ニッカ創業90周年で設備投資加速、“プレミアムで世界10位”目指す

アサヒビールは、創業90周年を迎えるニッカウヰスキーの洋酒事業を強化する。新たに60億円を投じて樽貯蔵庫の新設などを進め、ニッカウヰスキーの事業を成長戦略の一環と位置づける。“志(こころざし)”の目標として具体的な期間は示さなかったものの、プレミアムウイスキーカテゴリーでグローバルトップ10に相当する販売量を目指すと明らかにした。
90周年では国内のスペシャルアンバサダーに俳優・シンガーソングライターの福山雅治を起用。創業90周年記念商品として「ザ・ニッカ ナイン ディケイズ」(参考小売30万円、税別)を7月と10月の2回に分けて国内外各2,000本、計4,000本発売する。

アサヒビールの松山一雄社長

ニッカウヰスキー親会社のアサヒビールでは2024年事業方針で“既存事業の価値向上”と“新市場・新価値の創造”に取り組むなかで、“High-Value”、“業務用市場”など複数の注力課題でニッカウヰスキーの事業領域と重なり、成長戦略の一環として重視している。
5日に都内でニッカ創業90周年の方針説明会を開き、アサヒビールの松山一雄社長は「ニッカウヰスキーの販売状況は、2023年は海外では在庫事情により一時的に減少したが、仏米を中心に拡大傾向にある。日本国内はコロナ禍から回復し2019年比で110%と復調している」と話した。
ウイスキー市場は世界で拡大傾向が 続いており、特にプレミアムウイスキークラスより上の高価格帯が大きく伸長。なかでもジャパニーズウイスキーは2022年で2010年の5倍近い伸長(出典:IWSR)で、さらに拡大が望める状況にあるという。
そこでニッカウヰスキーとしては「志として、プレミアムウイスキーカテゴリー(日本国内で平均店頭価格2,000円以上)で現状40~50位相当にあるところから、グローバルトップ10を目指す。製造設備を増強するため今年新たに約60億円を投資、25年以降も投資を継続して行っていく」と話した。
設備増強は具体的には、2019年~2021年に65億円を投資して余市・宮城峡の樽貯蔵庫新設(貯蔵能力2割増)、蒸留設備増強(原酒製造能力2割増)としたところに、2024年にも60億円を追加投資し、栃木工場の樽貯蔵庫新設(9月稼働開始、貯蔵能力1割増)や余市・宮城峡の貯蔵庫設計や樽購入などを行う。25年以降もこうした投資を継続していく。

ニッカウヰスキーの爲定一智社長

ニッカウヰスキーの爲定一智社長はこれまでの90年を「創業者・竹鶴政孝の『ひとりでも多くの人に、本物のウイスキーを飲んでもらいたい』という精神を受け継ぎ挑戦を続けてきた」と説明。
ニッカならではの価値は「パイオニア精神と、複数の蒸留所の多様な原酒が生み出す蒸留所のテロワール、卓越した技術」
と話し、この強みを活かすとともに在りたい姿を伝えるコミュニケーション・コンセプト「生きるを愉しむウイスキー」を新たに定め、創業90周年の取り組みを進める。
「ニッカウヰスキーのブランドイメージは国内がトラディショナルなイメージに対して、海外ではイノベーティブなイメージが定着している。コンセプトの設定と世界観の訴求、スペシャルアンバサダーの起用でポジショニングを明確にする。90周年記念商品のほか、国内向け新ブランドを発売。国内外でBARでの“体験の場”を創出するほか、バーイベントへのスポンサーシップも行う。商品が手に入りづらい状況を早く解消するためにも、製造能力の増強と原酒バランスの最適化を図っていく」と話した。

 創業90周年記念商品のブレンデッドウイスキー「ザ・ニッカ ナイン ディケイズ」は、1940年代から2020年代までの9つの年代にわたる多彩な原酒をブレンドした。“熟成年数が長いほど高級なウイスキーである”という従来のエイジングに対するイメージに捉われず、9つの年代にわたる多彩な原酒をブレンドすることで、ニッカウヰスキーの90年の歩みを体現した。ボトルデザインでは、伝統工芸である江戸彫りの技法でロゴを刻んだ。キャップにかかるテープには6色の彩り豊かな市松模様と、複数の九角形を組み合わせた図案を配することで、各拠点から生み出された9つの年代にわたる多彩な原酒の調和を表現した。
尾崎裕美チーフブレンダーは「余市蒸溜所や宮城峡蒸溜所に現存する最古のモルト原酒、新たなチャレンジとして製造した門司工場とさつま司蒸溜蔵のグレーン原酒、西宮工場の長期熟成のグレーン原酒、スコットランドのベン・ネヴィス蒸留所のモルト原酒などから生み出された150種類以上の原酒を使用した。濃密な樽熟成香、アンティーク家具のようなレトロな香りと、甘みやコクが調和した厚みのある芳醇な味わい、長く続く余韻が特徴」と話している。
Abv48%、容量700㎖、参考小売30万円(税別)。
7月2日から2,000本(国内、海外各1,000本)、10月にも2,000本を販売。オーセンティックバーやホテルバーなどを中心に販売するほか、ニッカウヰスキーの各蒸留所やコンセプトBARでも数量限定で有料試飲を行う予定。

 

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