「山仁酒店・代表取締役社長 大橋健一氏、マスター・オブ・ワインへ」

大橋健一氏に、インタビューを申し込んだのは9月初旬のことだった。ところが、あっさりと断られてしまった。大橋氏がその時、既に実技(試飲)と理論(小論文)、をクリアーし、大学でいえば卒業論文にあたる膨大なリサーチ・ペーパーを提出したことは聞いていた。そろそろ朗報が得られるのではないかと考えての事前アプローチだった。ところが、この最後の論文が通りマスター・オブ・ワイン(MW)になる確率は10%ほどしかないため、予測を元にしたインタビュー日程の約束はできない、というのだ。

しかし、その数日後の9月7日に晴れて合格の報せが聞こえた。今回は、過去最高の19名が新たにMWに認められた。10か国からで、アジアでは日本とシンガポール。これで、合計24か国から340名のMWとなった。日本関係者は、取得時に東京在住だった(現在シドニー在住)ネッド・グッドウィンMW(2010年取得)、ロンドン在住の田中麻衣MW(2011年取得)がいたが、日本在住の日本人取得者は大橋健一MW(以下、大橋MW)が初めて。

大橋MWに、取得までの道のりと今後の展望について聞いた。

 

<マスター・オブ・ワインとは>

マスター・オブ・ワインは、ワイン界最難関の称号といわれているが、実際にはその内容はあまり日本で知られていないようだ。その意義と役割とはどのようなものなのだろうか。

「マスター・オブ・ワイン協会は、志願者について業種は特に説いていないので垣根はまったくない。例えば、世界一ソムリエになったマルクス・デル・モネゴやジェラール・バッセはMWでもある。栽培家、醸造家、コンサルタント、バイヤー、マーケッター、あるいはワインが本職でない人もいる」。

「試験は、ワイン業界のあらゆる角度からの問題が出る。だから、ワインに特化したビジネスのMBAのような存在だろうか」。

「例えば、醸造コンサルタントとしてどこかに呼ばれたとすれば、この品種でこの状態の葡萄であれば、どのタイミングで、何をどのように対処すればよいのか、という基本的な考え方を把握している。栽培であれば、ここの気候や土壌はこうだから、このような栽培方法が推奨できるのではないか、と示唆することもできる。もちろん経験は必要だが、どこの国や地域のどの立場に置かれたとしても、何をどうするべきかという一通りの知識を修得している。もちろん、バイヤーやマーケッターとしても同様であろう。例えば、為替の問題、その市場で禁止されているもの、市場の嗜好、ワインの価格と品質のバランスなども考慮に入れ、推測し得る最高のプロモーションを提案することができる。ワイン業界のどの分野においてでも世界各国の事情に精通して多角的なものの見方を有したアドバイスを可能とする、という証明書のようなものであろう」。

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