カリフォルニアワイン2020収穫レポート

カリフォルニアワイン協会(California Wine Institute、略称CWI)は、2020年のワイン用ブドウの収穫レポートを、以下のとおり発表した。

今年は山火事が収穫期に起こったことから煙害を心配したが、レポートには「カリフォルニア州にある4,200のワイナリーのうち、深刻な損害を被ったワイナリーは20に満たなかった模様」、「このヴィンテージの卓越した品質に興奮を抑えきれずにいる」、「今年の果実味は際立っており、活き活きとしていて非の打ちどころがない」などと記されている。多くの生産者のコメントや地域別の収穫情報があり、興味深い内容だ。

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カリフォルニアにおける2020年の収穫期は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と記録的な山火事という、ふたつの難局を抜きには語りえないでしょう。そのいっぽうで、州内各地のワイン生産者たちは、このヴィンテージの卓越した品質に興奮を抑えきれずにいます。涼しくておだやかな生育期間の後には、ひとしきり続いた8月の暑さで成熟が促進され、結果として、ほとんどの産地で通常より1~2週間早い摘み取りのスタートとなりました。収穫量は平均より低いと見られています。

山火事の発生時期や地域によっては、多くのワイン生産者や栽培家へと影響が及んだものの、ワイン産業全体でみれば火災による被害は軽度なものでした。カリフォルニア州にある4,200のワイナリーのうち、深刻な損害を被ったワイナリーは20に満たなかった模様です。山火事に直面した地域では、ブドウ栽培家とワインメーカーが協力し、ブドウが煙にさらされる問題を見極め、軽減するよう努めています。

「この地域における平年の降雨量のちょうど半分という乾燥した冬のあと、例年以上に暖かい夏を迎えました。果粒は小さく、風味が凝縮されています。これは『質の高いブドウを生む優れたレシピ』なのです」と、ナパ・ヴァレーのトレフェッセン・ファミリー・ヴィンヤーズのCEO、ジョン・ルエルは述べました。

ナパ・ヴァレーの白ワインはとりわけ首尾よく仕上がりました。「シャルドネは果実感に優れていて、見事なストーンフルーツの風味があります」と、ルエルは付け加えて続けます。「暖かかったヴィンテージを反映して、通常より酸味はわずかに少なめです。また、我々のリースリングについては、お手本のようなヴィンテージになるのではと考えています」。ルエルは煙害を懸念して晩熟の赤ワイン品種の収穫をいくつか断念しましたが、他のナパのワイナリーはその影響を見定めつつ、カベルネ・ソーヴィニヨンをはじめとした赤ワインを生産していく見込みです。「自社のピノ・ノワールとカベルネ・フランをテイスティングする機会がありました。どちらも素晴らしい味わいです」と、ルエルは述べました。

ソノマ・カウンティのフランシス・フォード・コッポラ・ワイナリーのCEOであり醸造責任者を務めるコーリー・ベックも、このヴィンテージを楽観的に捉えています。小ロットの発酵試験を経たその所見によれば、「いわば、『オー・マイ・ゴッド、これはすごい』という出来です。このヴィンテージ特有の骨格と質の高さが感じられます。我々が収穫したブドウ、そして消費者の皆さんが今後目にするワインは、疑う余地なく見事なものとなるでしょう」

2020年度の収穫については、同年11月17日に開催されたウェビナー「ワインメーカー・セッション」の議題にも上りました。カリフォルニア中から、世界的にも高名な生産者らをパネルに迎え、その内容は2020年の傾向や取り組み、可能性などに及んでいます。カリフォルニアワイン協会のYouTubeチャンネルにて、ぜひご視聴ください。https://youtu.be/MzlA4Gb2UOk

