ブルゴーニュの名門 5ドメーヌから5名の女性ヴィニュロンヌ来日!

 

左から、千砂・ビーズさん、クリスティーヌ・ビーズさん、ナタリー・トロさん、ドミニク・ド・シュールマンさん、ソフィー・ムニエさん、アンヌ・モレさん

 

<エリック・ド・シュルマン Eric de SUREMAIN/ドミニク・ド・シュールマン Dominique de SUREMAIN>

当主で夫のエリックとともに、1983年からドメーヌで働いている。エリックの母がルフレーヴ家の出身で、ここも1996年からビオディナミを取り入れた。

2017年&2016年:2016年と2017年は最悪の年と最高の年。2016年はこの40年で生産量が最も少なく16樽だけ。2017年は192樽。2016年は、ふくよかでアロマティックで香り高く、はっきりとしてハーモニーが取れて余韻も長い。2017年は、シャルドネの表現力がとても綺麗でミネラル感や緊張感も。ピノ・ノワールは、色が濃くタンニンも溶け込んでおり絹のようななめらかさがあり、すでに美味しく飲めて重すぎることもない。

代表作:「モンテリー 1erクリュ・シュル・ラ・ヴェル」

ヴェルはヴィラージュの意味で、標高300mと恵まれた位置にありヴォルネイに隣接している畑。いくつもの区画を所有していて合計で3haあり、粘土石灰質で深い土壌。畑からモンブランも見える。このドメーヌのメインのキュヴェでもある。樹齢は25〜60年。ピノ・ノワールの実力を100%発揮できる最適な土壌。

一番大切にしている工程、あるいは新しい試み:収穫がそのひとつ。状況は毎年異なるので、絶対にこうしなければというルールはない。その時に合わせてするべきことを行っている。ブドウを丁寧に取り扱い小さなカゴで収穫し、醗酵は木製醗酵槽で天然酵母にて自然に行う。昔ながらの垂直型プレスを使っているので、思う通りに圧搾できる。シンプルにその年のブドウに対応することが大切だと考えている。

よくつくるお料理とお薦めワイン:「オーソブッコ」

2015年の夏にフュイッセのレストランのシェフが来てくれて、一緒に料理をしたのがこれ。イタリアの仔牛の煮込み料理。仔牛のスネ肉、人参、玉ねぎ、トマト、白ワインを弱火でずっと煮込むと骨から旨みが出てくる。最後にレモンとオレンジのゼストを入れると柔らかな甘い風味が加わる。モンテリーの1982年、1989年と合わせた。

 

<トロ・ボー  TOLLOT-BEAUT/ナタリー・トロ Nathalie TOLLOT>

1987年からドメーヌに入り、従兄弟のジャン・ポールやオリヴィエとともに働いている。

2017年&2016年:2016は4月27日の春霜により4分の3の収穫を失った。84歳になる父もこのような経験は初めてだと言っていた。ただ、でき上がったワインは骨格もあり爽やかさもあり、個人的には好みのブルゴーニュらしいタイプ。2010年や 2002年を思わせるスタイルだった。2017年は、日照量に恵まれて暑い1年だった。しっかりと成熟して丸みもありチャーミングだが、まだスタイルを語るには少し早いかもしれない。大切なポイントは量質ともに素晴らしく、2009年以来の満足感を味わえたこと。ドライで健全だったため剪定の必要もなかった。

代表作:「ショレ・レ・ボーヌ」

私自身は今サヴィニーに住んでいるが、一族は5世代ずっとここに居を構えている。30年前は、フランス人でもこの村のワインを知らなかった。うちは24haの畑を所有していて、その内8haがショレ・レ・ボーヌにある。中でも2haはモノポールのピエス・デュ・シャピトルで、比較的丘の麓に近く粘土質が多くてフルーティなワインになる。

一番大切にしている工程、あるいは新しい試み:(父と叔父たち3兄弟が2017年の収穫を監視している写真を見せながら)常日頃の小さな工程がひとつひとつ大切なので「何が一番?」と聞かれると困るが、ともかくブドウが最も大切。10名のスタッフの仕事時間の8割を畑に費やしている。例えば、丁寧に手摘みをすること。酸化しないうちに醸造工程に入ること。醸造設備も酸化を防ぐように、2014年には重力でできるように設備を整えた。常にブドウが個性をはっきりと表現できるように心がけている。

