特集 ビール新時代へ スモールバッチで“究極の味覚”に挑む

キリンSVBシニアマスターブルワー田山智広氏

キリンSVBシニアマスターブルワー田山智広氏

—2000年代は地ビールにとって“冬の時代”とも言われました。
これまではキリンビール全体の事業戦略の中でこうした取り組みをうまく組み込めなかったという部分はあると思います。キリンプラザ大阪は閉鎖しましたが、横浜ではずっと継続してきました。ただし、そこでブランドをつくるとか、そこからナショナルブランドを誕生させて大きくしていくという形での戦略までは組み込めていなかった。
どちらかというとビール発祥の地である横浜の魅力をアピールするとか、他の目的というのが大きかった。今回、SVBのプロジェクトを3年ぐらい前から社内で検討しはじめた時も過去の轍を踏むようなことをやっても意味がないということを徹底的に議論して進めてきました。

ただし、やはり時代が大きく変わり、お客さんの嗜好も含めて大きく変わりはじめた、潮目の変化というのが後押しした部分も大きいと思います。

—そうした嗜好の変化の背景は。
一般的に売られているビールにお客さんは必ずしも満足していない。それと少しずつですが、実際にいろいろなビールが若い人を中心に飲まれはじめ、その経験値の蓄積というのもここ数年で非常にスピードアップして、大きなムーブメントになって来ていると感じます。普段、ビールを全く飲まないような20代の女性がベルギービールのお店には行って、ワインと同じような感覚でビールを飲んでいる。
ボリュームとしてはほんの一部かもしれませんが、それは今後の大きな変化の兆しだと思います。また、オクトーバーフェストのようなイベントでも若い人たちが集まって、普段飲まないようなビールを楽しんでいる。つまり、ビールの飲み方、付き合い方が変わって来ている。
昔はサラリーマンが仕事帰りのお疲れ様の一杯という飲み方がほとんどでしたが、今ではそれ以外の飲まれ方がすごく広がってきた。そこにクラフトビールみたいなものが、ちょうど重なって来たと思います。昔は地ビールというのはクオリティの問題もあって、正直おいしくないビールも多かったのですが、ここ10年ぐらいで非常にいい造り手がユニークなおいしいビールをつくり始めた。
ヤッホーさん(ヤッホーブルーイング)がその典型だと思いますが、お客さんの見方も変わって来た。しかもワインのようにいろいろなバリエーションがあって、それも食事と一緒に、いろいろと組み合わせて楽しんでいる。そんなカルチャーが少しずつ芽生えて来たからだと思います。

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