カリフォルニア州各地のワインメーカーのコメント
「私どもコスタ・ブラウン・ワイナリーは、海沿い5つのアペレーションからワインを生産しています。ロシアン・リヴァー・ヴァレーにおいて遅霜で収量を落としたことを除き、ほぼ理想的といって良い生育状況でした」と話すのは、ワインメーカーのジュリアン・ハウセピアン。サンタ・バーバラ・カウンティのサンタ・リタ・ヒルズでは、ブドウ樹は長くゆっくりとした生育シーズンを享受しました。「非常に早い段階から、我々のピノ・ノワールには驚異的とも思える風味が感じられました」

ローダイのワイン生産者たちは、生育期半ばの高温、および山火事の煙害による困難に打ち勝ちました。ボーキッシュ・ヴィンヤーズのオーナー兼ワインメーカー、マーカス・ボーキッシュは次のように述べています。「ローダイでは何日も大気の状態が芳しくない日が続いたものの、官能分析とラボの分析結果のどちらからも、ワインに煙害の影響はまったく見られませんでした」。また、酷暑を経験しましたが、彼曰くブドウは酸味を保持することができたとのこと。「フェノールの成熟度は素晴らしく、糖度が低めでも風味に満ちたワインが生まれました。全般的にとても満足していますが、私見ではテンプラニーリョやカベルネ、プティ・シラーなどの晩熟の赤ワイン品種が、私たちのエリアにおいては非凡なものになると思われます」

おだやかな天候は、シエラ・フットヒルズの生産者に、生育期の始まりが早いことを告げました。続く夏期もおだやかなもので、1~2回の高温期に見舞われたのみでした。

「比較的低めの糖度水準で、ここまで均整の取れたブドウはまず経験したことがありません」。と、エル・ドラド・カウンティのプラサーヴィルに拠点を構えるボーガー・ワイナリーのワインメーカー、ジャスティン・ボーガーは述べます。「弊社のイタリア系品種、ネグロアマーロやアリアニコはまさしく出色の出来で、バルベーラもまた目覚ましい結果でした。決して大げさではなく、2020年は私たちにとって、過去10年で最高のヴィンテージのひとつとなるでしょう」

セントラル・コーストでは、冷涼な春とおだやかな夏の気温が生育シーズンを引き伸ばしました。平年並の時期に収穫が行われ、収量も例年どおりでした。

「むしろ、バランスに秀でたヴィンテージになるのではないでしょうか」と、ミラー・ファミリー・ワインズのニコラス・ミラーは語っています。サンタ・マリア・ヴァレーとパソ・ロブレスに展開する、ビエン・ナシード&ソロモン・ヒルズ・エステイト・ワイナリーズのオーナーです。「パソ・ロブレスのいくつかのエリアではカベルネが減収となり、我々のシャルドネも同様でした。弊社のブドウ畑周辺では直接的な火災はありませんでしたし、今のところワインの品質は申し分なく、試験結果もそのことを裏付けています。サンタ・マリア・ヴァレーで、現在仕込み中ピノ・ノワールは相当有望です。2020年からは、優れたワインが生まれる潜在性を感じました」

サンタ・バーバラ・カウンティのロンポックにあるメルヴィル・ワイナリーのヘッド・ワインメーカー、チャド・メルヴィルは、ほぼ完璧な生育期間だったと報告しています。「今年の果実味は際立っており、活き活きとしていて非の打ちどころがありません。概してピノ・ノワールは通常より色が濃く、一層の躍動感があります。シラーについてはまだ発酵を開始していませんが、色合いも味わいも実に良いです。それからシャルドネは、例年以上の力強さを備えています」

テメキュラでは4月、記録的な降雨に見舞われたことでカビ病のリスクが増加し、生産者にとっての試練となりました。8月下旬と9月上旬の38℃以上にも達した気温は、晩熟品種へといくらか脱水症状や日焼けを引き起こしています。「ブドウの品質は、総じて非常に優れたものでした。酷暑を経たことで、より熟度の高いヴィンテージとなるでしょうが、適切に扱うことができたと信じています」と解説するのは、サウス・コースト&カーター・エステイト・ワイナリーズのマスター・ワインメーカーである、ジョン・マクファーソン。「豊潤さと個性の深みという点において、2020年は2019年よりも上質だと考えています」

