宝庫だ。興味があったら畑名で検索してみて欲しい。新旧の造り手による畑の解釈の違いを味わい比べるのは、エステートワインとはまた別の面白さがある。

3.ベクトールド・ヴィンヤードのサンソー。1886年植樹。

4.混植畑のカリニャン。1889年植樹。

5.1909年接ぎ木、ルース・ヴィンヤードのジンファンデル。

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