よくつくるお料理とお薦めワイン:「ブレスの鶏のロティ」

お料理好きなのでひとつ選ぶのは至難の技だった。コート・ドールのすぐ隣で、コルトン・ブレッサンドという名前も由来するブレスの鶏を使ったシンプルな料理。私は(エリック・ド・シュールマン)のドミニクからブレスの鶏を買っている。外側に塩胡椒してバターを塗り込み、中にもタイムと塩胡椒する。カットしたレモンも中に入れ込むと、その酸味がソースに混ざるのでお薦め。ローストチキンは低温で長時間焼き、最後に少し温度を上げるのがジューシーさを保つコツ。150度で1.5時間、そして180-200℃で10分ほど。それから、焼いている間に、ソースを何度も上からかけ続けることが大切。食べるときに、グラタン・ドーフィノワなども添える。優しい味わいなので、フルーティで丸みのあるショレ・レ・ボーヌと。

左から、千砂・ビーズさん、クリスティーヌ・ビーズさん、ナタリー・トロさん、ドミニク・ド・シュールマンさん、ソフィー・ムニエさん、アンヌ・モレさん

 

<シモン・ビーズ Simon BIZE/千砂 ビーズ Chisa BIZE>

1998年に4代目でドメーヌの名声を高めたパトリック・ビーズに嫁いだが、2013年に夫が他界し、今は義理の妹マリエル・グリヴォとともにドメーヌを運営している。

2017年&2016年:対照的な2年だった。2016年は絶体絶命だったが、そこから自信作が生まれた。収穫の8割は失った。コルトン・シャルルマーニュ、1級のセルパンティエール、ゲットー、タルミットも造れなかった。反対に2017年は、喜びをわかち合うにふさわしいハッピーワインが生まれた。白にはビッグ・ヴィンテージで、果実味、ミネラル、酸の質が素晴らしく、長期熟成も可能。赤は何年も困難な年が続いた末、すぐにでも飲み始められるスタイルができた。

代表作:「サヴィニー・レ・ボーヌ 1erクリュ レ・セルパンティエール」

私が自分で面倒を見ている畑がセルパンティエール。一番面積のあるオー・ヴェルジュレスでは赤も白も造っていて、南東向きで日当たりが良い。北風と東風が交差する場所なのでドライで風通しがよく。とはいえ、2013年だけはその条件が悪夢をもたらした。雹の雲がぶつかって45分間も停滞し最悪な状況になってしまった。ここは表土が薄い石灰岩で、ミネラル、上品さ、エネルギーを感じられるワインができる。

セルパンティエールは、1級ではあるがいわばできの悪い畑で、実験畑にしている。ビオディナミや緑肥を試したりしている。ヘビという名前は、このあたりは泉が多い場所で泉から流れる小川が蛇に似ていることから。水が常にたまっている冷え性な土壌でもある。ただ、日照量が多く暑い年にはとても素晴らしいブドウが実る。2008年から試しているが、2014年から本格的に取り組み始めた。最近、自分で美味しく味わうために試みてきたことが間違いではなかったと確信できるようになって来た。

一番大切にしている工程、あるいは新しい試み:パトリックの時代と基本的には同じながら、変えたことを少しお話する。彼は、自社畑の22haに同じようにアプローチしていた。私は、2人の子供を育てていてどちらも性格が違うのだから、対応も異なることを体得していた。だから、畑も同じではないかと感じた。乾燥した畑と湿った畑では、違うアプローチをするようになった。例えば、プレパレーション501で石英を使うのは、引き締める効果があるからで、前年の収穫でぶよぶよしたブドウができた区画に使う。醸造については、パトリックがしてきた全房醗酵は変えていない。天然酵母で醗酵させる。どのタイミングでプレスするのかが最も緊張する瞬間で、赤ちゃんが生まれるタイミングに似ている。最も神経を使う時で、早すぎるとまとまった味わいになっていないし、遅すぎるとワインができすぎてしまう。元気もありフレッシュ感もありバランスも良い、そのタイミングを計るのが大切で、それができればその後は簡単。丁寧に丁寧に扱って、綺麗にピュアに仕上げること。ワインに照りと輝かきがあること。自分のスタイルのワインを意識して造っている。

よくつくるお料理とお薦めワイン:「失楽園鍋」

冬に鍋はよく食べる。出汁に鴨のスライス、そしてクレソンをたっぷり入れる。変化球としては、皮目を香ばしく焼いておくこと。ワインは、香りが豊かで香ばしさのある2008年、2011年のサヴィニーの赤がちょうど今よいと思う。08年は出汁の風味と、11年は香ばしい風味とよく合います。

 

ピエール・モレのアンヌさんと少し雑談をしていると「父から娘へは、父から息子へと比べると、より自然に伝授できるみたい」という。男同士の確執がなく、世代も異なり、気構えることなく接するから喧嘩にもならないのだろう。アンヌには今18歳の息子がいてワイン造りに興味を持ち始めている様子だ。母から息子への伝授も自然体でなされていくと期待したい。(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

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