地域別の収穫レポート
アマドール・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:3,635エーカー
主要品種:ジンファンデル、バルベーラ

この地域のブドウ樹と果実にとっては、絵にかいたように完璧な年でした。生育期は早い萌芽に始まり、霜にも、長引く寒さや酷暑にも見舞われず、規則正しいペースで進みました。収穫は通常より約2週間早く始まり、平均から平均をわずかに下回る収量でした。アマドール・カウンティから遠く離れた山火事の影響は、ほとんどなかったといって良いでしょう。世界的なパンデミックの状況下においては、ソーシャル・ディスタンスの確保やスタッフの手配といった課題が、収穫時期の懸案材料として浮かび上がりました。どのブドウ品種の質も軒並み優れており、酸のバランスが良く、濃い色を呈しています。多くのワインメーカーが、自身のキャリアの中でも最高のヴィンテージのひとつだったとの感触を得ました。

カラヴェラス・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:721エーカー
主要品種:シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン
カラヴェラス・カウンティの生育期は、2019年と同様に順調で、収穫の開始は通常より遅くなりました。山火事からの煙害が懸念されましたが、ワイン生産者と栽培家は品質が損なわれないよう、ラボでの分析を通じて注意深くブドウを観察しています。この地域ではすべてのブドウ品種が良好に推移しており、且つその質も非常に高いものです。収穫量のボリュームは、2019年の収量とほぼ同程度になると見込まれています。

エル・ドラド・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:2,205エーカー
主要品種:ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー

2020年の収穫は非常に高品質だとの知らせが、ワイン生産者たちから届いています。生育期間は安定していて、霜による被害もなく、極端な気温の変化や暴風雨もほとんどありませんでした。生育期序盤の温和な天候は良好な順調な開花をもたらし、結実後の適度な気温が、そつなく適切な速度で果実の成熟を促してくれています。8月中に訪れた2度の熱波により、収量は幾分控えめとなりましたが、収穫時期の気温は概ねおだやかで、慌ただしい収穫開始後ほどなくして、スタッフは一息つくことができました。収穫は9月上旬に始まり、通常より少々早く終了しています。地域外で発生した山火事から、数日にわたってこの地域まで煙が流れてきましたが、これまでのところワインへの影響はないようです。赤ワイン品種は並外れて濃い色と果実味の力強さを示しており、成熟度の感じられる性格を併せ持っています。カベルネ・フランは見事な深みと骨格を備え、ジンファンデルには奥行きが感じられ、シラーもまた有望そうです。リースリングとシャルドネについは、収穫量が若干少なめだった生産者も見られましたが、どちらも好ましい酸の量がある、エレガントなワインに仕上がっています。

レイク・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:10,014エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン

2020ヴィンテージは白ワインがとりわけ順調な模様で、収量は例年より少なめでした。生育期の天候はシーズンの大半を通しておだやかで、9月の気温上昇も許容範囲内に収まっています。その9月の高温を受けて収穫は通常よりわずかに早く始まり、すみやかに終了しました。この地域は周辺カウンティの火災による煙の影響を確実に被っており、収穫量に多少の損害が出ています。全体として、収穫されたブドウ、特にカベルネ・ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・ブランの品質が素晴らしいと生産者から報告され、白ワインが例外的に優れた年になると目されています。

リヴァモア・ヴァレー
ワイン用ブドウ総栽培面積:4,000エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロ

2020ヴィンテージは、高品質でバランスの取れたブドウが産出されました。生育期は典型的な気温で平穏無事に始まり、萌芽と開花も標準的なタイミングで訪れています。夏が進むにつれ、いくつかの畑では熱波による日焼けが発生し、落果や成熟の遅れが起きました。山火事のあいだはこの地域でも大気の状態が悪化しましたが、その煙は重篤なものではなく、またリヴァモア・ヴァレーに大きく影響を与えるほど近いものでもありませんでした。これまでのところ、煙害の兆候は見られておらず、ワイン生産者達は果実の品質に大変満足しています。糖度と酸度およびpHのバランスは良好で、収量は平均か平均をわずかに下回るレベルでした。

