ブルゴーニュのラ・シテ・デ・クリマの開所式

シテの入り口に置かれた「瓶詰め」と題した高さ 6.5 メートル、重量 5 トン、5つの巨大なボトルのモニュメント

 

『ラ・シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン・ドゥ・ブルゴーニュ(La Cité des Climats et vins de Bourgogne)』の開所式がこのほどシャブリ、ボーヌ、マコンで行われた。26か月の工事、コロナ禍による2度の開館延期、名称変更など、難産の末の落成式だけに地元関係者は喜びに沸いた。

ブルゴーニュワインの販促拠点を現地に作ろうという構想は2000年代に入りしばしば話題になり、2010年以降、ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)を中心に検討が進められてきた。

6月16日に行われたボーヌのラ・シテ・デ・クリマ開所記念テープカットセレモニー

大きな推進力になったのは2015年7月にブルゴーニュのクリマがユネスコの世界遺産に登録されたことだ。これによって、ブルゴーニュのブドウ栽培とワインが世界的な文化価値を持つことが確認され、ブルゴーニュの人達の大きな自信となった。さらに、2016 年6 月にボルドー、ガロンヌ川沿いに、約100億円を投じて『ラ・シテ・デュ・ヴァン・ド・ボルドー(La Cité du Vin de Bordeaux)がオープンしたことも刺激になった。

左から、ボーヌ市のアラン・スグノ市長とシテ・デ・クリマ協会のブノワ・ドゥ・シャレット氏。ボーヌのシテをデザインしたエマニュエル・アンドレアニさん。ブルゴーニュワイン委員会会長フランソワ・ラベ氏。

大手ネゴシアン、メゾン・ビショーのアルベリック・ビショー氏はその時のことをこう語る。「ブルゴーニュのライバルと目されるボルドーで何が行われているのか、開館したばかりのシテ・デュ・ヴァンをとにかく見てみようと、ボーヌの何人かの仲間で訪問した。そして、戻ってすぐに、ブルゴーニュでも何か行動を起こさなくてはいけないということで皆の意見が一致した。」

2016年12月にボーヌ、シャブリ、マコン3か所の建設プロジェクトがBIVB総会で承認され、2018 年から 2019 年にかけて建築家、舞台美術家、博物館製作者の選定入札の募集が行われた。そして2021年にボーヌ、マコン、シャブリに最初の礎石が敷設され、正式に工事が開始された。総費用はボーヌが 1,450万ユーロ、マコンが 410万ユーロ、シャブリが300万ユーロ、合わせて 2,200 万ユーロ(約33億円)。地元企業の他、アメリカのブルゴーニュワイン愛好家団体、日本のサントリーなども協賛した。

ブドウの蔓をイメージしたユニークなデザインが評価され、各種の賞を得ている。

名称は当初、ボルドーに対抗し、多様性をもつブルゴーニュワインを前面に出して『ラ・シテ・デ・ヴァン・ドゥ・ブルゴーニュ(La Cité Des Vins de Bourgogne)』として始まった。その後「シテ・デ・ヴァン・エ・デ・クリマ・ドゥ・ブルゴーニュ(Cité des Vins et des Climats de Bourgogne)に変わり、さらに、ユネスコ文化遺産として登録が認められた “クリマ”を前面に出して、最終的に『ラ・シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン・ドゥ・ブルゴーニュ(La Cité des Climats et Vins de Bourgogne)』と名付けられた。

6月16日金曜日、ボーヌのラ・シテ・デ・クリマのオープンセレモニーに先立って、ブノワ・ドゥ・ シャレット会長が内外から8名のゲストを招き、世界的に注目されているブルゴーニュの“クリマ”とアペラシオン、特に区画毎にブドウを収穫しワインを生産するブルゴーニュ・モデルが世界のブドウの生産方法とワインに与えた影響についての座談会を開いた。

ブルゴーニュの生産モデルに関する座談会に出席した8人のパネリスト。

出席者はBIVB会長フランソワ・ラベ氏、シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン・ドぅ・ブルゴーニュ会長ブノワ・ドゥ・シャレット氏、MWで司会者のロビン・キックさん、そしてゲストとしてアンセルム・セロス氏(シャンパーニュ)、ジャン・ミッシェル・ダイス氏(アルザス)、アラン・ムエックス氏(ボルドー)、マルセル・ギガル氏(コート・デュ・ローヌ)、さらにニュージーランド、スペイン、イタリー、スイスの栽培家が出席した。

ボーヌのラ・シテ・デ・クリマはボーヌ市街から高速A6号の入り口に向かう交通の便に恵まれた場所に建てられた。Siz’-ix エージェンシーの建築家エマニュエル・アンドレアニさんが設計し、リヨンのルジョグループが制作したもので総面積3600㎡。建物はパリサージュの針金に巻き付くブドウの蔦をイメージしたもので、直径 35 メートルの円筒形、高さ 24 メートル、5 階建て。屋上にはブドウを植えた庭園がありボーヌ市のパノラマを楽しむことができる。地産地消の哲学に基づき、ニュイサンジョルジュ近郊のコンブランシアン石切り場から出た石材を豊富に使うなど、すべての建築資材をブルゴーニュ近圏から調達した。

