[後編]日本ワインの未来を見据えて サントリーワインカンパニー

「第15回やまなし農村風景写真コンクール」で「知事賞」に輝いた、中野の棚田の写真。画像提供:山梨県農政部。

 

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甲州に特化したサントリーの南アルプス圃場

南アルプスの圃場からも富士山を眺められる。

南アルプス市は山梨県の西部に位置している。「中野の棚田」で有名な場所だ。サントリーは2020年から、南アルプス市中野で整地された新たな圃場で植樹を開始した。品種はすべて甲州だ。
10haの畑は標高450~550mにある(甲府盆地は290~300m、登美の丘の畑は主に500~600m)。甲府盆地は、今から約100万年前に隆起した赤石山脈など2,000~3,000m級の山々を風雨が削り形成された。また、釜無川と笛吹川の氾濫によりさまざまな土壌があるが、山に近い中野では礫が多い。棚田の石垣に使われる石も、周囲の土中から掘り起こしたものだ。水はけの良い豊かな礫の上に、赤土と黒ぼく土が層を成している。
「標高が高く収穫が遅めで、香り豊かで酸を保持できる甲州のための圃場を探していました」と、登美の丘ワイナリーの栽培チームでこの圃場の管理を任されている鈴木謙作氏は言う。南東に富士山を臨み、甲府盆地の西端にある中野の斜面は東南東向き。そして背後には赤石山脈がそびえ立っている。そのため、朝日が豊かで朝露がすぐに蒸発し、日暮れが早いため夕日を受けず、夜温が急に低下する。だから夏でも夕方になると涼しいと言う。
また圃場の両脇には沢が流れており、こんもりとした丘を形成している。だから、それぞれのテラスは平坦ではなく少し斜度をつけ、暗渠を入れなくても自然と水が沢へ向かって流れていく構造だ。2020年植樹の区画で今年初収穫したが、中央市豊富村の標高約300mの畑の甲州と比較すると、収穫開始は2週間遅い9月22日だった。糖度はBrix18.5°、総酸度8g/lと、なかなか良い結果。今後、果皮の渋さが柔らかくなり、熟した柑橘から桃までの多層的な香りになるまで置いておけるか試したいと言う。

登美の丘ワイナリーの栽培技師長の大山弘平氏(左)とこの圃場の管理を任されている鈴木謙作氏。

ここには山梨県で選抜した4系統の甲州のうち3系統を植樹した。テラス状の圃場でそれぞれ標高が異なるため、同じ「フル稼働すれば、登美の丘の甲州より生産量が多くなります。手頃な価格帯の『SUNTORY FROM FARM』品種シリーズの基点となり、ひとりでも多くの全国の方々に飲んでいただきたい。これがワイン県である山梨、ひいては日本ワイン文化を支える一助になればと考えています」と、栽培技師長の大山氏は言う。この圃場のブドウが「SUNTORY FROM FARM 甲州 日本の白」(品種シリーズ)の主体になるのは2025年頃になりそうだ。それまでに「ワインのみらい」シリーズで少し様子を見れるだろうか。

まだ若い棚仕立ての甲州。今年初収穫を行なった。

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