ローダイ
ワイン用ブドウ総栽培面積:100,000エーカー
主要品種:カベルネ、シャルドネ、ジンファンデル

ローダイの2020ヴィンテージを特徴づけるのが、優れた品質と活き活きとした個性です。生育期はわずかに遅れて始まり、芽吹きは緩慢で全域で遅れが見られました。開花時期の天候を反映して、少々収量が低くなった品種もあります。幸い、ローダイは山火事の影響を直接受けておらず、最も近いものでも70マイル(約110km)離れていました。とはいえ、大気の質が収穫期の数週間にわたって、芳しくありませんでした。ローダイ中のワイン生産者は、まだ若々しい段階のワインについて、新鮮さと快活さに溢れ、低めの糖度でも上質の風味を備えた素晴らしい出来だと報告しています。ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネをはじめ、白ワイン品種は非常に期待が持てるでしょう。ジンファンデルの品質も向上を続けており、アルコール度数は控えめで、生気に満ちています。カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・シラーなどその他の晩熟品種からも好ましい凝縮感が窺えます。作柄は地域全体でかなりの減収となっており、古い混植の畑で昨年対比15~25%減少したところもありました。

マデラ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:30,007エーカー
主要品種:フレンチ・コロンバール、グルナッシュ、シャルドネ

生産者たちによれば、2020は高品質で低収量の年だとのことです。何度か熱波に見舞われましたが、萌芽時の天候は良好でした。生育期は総じておだやかで、収穫期の終わり頃などは理想的な状況でした。マデラ・カウンティの多くの生産者や栽培家にとって、2020年は経験上最も遅い収穫となり、通常より3週間から4週間遅れでスタートしています。収穫量は例年より1/3程度の減収となったものの、ワインメーカー達はその質に関して非常に満足しています。テンプラニーリョ、シラー、ヴィオニエは特に好感触でした。目下、煙害の痕跡は一切見受けられません。

メンドシーノ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:14,470エーカー
主要品種:シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール

2020年ヴィンテージは、白ワインが特に好調のようです。生育期の気温は全般におだやかから平年並みで、萌芽と開花が2019年と比べて1週間早く、例年より春の霜害が多く発生しました。メンドシーノ・カウンティではこのところの山火事による影響が散見され、特定のサブ・アペレーションでは煙害が他よりも広く見られました。とはいっても、火災自体の規模や期間を鑑みれば、煙による被害は非常に軽微なものに留まっています。こうした困難にもかかわらず、総じてブドウは上質で、白ワイン品質は卓越の域です。この地域の主要品種は、見事な出来映えを見せてくれました。シャルドネは別格で、煙害を被ったエリア外のサブAVAで産出されたカベルネ・ソーヴィニヨンも同様です。2019年と比較すると収量は30%減少しており、ソーヴィニヨン・ブランやカベルネ・ソーヴィニヨンではそれ以上の減収となりました。シャルドネについては、平年の収量よりわずかに増えています。

モントレー・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:46,139エーカー
主要品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン

おだやかな天候と正常な芽吹きのタイミングで、生育期は素晴らしいスタートを切りましたが、山火事が今年のブドウに大きな被害を与え、その規模はまだ確定できていません。モントレー湾沿岸の収穫サイクルを平年どおりに踏襲し、8月の第3週には一部地域で始まりましたが、翌9月に入り、同地域内で山火事が発生。カウンティ内のブドウの大半が火災に伴う煙の影響を被り、煙害によって大幅に収穫量が減少しました。ただし、ブドウ畑の微気候、風の方向や変化によって、上質なブドウが収穫できたところもあります。生産者達はこうした試練にもめげず、質の高いワインをボトルに詰めることだけに注力しています。