ゆったりと包み込むような心地よい空間が続くボーヌのシテ展示館内部。

1300㎡の展示エリアは舞台美術家のクラリス・ガルシアさんが手がけたもので、マルチメディアを使った様々な操作によりブルゴーニュのクリマ、ワイン造りの文化、歴史に触れ、理解を深めることができる。また、ブルゴーニュのブドウ園の石室(カボット)を模して作った子供向け見学コースも用意されている。想定訪問時間は1時間半。大人入場料(試飲付き)14€、45分間試飲ワークショップ22€。見学エリア内に併設されたバーでブルゴーニュのほとんどのアペラシオンのワインを試飲できる。初年度訪問者見込み12万人。

2階はセミナースペースでブルゴーニュワイン委員会(BIVB)がイベントに使用するほか、企業へのレンタルも可能。3階はBIVBのワインスクール。4階はBIVB のオフィス。5階はテラス付きのパノラマバー。

建設費 1,450 万ユーロはボーヌ市のほか、ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏、県などが支援した。ボーヌ市が建物を所有し、BIVBが管理業務を行う。

シテの周りに広がる10haの公園内にホテル、レストラン、各種商業施設の建設が始まっている。

建物を取り囲むように、400本の樹木を植えた10ヘクタールの「バイオダイバーシティ」と名付けられた美しい公園が作られた。ボーヌ市はカーボンニュートラルを推進しており、内燃機関を搭載した車両の敷地内への出入りを禁止し、11月にオープンする高速A6 号料金所の近くのパーク・アンド・ ライド用駐車場を含む駐車場との連絡に電動シャトルを使用する。

公園内の一画にインターコンチネンタルグループの新しいブランド「ヴォコ」の4つ星ホテルの建設が始まった。シテ・デ・クリマの質感と美学を尊重した木造で、宿泊65室に加えてSPA、屋内スイミングプール、さまざまなイベントに対応した多目的ホール、 2つのレストランなどが作られることになっている。さらに、これとは別にワインと食器に特化した商業スペース、1200人収容のコンサートホールなども計画されている。

6月15日行われたシャブリのシテ・デ・クリマ、オープン記念テープカット。

シャブリのラ・シテ・デ・クリマはデュラン・ユジェーヌ建設事務所の手になるもので、シャブリワイン委員会の敷地に建つプティ・ポンティニ修道院の歴史的建物を延長する形で900㎡の現代的な棟を作り上げた。

 

BIVBシャブリの敷地内に作られた900㎡の展示館(右)とテロワールを説明する立体的な模型。内部で様々なボトルを試飲できる。

シャブリ、マコンのシテの内装を担当した舞台美術家のアデリーヌ・リスバルさん(右)。

7月にBIVBの事務局長に着任したシルヴァン・ノラン氏とブルゴーニュワインに詳しい作家のジャキー・リゴ氏。メゾン・ドゥルーアンのクリストフ・ドゥルーアン社長。

 12世紀にまで遡るセリエ・デュ・プティ・ポンティニーの古代遺産を尊重し、過去と現在、未来をつないだ現代的な建築だ。テラスと中庭も美しい。もちろん、内部で試飲できるボトルの品揃えが充実しており、シャブリだけでなく、グラン・オセロワ、シャティヨネを含むブルゴーニュ全域から100本近いボトルをリストアップしている。想定訪問時間45分。試飲込みの入場料9€。初年度想定入場者数2万5000人。

6月16日に行われたマコンのシテ・デ・クリマの開所式テープカット。

マコンのシテ・デ・クリマはマコンワイン委員会の建物を拡張する形で1600㎡の棟が作られた。ソーヌ川景色を眺めることができぶる高さ17mの塔がシンボルだ。ブルゴーニュ全体のワインが紹介されるが、中心はもちろんコート・シャロネーズ、コート・クショワ、マコネ。想定訪問時間45分。ワインの試飲を含む大人入場料9€。初年度想定入場者数3万5000人。

シャブリ、マコンのシテの内装は舞台美術家のアデリーヌ・リスバルさんの手になるもので、入場者を包み込む魅惑的な空間にしあげてある。

マコンワイン委員会の敷地内に作られたシテ・デ・クリマ。建物内に、議室、レセプション、ブテック、ワイン博物館などが作られた。

また、6月15日に行われたシテ・デ・クリマ・エ・デ・ヴァンの開所式に合わせて、コート・シャロネーズの中心、メルキュレで試飲会が開かれた。これはメルキュレが地元の裁判所によってアペラシオンとして認可されてから100年になるのを記念した行事の一環で、メルキュレの町を見下ろす、サン・サンフォリアン教会近くのブドウ園の一画に地元関係者とともにフランス各地の代表的な栽培家を招いた。代表して、コート・デュ・ローヌのマルセル・ギガル氏が挨拶した。

コート・シャロネーズの記念試飲会で挨拶するマルセル・ギガル氏(左)とメルキュレのアペラシオン会長アモリ・ドゥヴィヤール氏(右)。

メルキュレのアペラシオン認可100周年を祝うメルキュレ―の栽培家。後ろにメルキュレの村落とブドウ園が見える。

(Toshio Matsuura / Paris) 

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