- 2024-11-11
- Events, NEWS, イタリア Italy

イタリアワインの新たな可能性を探る商談会「BORSA VINI 2024」が、2024年10月7日にヒルトン大阪(大阪市北区)、9日にホテルインターコンチネンタル東京ベイ(東京都港区)で開催された。イタリア全土から59社が参加、そのうち17社が日本未入荷という充実の顔ぶれとなり、大阪会場には234名、東京会場には361名の業界関係者が訪れた。
ジャンルイジ・ベネデッティ駐日イタリア大使は「ボルサ・ヴィーニでイタリアワインの多様性を紹介できて喜ばしい。イタリアは日本と同様、土地とのつながりを大切にし、手作業によるクラフトマンシップを重視している。地理的な多様性により、ワインの種類も豊富。テロワールの真髄がイタリアにあり、この多様性が和食との相性の良さにつながっている」と、話している。
両会場では、ノンアルコール、スパークリング、白、赤を網羅する2回のマスタークラスが実施され、イタリアワインの隠れた魅力が次々と披露された。伝統的な製法を守り続ける生産者から、革新的なアプローチに挑戦する若手、近年発見された希少品種と、その多様性は参加者の想像を遥かに超え、イタリアワインの奥深さを改めて印象付けるものとなった。講師を務めたのはドナテオ・エットレ DipWSET。イタリア生まれイタリア育ち、日本語と日本文化にも造詣が深く、現在はキャプランワインアカデミーで講師を勤める。
ここでは9日の東京のマスタークラスをレポートする。「」はエットレ氏のコメント。
マスタークラス part1:「ノンアル、スパークリング、白」
マスタークラスの第一部。スパークリングが3種、白が2種、ノンアルコールのスパークリング1種が紹介され、フレッシュなイタリアワインを堪能する機会となった。
- テッレ・デル・チーマ(Terre del CIma)が手がける「コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ・スペリオーレDOCG」。特徴は、粘土質土壌と石灰岩の母岩から生まれるミネラル感、6か月という贅沢な熟成期間がもたらすクリーミーな泡立ちだ。白い花やアカシアの繊細な香りが立つ。
「ブリュットだがほんのりと甘さを感じる。その甘さが、快活な酸とバランスを取り、余韻は爽やか。こんなワンランクアップのプロセッコもあるということを知ってほしい。前菜、調味料を控えた白い肉、フレッシュなチーズなど、まさにアペリティフのワイン」。 - 2本目は、2019年に初ヴィンテージを迎えたばかりの新鋭、テヌーテ・ヴェントゥリーニ・フォスキ(Tenute Venturini Foschi)の「スプマンテ ソフィア」。シャルドネ60%、ピノ・ネーロ40%、伝統方式で最低30か月瓶内熟成させる。畑はパルマ県、アペニン山脈近郊にある。湿気がなく、昼と夜の寒暖差でバランスのあるワインが造れる。
「アプリコットやネクタリンの果実味に加え、ブリオッシュを思わせる酵母由来の香りが鮮やかで分かりやすい。アロマが明確で、爽やかな酸、果実味、うま味がバランスをとる。イタリアにはマイナー産地でありながら、このような隠れた真珠のようなワインがたくさんある」。 - 続いては、カンティーナ デッラ・ヴォルタ(Cantina della Volta)が手掛ける「ランブルスコ・ディ・ソルバーラDOC ブリュット ロゼ」。このロゼ・スパークリングには、品質の高さに惚れたエノテカ・ピンキオーリがタンクごと買い占めた、という逸話がある。
「ランブルスコだと黒系果実のイメージだが、赤系果実のエレガンスが香って、酸がクリスピー。骨格がしっかりとしてバランスがとれている。そこにフルーツとオリ由来の香りがまじって複雑。味にメリハリのある、伝統方式のロゼ」。 - 白ワインの1本目は、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアのド・ヴィッレ(Do Ville)が手掛ける「マルヴァジア・イストリアーナ」。父娘の二世代で、畑は20ha。イストリアーナという名称はイストリア半島(現在クロアチア領)に由来し、マルヴァジア・イストリアーナはこの地域にしかない。