ナパ・ヴァレー
ワイン用ブドウ総栽培面積:45,342エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロ

2020年におけるナパ・ヴァレーの生育期は、春夏ともに概ね涼しくおだやかなものでした。8月初旬、レイバー・デイ(祝日・9月の第1月曜)にかけての週末、および9月後半に再度訪れた一連の暑さが、ブドウの成熟を促進しました。生育サイクルが早まったことで、多くのワイナリーはLNUコンプレックス・ファイア※1発生前、もしくは発生初期に白ワイン品種の受入れを済ませていたため、白ワインの作柄については、大変期待できると目されています。今年は多くの赤ワイン品種が例年より早く収穫され、一部ではグラス・ファイア※2の発生に先駆けて摘み取りが行われ、ワイナリーでは煙による影響について徹底的な分析を行っています。ナパ・ヴァレーのかなりのワイナリーが、すでに2020年のヴィンテージ情報を個別に発表していますが、その多くがワインを生産予定であり、品質の潜在性についても楽観的です。収穫量は例年より少なくなるものの、2020年がワイン史の記述から姿を消すような憂き目には遭いません。世界クラスのワインを生産する、というこの地域のヴィジョンは揺るぎないものであり、ラベルにナパ・ヴァレーと冠するに足るワインのみが、瓶詰めされることとなるでしょう。
※1 LNUコンプレックス・ファイア
ナパ、ソノマなどを含む州北部のカウンティを中心とした史上4番目に大規模な複合火災
※2 グラス・ファイア
9月27日、ナパのディアー・パークに端を発する火災

パソ・ロブレス
ワイン用ブドウ総栽培面積:40,000エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー

今年起こった数多の難題もどこ吹く風で、2020年はパソ・ロブレスにおける偉大なヴィンテージとなるはずです。8月下旬、パソ・ロブレスにも山火事の煙が流入しました。大部分は空気の上層にとどまっていましたが、一部の標高が高いエリアでは地表部が煙にさらされています。幸いにも、その期間や全体的な被覆範囲は限定的でした。同一アペレーション内でも火災の影響度合いは、ひとえにブドウ畑の位置次第です。現時点では総じて品質は秀逸で、果実内には際立った風味が育まれ、メトキシピラジン(ピーマン香)についても、ほとんどないしまったく感じられません。糖と酸は2019年と同等レベルでした。地域内では、樹齢の高いカベルネ・ソーヴィニヨンが熱波により収量の20%ほどを失ったところが出たほか、大半の晩熟品種が約10%の減収となりました。早熟品種の収穫量は、横ばい、またはわずかに増加しています。2020年産のブドウが全般に高品質なこともあり、パソ・ロブレスはカリフォルニア州の2020ヴィンテージにおいても脚光を浴びる存在となるはずです。

サンディエゴ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:693エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー
生育シーズンは雨がちな春で幕を開け、以降の萌芽と開花はいつもの時期に起こりました。着色期間中の気温は非常に暖かく、収穫は平年通りに始まり、早くに終了しました。ブドウの品質は見事で、風味に富んでいます。栽培家が天気予報に注意を払い、高温が続く前に灌水さえしていれば、すべての品種が首尾よくいきました。本年度の収量は通常より20%程度低くなっています。

サンタバーバラ
ワイン用ブドウ総栽培面積:15,750エーカー
主要品種:ピノ・ノワール、シャルドネ、シラー
今年は全体的に収量が多く、ほとんどの品種で良い結果を見せています。芽吹きと開花は健順調で、春先の雨風がなく、かつ最適な気温だったことで、充実した結実に繋がりました。前年と比較して果実は重く、房は密で、果皮に対し果汁の割合が高くなっています。収穫は山火事に加え、4度の異常な熱波の影響を受けましたが、適宜灌漑を行うことで対処しました。一部のブドウで煙害が懸念されてはいますが、地域内で火災が起こっていないことからブドウはすべて収穫されており、ワイン生産者は問題なしとの見解です。今年の酸味は熱波を受けて低めですが、ブドウの個性と品質は保持されています。ピノ・ノワールは好調で、シャルドネの出来も良好です。高温の影響を少なからず受けているものの、シラーは見事な複雑性と将来性を感じさせます。

