『コノスル20 バレル リミテッド エディション』 この6本でプレミアムチリの全体像がわかる

コノスルは1993年に創業した若いワイナリーだが、いち早くプレミアムワインを造ったことでも有名だ。創業から3年後の1996年、試験的に造った20樽のピノ・ノワールがヨーロッパ市場で大いに評価された。それで、年々、熟成樽の数が増え、ワインの品種も増えた。それでもワインの名前は「20バレル リミテッド エディション」のままである。

 

20バレル・リミテッド・エディションに採用されているブドウ品種は6種類。いずれの品種もチリの最高評価を得ている産地で栽培されているから、この6本で今日のプレミアムチリの全体像を掴むことができる。

 

ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネは、カサブランカのエル・センティネラ畑のブドウだ。この畑はDOカサブランカの西南の端(最も海に近い)に位置する独立した丘陵地で、カサブランカの中では最も冷涼な土地だ。海風の強さや霧の濃さなど、DOカサブランカとは明らかに異なる特徴がある。いずれ独立した小区画DOに認定されると思われる。

 

ピノ・ノワールは、最高峰「オシオ」と同じ畑のブドウで、仕込みも同じ手法をとっている。最終のセレクション(官能検査)でオシオに選ばれなかった樽が20バレルになる。ボルドー・グランクリュ・シャトーのセカンドラベルの造り方に似ている。

 

シラーはアタカマ砂漠に近い北部の冷涼地リマリのブドウで造る。クール・クライメット・シラーの先駆けである。リマリの特徴は土壌にパウダー状になった石灰質を多く含んでいることだ。アコンカグアやコルチャグアの海沿いのブドウ畑で石灰質土壌を見ることはそれほど多くない。海沿いの冷涼地という条件は同じだが、この石灰質土壌がリマリを特徴づけている。

 

カルメネールはカチャポアルのペウモのブドウだ。ペウモはカルメネールのグランクリュと目されるDOで、チリを代表するブランドのカルメネールの多くはペウモの畑で生まれる。4月末から5月にかけて、ペウモの畑は鮮やかな深紅色に染まる。2016年まで20バレルにカルメネールは無かったが、2017年ヴィンテージから新しく加わった。

 

カベルネ・ソーヴィニヨンの産地はマイポである。マイポ川南岸の河岸段丘に位置するピルケのブドウだ。ピルケ・ビエホ(ピルケの古い畑)という畑名のとおり、この地域のカベルネ・ソーヴィニヨン栽培には100年を超える歴史があり、いまではプエンテ・アルトと並んでマイポを代表する産地のひとつになっている。

 

長谷川大地

マンダリン・オリエンタル東京に勤める長谷川大地ソムリエが、今年の4月にチリのコノスルを訪ね、醸造責任者マティアス・リオスといっしょに20バレル・リミテッド・エディションをテイスティングした。長谷川ソムリエに20バレルの味わいと、それに相応しい一皿を提案してもらった。

 

Cono Sur 20 Barrels Limited Edition Sauvignon Blanc 2018

非常に淡いイエローカラーにグリーンのトーン、輝きとともに若干の粘性がみられる。フレッシュでグラッシー。熟したグレープフルーツのような生き生きとした香りに、フレッシュハーブの香りが豊かに絡む。ピンクペッパー、白コショウのペッパリーな印象が特徴的で、スティーリーな(鋼のような)ミネラルの香りが鼻腔に残る。エル・センティネラ畑は、カサブランカの中でも非常に冷涼な区画。しかし、味わいの前半の印象はジューシーで豊か、熟したフルーツ由来の凝縮した味わいが口中に広がる。中盤から後半にかけて柔らかいがしっかりとした酸が口中をまとめ、余韻に海からの塩味が引き締まった印象を残す。非常に満足度が高い。

マティアス・リオス

《水蛸のカルパッチョ シトラスソルト ピンクペッパー》

皮目をきれいに取り除いた蛸は非常に柔らかく瑞々しい味わい。事前に塩を当てて、下味とともに水気を出しておくことで、ワインの持つ塩味が蛸の甘さを引き出し、フレッシュ感を与える。シンプルにエクストラヴァージン・オリーブオイルと地中海産のレモンの香りをあらかじめ付けた塩を軽く振り、ピンクペッパー、マイクロリーフを散らして。ワインは10℃程度にしっかりと冷やした状態で供出する。

 

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