「他のマルヴァジアと違ってしっかりしているのが魅力」というエットレ氏の前置きの通り、柑橘、ハーブ、レモン、セージといった複雑で力強いアロマが次々と現れる。カルソ山の麓、海岸線にあるので塩味のあるミネラル感がこのワインならではの味だ。「樽を使っていないのに、マルヴァジア・イストリアーナは、コクのあるワインができる。骨格のある白ワインで、リゾットや魚のグリルも鶏肉も良し」。 - 白ワインの2本目は、シャブリで研鑽を積んだ醸造家の作ヴァルパネーラ(Valpanera)のシャルドネ「フリウリ・アクイレイアDOC カラート」だ。20hℓのオーク樽で発酵し、木樽で7か月熟成、その後瓶内で熟成。パイナップルやマンゴー果実味に、ヴァニラやハーブのニュアンスが重なる。「フランスとアメリカの中間的なスタイル。エレガンスとパワーの両方を感じる」。
- マスタークラス前半の締めくくりは、7,000haもの畑を所有する大手協同組合テッレ・チェヴィコ(Terre Cevico SOC. Coop. Agricola)によるノンアルコールスパークリング「トゥット・エ・ポッシービレ・ゼフィロ」だ。「ノンアル組とアルコール組は敵対してはいない。飲めない人もお祝いには飲む」と、エットレ氏は言う。その言葉通り、マスカットの豊かなアロマと、ほど良い甘みと酸のバランスがとれていて、アルコールフリーでありながら、ワインに負けない存在感がある。
マスタークラス part2:「赤、優雅さと力」
マスタークラスの第二部では、赤ワインの数々が登場した。
ボトル左から
- ヴァレンティーナ・クビの「ヴェローナIGT オーガニック シンチェーロ」。ガルダ湖近くのバルポリチェッラで、湖からの風が涼しい。その地の標高300mの畑で無灌漑でブドウを栽培。「シンチェーロ」は”誠実”の意味で、亜硫酸無添加で仕上げられた。
「コルヴィーナの淡い色合いに、赤い果実、レイジン(樹液)、スパイスの力強いブーケ。さらっとしたライトなタンニンは、アペリティーボやサラミと好相性」。 - 続いては、バジリカータ州の標高600mの丘で造られるドナート・ダンジェロの「アリアニコ・デル・ヴルトゥレDOC カリチェ2021」。特徴は、火山土壌と昼夜の寒暖差が育む複雑な味わい。「アリアニコは多様で、タウラージからヴルトゥレまで、スタイルがみんな異なる。10年待たないと楽しめないワインも多い中、このワインはしっかり複雑で、今からでも楽しめる。新鮮なベリー香に、燻しと石灰の風味があって、それをタンニンが引き締めてくるところがアリアニコらしい」。
- ジュスティ・ワインが手がける「アソーロ・モンテッロDOC アウグスト」。使用されているレカンティーナ種は、1800年代にヴェネト州の貴族に愛されたという、今や幻の品種だ。エットレ氏は「伝説によるとナポレオンの侵略時に引き抜かれ、メルロやカベルネが植えられたというが、大学でクローンが発見されて蘇った」と話す。現在ヴェネト州でわずか15haしか栽培されておらず、そのうち9haを同社が所有している。特徴は艶やかな色調に青や黒い果実、滑らかなタッチ。
- トスカーナ州のフィレンツェとピサの中間に位置するカサルヴェントの「トスカーナIGT アッソラティオ」。これは、標高200~300mの日当たりの良い畑で育てられたサンジョヴェーゼとメルロを半々でブレンドし、ハンガリー製オーク樽で6ヶ月熟成させている。
「ボトル熟成による赤果実の力強さ、成熟したフルーツ、香ばしいヴァニラの香りに、チョコレートのニュアンスを帯びる。タンニン豊かな味わいは、パッパルデッレや熟成チーズ、ラム肉との相性が抜群」。 - カルピネートによる「トスカーナIGT ファルニート カベルネ・ソーヴィニヨン2018」。500haの所有地のうち200haを森林が占める自然豊かな環境で、酸化防止剤以外を使用しないヴィーガンフレンドリーなワイン造りを実践している。
「カベルネらしさを表現。黒い果実にハーブの香りが馴染み、バランスが良くて飲みやすく、料理との相性の広がりが大きい」。 - 最後は、ヴィッラドリアの「バローロDOCG 2019」。現当主は4代目となる。セッラルンガ・ダルバの畑で、2年間の樽熟成の後、1年間のステンレスタンク熟成を経て完成した。
「セッラルンガ・ダルバのブドウは熟成のポテンシャルが長い。2019年はやっと熟成の兆候が見え始めた段階。バローロらしいドライローズ、黒い果実に加え、タールやマッシュルームの複雑な香りが重なる。タンニンは確かに高いが、スムースな印象」と、エットレ氏。これでマスタークラスの第一部・第二部が締めくくられた。
(N. Miyata)
最近のコメント