サンタ・クルーズ・マウンテンズ
ワイン用ブドウ総栽培面積:1,526エーカー
主要品種:ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ
2020年の生育期には、理想的な春の天候が最良の萌芽と開花を促しました。夏の酷暑は産地内で局所的な影響を及ぼし、収穫量の低下につながった畑もあります。それを除けば、ブドウは素晴らしい作柄になると考えられていました。しかし、CZUコンプレックス・ファイア※1と、モントレーのリヴァー・ファイア※2と相まって、かなりの煙が流入したのです。ワイン生産者たちは、その余波がどれほどの広範囲に及ぶのかを判断するため、分析結果を待っている状態にあります。分析によって煙の影響を受けていないと判断されたブドウについては、素晴らしい品質となっています。気温の上昇および顕在化していない煙の問題により、本年度の収量は減少しました。
※1 CZUコンプレックス・ファイア
サン・マテオとサンタ・クルーズを中心とした複合火災
※2 リヴァー・ファイア
サリナスの南で発生した火災

ソノマ・カウンティ
ワイン用ブドウ総栽培面積:59,326エーカー
主要品種:シャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン

2020年の生育期間は、ほぼ完璧といえる条件を享受しましたが、8月中旬の雷嵐によって、ソノマのワイン用ブドウを取り巻く状況は一変しました。カウンティ内のブドウの25%から30%が収穫されなかったと推定され、本年度どのワインが生産されることになるか、現段階では明らかになっていません。しかしながら、ワイン生産者の多くは収穫されたブドウの品質について楽観的に捉えています。幸運にも、今年は早い収穫となったおかげで、産地の15%以上のブドウをLNUコンプレックス・ファイアの前に、90%をグラス・ファイアが発生するまでに摘み取ることができました。しかしながら、多くのブドウ栽培家や労働者が、家族ともども自宅や農園からの避難を余儀なくされています。ソノマ・カウンティ・ブドウ栽培家財団は、避難や失業の煽りを受けた地元農業者支援の資金を募るため、8月に災害復興支援基金を再び開設しています。

テメキュラ
ワイン用ブドウ総栽培面積:2,500エーカー
主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、プティ・シラー
今年は早熟品種が、ことのほか素晴らしい年となるでしょう。真冬には乾燥した時期がありましたが、生育期の前半と後半に雨が降っています。収穫の開始時期は、過去20年に照らすと一般的なものでしたが、ここ5年と比べると遅いものでした。8月下旬と9月には記録的な高温が観測され、カベルネ・ソーヴィニヨンなどの晩熟品種に多少高温障害が発生しましたが、早熟品種の質は例外的に優れたものになると見られます。ヴィオニエ、マスカット、ルーサンヌも見事な出来栄えで、プティ・シラーも大変良好です。収量のボリュームは2019年より約20%減となりました。

以上

カリフォルニアワイン協会(本部・カリフォルニア州サンフランシスコ)は、1,000社を超えるカリフォルニアのワイナリー及びワイン関連企業から構成される非営利団体で、ワインの生産や流通や消費に関する政策的な提言を行っています。輸出プログラムにおいては、世界13カ国に事務所を置き、重要な市場情報の提供及びプロモーションを支援しています。ワイン業界関係者・メディア・消費者向け試飲会の実施などをサポートしており、毎年175以上のカリフォルニアのワイナリーが当プログラムに参加、142か国にワインを輸出しています。日本事務所は、カリフォルニアワインの普及促進、日本市場における関税、非関税障壁の監視などを目的に1985年に設立されました。

この件に関するお問合せ先
カリフォルニアワイン協会日本事務所
E-mail: info@calwines.jp

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