キリンビール、顧客と20年を歩む「人生を共に生きるウイスキー」事業化へ クラファン1億円目指す

キリンビールは、顧客の人生に20年間寄り添う新規サービス「人生を共に生きるウイスキー」の事業化に向け、クラウドファンディング「Makuake」で目標金額1億円の資金調達に乗り出す。6月6日より約1か月間、All or Nothing方式で実施予定。同プラットフォームにおける1億円達成事例は過去58件(全体の0.1%)にとどまり、極めて挑戦的な取り組みとなる。

「人生を共に生きるウイスキー」は、熟成0年のモルト原酒を顧客が購入し、キリンディスティラリー社富士御殿場蒸溜所の樽で20年間熟成させるサービス。期間中に50ml瓶2本を6回(3年、7年、10年、13年、16年時点)配送し、20年目の700ml瓶1本で完結する。20年の人生が移り行く過程で、熟成途中のウイスキーを段階的に体感できるのが特徴だ。価格は税抜10万円(年額換算5000円)。専用箱に手紙を同封することでタイムカプセルとしても機能する。

同事業を起案した同社マーケティング部事業創造室の小島亨介氏は、元来ビール酵母研究に従事していた。自身の子供の誕生をきっかけに『何かを残してあげたい』という思いが芽生え、24名の親へのヒアリングも重ね、今回の事業の発想に至った。2021年に新規事業公募制度を通じて本案を提案。「価値はウイスキーそのものではなく、ウイスキーが届くことで得られる家族の団欒や20年後の特別な乾杯にある。家族の歴史を積み重ねていくことで、普通のものが特別な価値を持つようになる」と説明する。また子供を持つ家庭だけでなく、結婚記念日、起業、定年退職など、人生のさまざまな節目を迎えた顧客をターゲットとしている。

このクラウドファンディングを手がける「Makuake」は、新商品や新サービスの「応援購入」プラットフォームを運営。累計会員数は300万人を超え、これまで4万4,000件のプロジェクトを扱ってきた実績を持つ。同社インサイトマーケティング事業部の早川将司氏は「応援購入とは『応援』の気持ちを込めた購入行為」と定義し、20年間という長期事業を顧客と共に築き上げる本サービスが、同社の『応援購入』ビジョンと合致すると評価している。しかし「All or Nothing」方式での1億円目標は同社にとっても前代未聞で、早川氏は「確率ではなく覚悟で達成を目指す」と意気込む。

キリンビール マーケティング部事業創造室の小島亨介氏(左)とMakuake インサイトマーケティング事業部の早川将司氏。

「人生を共に生きるウイスキー」ではリターンとして、顧客は2019年から2025年に仕込まれた原酒の購入が可能で、例えば2025年原酒の購入者は、2045年に20年熟成品を受け取る仕組み。小島氏は「起案から4年、サービス自体がペンディングになった時期もあったが、このサービスで一生忘れられない乾杯を提供できると信じて諦めなかった。世の中に届けていきたい」と事業への信念を語った。

 

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る